第3話
これを攻撃と呼んでも良いのだろうか?
小さな子供たちの集団が、木の棒や石を投げて近づくなと威嚇してくる。
その出会いは唐突だった。
廃墟となった街の曲がり角でバッタリと出会い、そして現在に至る。
突発的な遭遇からお互い驚きに目を見開きつつも、会話を試みようとしたマリアを藤次は後ろに庇いつつ下がらせ、飛んでくる木の棒や石を払い落とす。
「大丈夫、私たちは絶対にあなた達を傷つけたりしない。
ただ話をしたいだけなの」
「信じるな! いままでと同じ悪い大人だ!
あいつら武器を持っているぞ、子供たちを逃がすんだ!」
子供たちが、自分たちより幼い子供を逃がそうとしていた。
大人も顔負けである。
そして直後にマリアの瞳がきらめいたのを、藤次は見逃さなかった。
こんな瞳のときのマリアが取る行動は、おおよそ決まっていた。
「藤次、セイバー、武器を捨てて」
その予想通りのマリアの一言に従って、2人は持っていた武器を投げ捨てた。
武器の有無などで英霊としての戦力は損なわれないが、あくまで武器を持っているという外見は、
この新しい世界では、それだけで下手な輩を近づけない防災に繋がるのだ。
それに実際に悪い大人たちというのは、この世界には本当にとても多くいる。
「あなたたちに降参します。
私たちは話がしたいだけです」
3人は両手を上げて、降参のポーズをする。
「っ!?」
そのポーズの意味はさすがに知っていたのか、いままでそんなことをする大人が居なかったのか、子供たちは驚いて固まっているので、助言ついでにお願いもする。
「あなた達のリーダーのところに連れて行って下さい。
そして話をさせてほしいだけなの」
子供たちは顔を見合わせ、しばらくコソコソと話し合ったあと、一番年長らしい14歳くらいの少年が、
ぶっきらぼうに、ついて来いとだけ言った。
ロープを持ってないからなのか、そういう発想が無いだけか、特に拘束したりはしないらしく、あまりに不用心なのでわざわざマリアが、ロープで縛ってから連れて行った方が良いんじゃない?と助言をし、わざわざ持ち前のロープを手渡して、少年たちはロープを受け取ると、慣れない手つきでもって、
3人をロープでぐるぐる巻きにして、最後にかた結びをしたが、そもそも本来の拘束という
には程遠かった。
だがそれについては、ぐるぐる巻きにされた3人は何も言わなかった。
「私のバックに甘い菓子パンが入っているけど、食べてもいいわよ?」
マリアの職業であるダンジョンマスターは、DPを使って、主にダンジョンを
運営するのが主な職業であり、DPを使ってモンスターを召喚したり、ダンジョンの構造を変えたりできる。
そのおまけ機能として、様々な物品やアイテム、食料を交換することも出来たりする。
英霊である藤次とセイバーが召喚されたのもこのDPによるモンスター召喚であるし、そもそも英霊には生きるための食事など必要ないが、マリアは普通の人間であり、今まではこの能力を使うことで、食料に困ることなく旅をして来たのであった。
これまでの旅路で、マリアの運営するダンジョンの数も50を超え、普通であれば使いきれない
くらいのDPが日々、自動的に貯まっていくシステムを構築していた。
いままで何も入ってなかったリュックに、DPで交換した甘い菓子パンを人数分入れたことを、藤次とセイバーは魔力の流れから気付いていたが、特に何も言わなかった。
それを聞いて喜んでリュックに手を伸ばす少年たちに向かって、14歳の少年が制止の声をあげる。
俺たちがどうしてここにいるのかを思い出してくれと、空腹から手を伸ばした少年たちを必死に説得していた。
少年たちコミュニティには、食料調達に出かけたこの少年たちの帰りを待つ、お腹を空かせた幼い子供たちがいるらしい。
子供には甘いマリアの瞳が一段ときらめいていた。
魔力の流れを感じられる英霊たちは、リュックの中身の菓子パンがどんどん増殖していくのに気づいてはいたが、やはり何も言わなかった。
マリアは空腹の辛さは知っていたし、藤次もあのとき食べたカップ焼きそばの味は忘れていない。
だからいいのだ、たまにはこんな施しをしたとしても、それがたとえ一時的な偽善や自己満足だったとしても、こんな世界になってしまったからこそ、自分のしたいことをしたいようにしたいだけするのだ。
コミュニティと呼ぶにはあまりにお粗末な、主にダンボールを使った子供たちの秘密基地に辿り着いた。
駆け寄る幼い子供たちの前で、戦利品のリュックを開けたときの、子供たちの驚く顔ったらなかった。
リュックから今もDPと交換され続けている菓子パンがまるで噴水のように溢れ出てくる!
あきらかにリュックの容量より多くの菓子パンが出てきているが、そんなこと気にしてられない空腹の子供たちは、喜んで自分たち全員の人数より多い菓子パンを、誰かに譲る必要もなく涙ながらに食べていた。
取り残された3人の捕虜は、ロープでぐるぐる巻きにされた状態で、その光景をただただ静かに眺めていた。
そしてやはり誰も何も言うことはなかったのである。
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