第48話
さらに5年の月日が流れた。
ここは不思議部屋。
【霧型 藤次を英霊として召喚する代償として、彼のスキルは失われますがよろしいですか?】
中性的な声のアナウンスがそう聞いてくる。
英霊としての強さを得る代わりに、藤次が持っていた拠点を作るスキルを失うらしい。
まぁそう甘い話は無かったというだけの話だ。
マリアは、一寸だけ逡巡をしたものの、それ以降は躊躇せず、はいというボタンを押す。
システムによる二重確認も済ませた。
「・・・・・・」
この世界は人間にとってかなり危険で残酷だ。
ダンジョンマスターである私は、そんな世界の真実の一端を垣間見ている。
なので、例えどんな便利なジョブスキルを授かったとしても、生き残れる確率は、たぶん総人口の
数パーセントに満たないと思われる。
その程度であると、たぶん人間という種族は遅かれ早かれ衰退し、この世界に淘汰される未来しか
残されていないことだろう。
だがそんなことは関係ないのだ。
あくまで今を生きる私たちが、幸せであるかどうか、そこが重要なのだと思う。
目の前で光に包まれて、現世に受肉していく霧型藤次という英霊を、マリアとセイバーは静かに待つ。
光が収まり、そこには藤次とは似ても似つかない美丈夫が立っていた。
生前の少し出たお腹周りや、愛嬌のあるおっさん顔は欠片も無く、引き締まった肉体に、若々しくも
精悍な顔付きをしている。
そんな男が口を開く。
「問おう、マリアが私のマスターか?」
マリアは、藤次の頬を思いっきり引っ叩いてやった。
頬を張られ、目を白黒させて驚く藤次の胸元に飛び込んでやった。
ただし、今回は泣かないし、喚かない。
藤次は静かに笑い、マリアを優しく抱きとめる。
そんなマリアと藤次の姿を見て、セイバーが何かを思い出し、口元を手でおさえて可笑しそうに笑う。
「おかえりなさい藤次」
「ああ、ただいまマリア」
彼らの冒険はこれからも続いていくのだが、物語はここらでいったん閉幕としよう。
彼らのこれからも続いていく未来に、幸多からんことを切に願うばかりである。
つづく・・・。
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