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この壊れゆく世界でスキルを手に入れ生き延びる  作者: 小鳥遊ケイ
第一章 終わりの始まり
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第43話

マリア視点となります。

「聖女様、本日はスライム20体、ゴブリンを50体、オークを20体、そしてオーガ5体をお願いします」


まるで事務手続きであるかのように、初老の男性から淡々とした口調でモンスターの召喚を依頼される。

依頼通りの召喚をし、配置し終えてから、このコミュニティに設置したマリアのダンジョンの様子を

見て回るのがマリアのルーチンワークとなっていた。

途中で1体の無抵抗のオークを倒す若者の一団に遭遇し、それを眺める。


「もうオークを楽に倒せるようになったから、今度外でオーク狩りするべ!」


1人の若者が、そんなことを仲間と笑いながら話していた。

マリアがその若者たちに近づいていくと、すぐに若者たちがマリアの気配に気づいて、

片膝を地面について、頭を垂れる。


「聖女様、今日も我らに力を与えてくださり、ありがとうございます!」


マリアにはもう見慣れた光景だった。

最初こそ、こんな態度をとられたときは、いささかながら狼狽したものだが、いまでこそ

だいぶ聖女としての立ち振る舞いが板について来たのだった。


「顔をお上げください。あなたの力強いお言葉を聞いていました。

確かにあなた方のレベルが上がり、戦士としての力量もだいぶ上がったことでしょう。

ただ、外にいるオークは、このダンジョンにいる無抵抗のオークより確実に危険です。

それを肝に命じて慎重に狩りに行ってくださいね」


「はっ!ありがたきお言葉、肝に命じます!」


また若者たちが頭を下げる。

私がいるとずっとこのままの姿勢でいることも知っているので、早足にならないよう気を付けながら、

なるべく急いでこの場を離れる。

10分ほどしてダンジョンからだいぶ離れたところで、ふと意識を集中すると、若者たちの話し声が

聞こえてくる。


「何様だっつーの。まったくいつもいつもうるせーこと言いやがって」


「おい、まだ聖女様が近くにいるかもしれないだろ! 気を付けろ!」


「ああそれは大丈夫だ、俺の盗賊の【索敵】スキルの範囲外だから、もう声が届く距離じゃない」


ダンジョン内にいる限り、ダンジョンマスターには声は筒抜けだ。

ただ、マリアはコミュニティでも主に若者を中心に自分がそう言われていることも知っていた。


当初こそ、本当の意味で感謝の言葉しかなかったのだが、それが1年、2年、そして3年ともなると、

人間それがいつしか当たり前となり、感謝の意識は、老若男女問わずであるが、傾向として若者の方が

顕著に薄れているようであった。


だが、誰にどう言われようと別に構わないのだ。

彼らが、マリアのダンジョンで狩りを行ってくれてさえいれば、DPは貯まっていくのだし、

ただおごりは死に直結ちょっけつし、あの若者たちが居なくなることで、DPのかせぎが

減ることになる。

それはマリアとしては大問題であるので、少しそれを理解してもらう必要があるだろう。

マリアは、そっとあの若者たちの周囲にいるモンスターの無抵抗設定をOFFにし、若者たちを

俯瞰視点で見守ることにした。


初老の男性が振り返ると、目を瞑ったまま立ち止まったマリアを不思議そうに見つめ、問いかける。


「どうかされましたか、聖女様?」


「ええ、いまから、さきほどのあの若者たちに試練を与えます。

大丈夫です、殺しはしませんので・・・」


ハッと何かを察したかのように、初老の男性の顔が真っ青になり、何かに怯えるかのように

ぶるぶると震え出した。

そしてすぐさま、地面に額をこすりつける姿勢で、大声でマリアに向かって謝罪の言葉を口にする。


「あの馬鹿どもが、あなた様に無礼を働き、申し訳ありませんでしたぁッ!!! 

あの馬鹿者たちはどうなっても構いませんので、どうか、どうかダンジョンをこの地にお残し

頂きますよう。平にお願い申し上げますッ!!」


「ええ、ええ、大丈夫ですよ。

これはただの試練ですから、ほらほら、もう2体オーク追加ですよ?」


マリアは目を瞑ったまま楽しそうにそう答え、その口元だけがいやらしく笑う。


これは旅商人によるただのかぜうわさであるが、ここより大きなどこかのコミュニティが、

強さにおぼれたせいか、聖女様に反旗はんきひるがえしたという噂を聞いた。

そのコミュニティからは、ある日、聖女様の迷宮が忽然こつぜんと消えたのだそうだ。

そしてそのコミュニティで反旗を翻した力のある者たちも、もうこの世には存在しないらしい。

ただの噂であるが、このコミュニティではまことしやかに語られる有名な噂話であった。


地面に額をこすりつけた姿勢のままの初老の男性は、顔を上げることも出来ず、声が届くような

距離では無いダンジョンの奥底から、若者たちの悲鳴や絶叫が聞こえた気がして、ぶるりと身体を

震わせるのであった。

【読者の皆様へお願い】


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