第4話
世界が崩壊してから、移動する手段としては徒歩が一般的なのだが、職業がダンジョンマスターである
マリアの場合、モンスターが召喚できるというメリットを活かして、騎乗できるモンスターを召喚して、
それに乗って移動している。
英霊の場合、騎乗するより走った方が早いし、先行して偵察したりするので、モンスターに騎乗する
メリットが無いので、マリアと護衛の2人が一緒に乗れるという条件でモンスターを選んだのだが、
実はここだけの話、いまマリアと俺が乗っている騎乗モンスターで6体目なのだ。
最初は馬型のモンスターだったが、乗っているとお尻が痛くなるという理由で最終的にお肉になった。割と美味しかった。
そして次が大蛇、乗り心地は悪くなかったが、これが蛇行して進むものだから、だんだんとマリアの気持ちが
悪くなってきたとの理由で、最終的にお肉になった。ヘビ肉というものは初めて食べたけど、これはこれで悪くないとご相伴にあずかった。
次が、雲型のモンスターだったが、そもそも仙人でもあるまいし、人間が雲に乗れるわけが無いので
召喚してはみたものの役には立たず、最終的にはお肉にもならなかった、そりゃ雲だから・・・。
乗り心地が悪くなく、三半規管を刺激されて気持ち悪くもならず、なおかつ他のモンスターに出会っても
ある程度は自衛できるくらいの強さや強度があり、気性が荒くなく、いざというとマリアの盾になる
必要があるということで、3人してしばらく悩んだ結果、やはりここは車だろうという結論に落ち着いた。
日本のダンジョンには妖怪がいて、その中に付喪神というモンスターが
居るらしく、大事に使われた物には魂が宿るというものらしく、車の付喪神を召喚して今に至る。
現代では九十九神とも書かれるらしいが、マリアの召喚モンスター一覧には付喪神という名前で登録されていたのだそうだ。
フォルクスワーゲンという車らしい。
愛好家がたくさんいたらしく、大事にされてきた車なのだそうだ。
マリアが付けた名前がメタビー、元ネタは何かのアニメから来てるそうなのだが、熱心に説明こそされたが、正直よく分からなかった。
ちなみに付喪神ということで、たまに魔力を補充してやれば燃料もいらず、お任せで自動で走行して
くれるし、手動で運転することも出来るのだそうだ。
さらに傷付いても魔力を使って自動的に修復される自動修復スキルが搭載されているらしい。
まぁ長時間乗っていればお尻も痛くなりはするが、馬に比べてだいぶ楽だとのことで、マリアもご満悦で、お肉にはされてはいないし、される予定も今のところ無さそうだ。
だから馬に乗っていた経験もあながち無駄ではなかったということだ。
走行距離によって経験値を得られる存在らしく、付喪神自体には己で戦う意志が無いことからか、
基本的にはモンスターに出会えば逃げの一手のみで、だからこそ超常的なシステムに弱い存在と
認識されているのか、スキルを習得できるらしい。
護衛としてマリアと一緒に乗せさせてもらうと、何やら快適で便利な機能がいろいろと追加で搭載されていることから、たぶんスキルによるものなのでは無いかと予想している。
そして最近で一番驚いたのが、ナビ機能の音声案内で、付喪神が喋れるようになっていたことだ。
手動運転でマリアを隣に乗せてドライブを楽しんでいたら、助手席のマリアがスースーと寝息をたて始めたあたりで、「藤次様、マスターの護衛お疲れさまです」と急にナビから声が聞こえてきて、思わず急ブレーキを踏んでしまうほどの驚きだった。
いや、付喪神だから意志があるとは頭では理解しているつもりだったが、まさか喋れて、なおかつ相手から話しかけられるとは夢にも思っていなくて、と俺は誰に対してこんな弁明をしているのだろうか?
マリアにそれを言ったら、そんなわけないじゃないと一笑に伏して信じてもらえなかった。
夢でも見たんじゃないの?と正気を疑われたほどだ。
その一件以来、付喪神のやつはひと言すらも私的な発言をしようとしないが、俺だけは知っているのだ。
こいつは割と他の人の話を聞いているし、たぶんけっこう色々(いろいろ)と考えている。
利口な奴だからこそ、人前ではけっして声を発さないのだ。
だから俺は今日もマリアを助手席に乗せたあと、シートベルトを締め、ハンドルに手をかけ、
メタビーに話しかけるのだ。
「メタビー、今日もよろしくな」と。
ペダルを踏んでもいないのに、ブオオンと車は元気よく返事をするのだった。
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