第11話
「なにこれ、セイバーが作ったの?」
マリアが味噌汁を飲みながら、そんなことを聞く。
個人的に聞きたいのはそんなことではないのだが、まぁ説明は逃げやしないだろうから、黙っておく。
「お味はどうですか?」
セイバーもセイバーで、律義に受け答えをする。
「すごい美味しい!」
「それは良かったです。
いままではあまり味というものが理解できなくて、やっと料理というものがどういうものか分かったように思います」
「?」
何だろう、なにかがひっかかる・・・。
「まず、あの高速道路で起きた出来事から説明したいと思います」
セイバーが語った内容は、普通であればとても信じられないような荒唐無稽な内容の話であった。
だが土地神と名乗る人物を実際に目にしていたので、信じることが出来る。
「お二人が起きたときに見たステータスウィンドウの進化についてですが、私としてはお二人には
進化はしないで欲しいのです」
「・・・」「・・・」
2人とも無言のまま話の続きを促す。
セイバーがそう言うからには、よく考えて出した答えだろうし、まぁ続きを聞くとしよう。
「お二人の選択肢に出た進化先は、使徒で間違いありませんか?」
いまだに起きたときから出っぱなしのステータスウィンドウを確認して、2人して頷く。
「まず、私はお二人が眠っている間に、勝手ながら使徒になりました。
そして勝手にマリア様のモンスターを辞めてしまったことをまず謝らせてください」
そう言うと、セイバーが頭を深く下げた。
「えッ!?
本当、たしかにリストから名前が消えてるわ・・・」
驚いたマリアが、自分のステータスウィンドウを開いて所属モンスター一覧にセイバーの名前が
無いことに驚く。
「使徒とは、神の使徒という意味です。
そしてこの神とは、さきほど説明した白い少年の姿をした異世界の神様の使徒ということになります」
そこまで静かに聞いていた藤次が、なるほどと相槌を打つ。
「そうか、だから何か不思議な雰囲気をセイバーから感じたのか・・・、で、それは分かったが、俺としてはまず進化をやめてほしい理由を知りたい」
「はい、この使徒という種族は、神様側の力を行使する権限を与えられます。
つまり、様々なスキルを作ったり改造したりできるわけです。
このマリア様がおっしゃっていた不思議部屋は、私がその力を使って、藤次様の記録から
再現したものになります」
「なるほど、その記録というのは使徒の能力か?」
「はい、私と会話したことのある人物の記録をアーカイブから参照することが出来ます。
今回は必要だと思ったので勝手に藤次様のスキルの情報を見たことをお詫びします」
「いや、それについては助かったし、良い判断だと思う。
俺がもしセイバーの立場なら、このスキルは確実に復元させていただろう。
まぁ謝罪は受け取った。だから気にしなくていい」
「この力、仮にスキル作成と呼びますが、無尽蔵にスキルが作れるわけではありません」
「だろうな。もし創れるのならチート能力だ」
「でも、たぶん神様はほぼ無尽蔵に作れるのだと思います。
ただこのスキル作成ですが、いくつかのルールが決まっているので、何でも自由に作れるという
わけではありません。
例えば、レベル表記のあるスキルは必ずLV1のスキルしか作れないなどです」
あごをさすりながら、藤次は考える。
「よく出来ている。
最初から高レベルのスキルが実装できていたなら、人間はもっと生き残っていただろうし、
神様の上に創造神様というお方がいるのなら、その下の神様たちにも制限や様々なルールが
あるのは、当然のことだろう。
で、神様に制限があるなら、当然、直属の使徒にもあるってことだな?」
「はい。
ちなみに使徒は、限られたリソースと呼ばれるスキルの原材料のようなものを消費して、スキルを
作成することになります。
もちろん、さきほどのようなスキルを作成するにあたって制限やルールがあります」
「ふむふむ」
「つまり、その、言い方は多少悪くなるけど、その限られたリソースを独り占めしたいとか、
そういうことだな?」
「ふふ、ええ、そういうことです。
藤次様はご理解が早いので、説明の手間が省けてありがたいです」
マリアもウンウンと頷いているが、絶対分かってないだろこいつ・・・。
「ちょっと説明の続きは待ってくれ。
つまり今までのをまとめると、使徒になるとスキルを作成できる神の力が手に入るが、
