第46話
マリア視点となります。
英霊召喚に失敗した理由を、召喚した英霊本人に聞くというのもどうなのかと思うが、マリアがそれを
尋ねると、セイバーはこともなげに、それならばと英霊召喚の仕組みを詳しく解説してくれた。
そもそも英霊召喚で重要なのは、その者に深く関連する遺物を媒介として、召喚の際には対象者を
しっかりとイメージをすることが重要なのだそうだ。
もし英雄の肉体を遺物として媒介とするなら、手首だけなどではダメで、肉体のほぼ9割を媒介と
する必要があるとのことだった。
それであれば、英霊としてのイメージの方はそこまで必要ではないらしい。
肉体に蓄積された遺伝子データなどを精査して、それを元に英霊としての肉体を強化復元、
脳から記憶など復元し、英霊として召喚するらしい。
つまり、遺物が占める割合と、イメージの占める割合で、かの英霊が確定するのだそうだ。
遺物だけを媒介として、イメージをしなかった場合は、召喚術式が自動的にそれらしい
英霊をランダムで見繕って、召喚するとのこと。
これであれば、滅多なことが無い限り、ハズレのない英霊を召喚できる。
「藤次のこと、考えて召喚したつもりだったんだけど、あの程度の媒介だと、その程度のイメージじゃ
ダメだったってことか・・・」
マリアは、天を仰いで呟く。
だが改善点は分かったし、次であれば成功させられると思った。
まだ進むべき道が完全に塞がったわけではなかった。
マリアは、不思議部屋に横たわる藤次の寝顔を見る。
「もう少し待っててよね、また1000万DP貯めて、今度こそ生き返らせてあげるからね」
そんな決意に満ちたマリアを、霊体のまま眺めていたセイバーであったが、いまの自分の状態を
自己分析してみて、思った疑問を口にする。
「・・・・・・マスターと藤次様は、どんな関係なのですか?」
「ふぇっ!? どどどんな関係って、べ、べつに普通の関係よ!」
変な声が出た。思いがけないところからの不意打ちのような質問だったからだ。
「はぁ、なるほど、普通の関係ですか・・・」
セイバーは、あまり納得のいっていないような声音で相槌をうつ。
セイバーは英霊としてマスターに絶対の忠誠を誓ってはいるが、盲目の繰り人形ではない。
自分で考えもすれば、今のように思ったことを口にすることも出来る。
絶対にしないが、もしかしたら、マスターを裏切ることさえ出来るかもしれない。
だがこれは、つまりマスターが藤次様を英霊として呼んだときに、そう望んでいたということ。
話し相手になってほしいとか、上下関係のない対等の立場で接してほしいとか、様々な願いのイメージから、
本来は私にではなく、藤次様の代わりにこれだけの権限が与えられているということだ。
不思議部屋では、安全だから護衛の必要はないとマスターから言われている。
だから、セイバーは霊体のまま、ふよふよと漂いながら、召喚された瞬間の記憶に思いを巡らせていた。
いまではいきなり頬を引っ叩かれた理由をしっかりと理解しているつもりだ。
当時は、いきなり何をするのだと思った。
急に頬を張られて憤りを感じた瞬間に、マスターであるかもしれない召喚者に対して憤りを
感じている自分に気づいて驚愕し、自らの英霊としての知識と照らし合わせてもあり得ない
ことだと思って、逆に冷静になっていった。
張られた頬のじんじんとする痛みを忘れ、目の前で大声で泣き喚く女性は、何を思って私を
召喚したのだろうと興味が湧いた。
その後、貴女を召喚するつもりではなかったとマスターから聞いた時、がっかりするのではなく、
むしろ、すとんっとこれまでのマスターの行動を理解することができた。
でも、あなたは何も悪くないのだとマスターは私に謝罪してくれた。
藤次様の代わりに、マスターを守ると、この身に誓った。
マスターの剣となり、盾となり、いつの日かマスターが大事に想われている藤次様が英霊として
召喚されたあかつきには、藤次様とマスターの両方に仕えようと、セイバーは思いを馳せるのであった。
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