第47話
とある巨大コミュニティの外、襲ってきたオーガ5体が跡形もなく細切れになった。
それはまさに一瞬の出来事であった。
その武器を形容するなら、それはガトリングガンと呼ばれるものであった。
「おいおい、こりゃ最高だぜぇ!
魔力の弾を打ち出す魔導式ガトリングガン! これさえあれば、もう怖いもんなしだ!」
男はひどく歪んだ笑いを浮かべ、自らの武器を愛で、それを作った者に賞賛の言葉を送る。
「これが量産できれば、もうあのクソウザイ聖女や迷宮なんていらねーじゃねーか!
なぁ、魔導技師さんよ?」
「いやいや、さすがにそれの制作過程を考えると、これの量産は厳しいですよ。
ただパーティメンバーに1人1つずつ作ることなら、素材を調達してくれるなら、
時間はかかりますが出来ないこともないですが」
「ああ、こいつがありゃ、素材なんて集め放題だぜ!」
「できれば銃身をミスリルに換装できれば、もっと重量が軽くて弾の威力も跳ね上がるんですけど、
そもそもミスリルなんて鉱物が本当に実在するのかも怪しいですし、でもスキルで要求されるという
ことは、可能性も・・・」
魔導技師と呼ばれた男が、ぶつぶつと独り言を呟く。
「たしかにこいつはかなり重い、かといって筋力の上がる戦士職じゃあ弾の原料である魔力が
枯渇するのも早い、だからこそ戦士と魔法使いの両方の特性を持つ魔法戦士の俺様だからこそ
持てる専用武器で良いんじゃねーの?」
「ええ、そうですね。
それに銃器は別にガトリングガンだけじゃありませんし、色々と試行錯誤して作ってみますよ」
頷いた魔導技師は、こちらに近づいてくるゴブリンを視界に収め、試作段階の見た目が
やたらとごつい魔導式ショットガンを構え、引き金を引き、ゴブリンの頭を吹き飛ばす。
「魔力の消費量次第で威力の底上げが可能ですけど、これではちょっと威力が高すぎですし、
帰ったら調整が必要ですかねぇ」
「おいおい、威力が高くて困ることなんてねーだろ?
へへ、それもこっちによこせよ、俺が有効利用してやっからよ」
こうして、運良く魔導技師を仲間に引き入れたこのチンピラの一団は、聖女打倒を目標として
静かに動き出したのであった。
それから半年の月日が流れた。
最初は数人のチンピラの一団だったが、たった半年でこのコミュニティを掌握し、自分たちに
逆らう者すべてを容赦なく殺戮する巨大組織へと変貌していた。
構成員もかなり増えており、構成員全員に魔導式銃器が支給され、魔導式拳銃、魔導式ショットガン、
魔導式ライフル、魔導式サブマシンガンなどで武装をしている。
そんなある日、のこのこと何も知らない聖女がこの町へとやってきた。
組織の下っ端である男が、新しくこの街の代表になったと嘘の説明をし、演技をしながら、
街の中へと聖女を案内する手筈になっていた。
そして周囲に仲間を配置させたポイントまで連れ込んでから、ハチの巣にしてやるという至極
分かりやすい襲撃計画であった。
そしてその計画が実行された。
魔力の銃弾が四方八方から聖女へと撃ちだされる。
もうもうと立ち込める砂埃が舞い上がり、それでも執拗に銃撃は続けられた。
さすがにもう死んだだろうと、リーダーであるガトリングガンを持った男が、銃撃をやめるよう仲間に言う。
もうもうと立ち込める砂埃が晴れていくにつれ、リーダーの顔に徐々に驚愕の表情が浮かぶ。
聖女は何事も無かったかのように、涼しい顔をしてその場に無傷で立っていたのだ。
「ありえねぇ・・・ありえねぇだろぉ!!! おい、空になるまで撃ちまくれ!」
激しい銃撃が再開される、それからしばらくして、魔力切れを起こした者から、銃撃が止んでいく。
そして最後まで撃っていたリーダーの持つ魔導式ガトリングガンからの銃撃音も止んだ。
ふたたび視界が晴れていく。
信じたくはなかったが、その場にたたずむ聖女は無傷であった。
聖女が、心の底から可笑しそうに笑っていた。
そしておもむろに、構成員たちが見守る沈黙の中、聖女がリーダーの方へと近づいていく。
来るな、近寄るな化け物とリーダーが喚いているが、そんなことはお構いなしに、リーダーの首根っこを
捕まえ、そのまま引きずっていき、ダンジョンの入口へと一歩入ったところで放り出す。
なんのトリックなのか、ただ立ったままの聖女の目の前で、何かを口にしたあと、リーダーが
縦に真っ二つに裂かれた。
それを見て、また笑い出した聖女が、魔力切れで動けなくなった構成員を、1人、また1人と、
捕まえてはダンジョンへ引きずって行き、やはり何もしていないのに、縦に裂けるのだ。
そうして命乞いをする者、泣いて許しを請う者、既に諦めたかのように何も言わない者、
誰もが同じ末路を辿って行った。
恐怖のあまり、ガチガチと奥歯が鳴っている。
もう最後の1人、自分の番になってしまった。
首根っこを引きずられ、死地であるダンジョンへと引きずられていく。
聖女を見上げるが、顔は見えない、ただ不気味に笑い続けていた。
ダンジョンに着いてしまった。
縦に裂かれた死体の山がそこにはあった。
見知った男たちの無念の双眸が、こちらを静かに見つめている。
目の前に薄く微笑む聖女とは名ばかりの悪魔がいた。
「・・・最後に言い残すことは?」
みんな同じことを聞かれたのだろう、そして答えた直後、縦に割かれたのだ。
「あなたのやったこのことを、噂として流す生き証人になることを誓う。
もうあなたには二度と逆らわないと誓う」
聖女が驚いたような顔をして、そして中空に向かって何かを囁くような仕草をする。
まるで何も居ないそこにいる誰かと喋っているような口ぶりだった。
「いいでしょう、ならばアナタだけは生かしておいてあげます。
ただし、もしその噂が私の耳に届かなかったら、お前を殺しにまた戻ってきますからね?」
そう脅すと、必死に頷く男の目の前で、聖女はダンジョンを一瞬で消して見せた。
もうこの街には必要ないだろうと、聖女はそのまま立ち去っていった。
生き残った魔導技師の男は、自分を守ってくれる組織の無くなったこの街から早々に逃げ出した。
そしてどことも知れぬコミュニティに辿り着き、そこを訪れた旅商人に聖女様に
逆らった者たちの末路という噂話を流した。
その風の噂は、コミュニティからコミュニティへと、旅商人から別の旅商人へと語り継がれ、
その途中、とある巨大コミュニティで、その噂の現場を実際に見たという旅商人によって、
噂の内容に真実味が増したのであった。
ただ、マリアがその噂を耳にしたのは、それからだいぶ経ってからのことであった。
そうですかと困ったように笑って聞き流したが、聖女様は否定もしなかったのであった。
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