神の下に使徒が何人いるかで、そのスキルの原材料となるリソースが人数分に分割されたり
するので、使徒が少ない方が様々な種類の多くのスキルを産み出せるということだな?」
「ええ、そういうことです。
それに私は使徒になってから気づきましたが、使徒と言えど神に属するものなので、人間に直接の
危害を加えることは禁止されていて出来ません。
そして私の中での一番の弊害は、マリア様との繋がりが断たれたことです。
忠誠心はいまでもありますが、英霊であった頃のダンジョンマスターとの魔力的な繋がりが無くなって
しまい、たぶん私は一度マリア様から離れてしまえば、もうマリア様の位置を知る術がありません」
「ということは、それぞれが離れていても通話が出来る念話のようなスキルが欲しいな。
あと、仲間の位置をピンポイントで特定できる・・・と、リソース消費が激しそうだから、
その人物がいる方向だけが視界に矢印とかで分かるみたいなゲームのようなスキルがあると便利だな。 ON/OFF出来るようにもしたいところだ・・・」
さっそく作りたい能力をいくつか思いつく。
この調子だと、厳選していかないと、いらないスキルなども、便利そうだという理由でどんどん
増えていきそうだ。
つまりこれは、痒い所に手が届く、いわば一般スキルのようなものかもしれない。
ただまぁ、作れるのなら消すことも出来ると言うことであるだろうから、やり直しが効くので
そこまで重く考える必要は無いのかもしれない。
「マリア様が使徒にならない方が良いと思った理由の1つなのですが、もしマリア様が使徒に
なられた場合、職業のダンジョンマスターですが、たぶん一度完全にリセットされると
予想されます。なのでせっかく貯められたダンジョンポイントが、一度0になるということです。
あとで一からRPを使ってダンジョンマスターを復元することは可能だと推測します」
メリットとデメリットを天秤にかける。
使徒のメリットは、スキルを作成&改造できる部分だろう。
デメリットは、神側の制限やルールというものに縛られること。
だが、英霊になったとはいえ、元人間の自分からすれば、こういうのは男の子としては
ワクワクするのも事実だ。
「ちなみに、いまセイバーが最大で使えるリソースの最大値は数値にするといくつくらいで、
マリアのダンジョン作成と、この管理人室でどれくらいのリソースを消費した感じなんだ?」
「まず人間という種族が、何かしらのモンスターを倒すことで0から1レベルにアップした時点で、
選べる職業は、お得なスキルと職業の同梱セットのようなもので、いくつもの職業スキルや
上位職業などがまとめて入っていることから、1000リソースポイント(以降RP)となります。
ちなみに人間の方が付けられるスキルの上限値がいま説明したスキルセットの1000RPまでとなります。そこにほんの少しの一般スキルという自由枠が存在します。なので正確には1050RPくらいが上限となります。
つまり、藤次様の管理人や、マリア様のダンジョンマスターも、職業である以上1000RPとなります。
スキルを1つ作るのであれば、スキルの効果にもよりますが最低の一般スキルでも1RPが必要になります。
そして私だけが使徒であれば30000RPを自由に使えます。
このRPの最大数値ですが、たぶん3人で分ける前提の数字のように感じます」
セイバーの説明を聞いて、考えてみて、まぁ確かに二人が進化するメリットより、この場合
デメリットの方が勝っているように感じる。
「なるほど、でも現状だと、俺はスキルを覚えられないし、マリアも上限値ほぼ一杯で
これ以上は一般スキルを少ししか覚えられないということは、セイバーが自らスキルを作って
自ら覚えていくという感じか?
できればマリアに新しいスキルを覚えさせて、強化を計りたいところなんだが・・・」
「私に考えがありますが、上手くいくかどうかは不明で、一部、運の要素が絡んでしまい、
賭けとなってしまう部分もあるため、まずお二人には進化をキャンセルしていただく必要が
あるのですが・・・・・・私を信じて任せていただけますか?」
藤次とマリアは顔を見合わせ、そして二人とも素早く目配せをして大きく頷くと、もうみなまで
言うなとばかりに、使徒になる進化ボタンを押したのだった。
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