第40話
マリア視点となります。
これから私を殺すであろう血走った目をした豚男を冷静に見つめていると、豚男の背後にある
物陰から、急に見知らぬ片腕の少年が、槍を手に、豚男に襲い掛かりました。
私を助けようとしてくれての行動だということは分かりましたが、余計なことをしてくれるなと
思う自分もいました。
そんな少年でしたが、豚男の背中に槍を刺し、驚いて振り向いた豚男に何処からか取り出した
ゴルフクラブで豚男を滅多打ちにしていくも、すぐに体力の限界が来たのか、息が切れてあきらかに
動きが鈍っていくのが分かりました。
いくら仲間割れをして満身創痍の豚男とはいえ、いくら少年に不意打ちを食らったとはいえ、
少年を殺す程度の力はまだまだ残っていたのでしょう。
ゆっくりと背中に槍がささったまま振り向いた豚男を見た少年は、ああこれで死ぬんだなという
諦めの表情を浮かべました。
その少年の表情を見て、ああ、彼はさっきまでの死にたがりの私なんだと思いました。
その直後、私のどこにそんな感情が隠れていたのか分かりませんが、これまで感じたことの
無いくらい、なんだかすごくイライラした感情が沸き上がってきました。
ああ、これがキレるという感情なのかなと思いました。
私の目の前で揺れる、豚男の背中に浅く刺さったままの石槍を見て、その場で静かに立ち上がり、
どこから湧いて来たのか到底分からない溢れ出る力を込めて、槍を掴んで思いっきり
押し込みました。
私の体の中から鳴ってはいけないような音が、筋肉がブチブチと切れるような音を聞きながらも、
痛みは無く、それでいて溢れ出る力の制御が利かず、妙にイライラしたまま、諦めかけた少年を
怒鳴りつけました。
「今です! 殺し切りなさいッ!」
私の声で我に返った少年は、驚いたようにこちらを見たあと、大声をあげてそのまま豚男に
とどめを刺しました。
私よりだいぶ年下の少年でしたが、お見事と思いました。
その直後です、私の頭の中に中性的な、それでいてけっして不快ではない謎の声が響きました。
【レベルアップを確認しました】
きっと気のせいですね。
死ぬかもしれない思いをしたこともあり、幻聴が聞こえてもおかしくないと思いました。
豚男が前のめりに倒れたのを見て、私はすぐに倒れた豚男に片足を乗せ、槍を引き抜きました。
これで出血多量で、まだ死んでなくても勝手に死ぬことでしょう。
そして目の前の少年と対峙したところで、やっと自分が上半身が裸なことに気づき、
急に恥ずかしくなって、慌てて槍を持っていない方の手で胸を隠しました。
「すてーたす・・・おーぷん・・・・・、でいり・・・ぐち・・・さくせい・・・」
今にも消え入るような掠れた声で、急に少年が何かを呟きました。
なんと言ったのか、私に向けての言葉だったのかどうかも分からず、彼の言った言葉を
そのままオウム返しに問い返しました。
「ステータスオープン?」
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名前:葉月 マリア
レベル:3(1→3)New!
職業:なし(選択可能)New!
スキル:なし
SP:20(0→20)New!
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マリアの目の前に半透明のステータスが表示された。
視線のすぐ先、空中に現れた立体表示のようなものに驚き、ソレが出現すると同時に近くで
どさっという音がしたのには気付くことはなかった。
名前を見ると、自分の名前が表示されている。
レベルは3とある。
まるで、ネット上にある文豪になろうサイトに載っている異世界転生などのファンタジー小説の
ようだと思った。
1から3に一気にレベルが上がっているということは、豚男はそこそこ強かったのだろう。
職業はなしで、選択可能の部分がチカチカと点滅している。
おそるおそるといった感じで、そこを軽く指で触れてみると、職業の部分が展開表示された。
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・戦士
・魔法使い
・僧侶
・盗賊
・それ以外のランダム
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5つの選択肢を見て、迷わずそれ以外のランダムを選ぶ。
マリアはそもそもゲームというものに縁が無かった。
なろう小説を読み始めたのも社会人になってからだし、そもそもゲームというものには
興味も無かった。
だから、前の4つの職業には、どれもピンと来るものが無かったのである。
すぐに【職業は二度と変えられませんが、本当によろしいですか?】という表示が出た。
これにも迷わずOKボタンを押した。
すると一瞬だけ【選定中です・・・お待ちください】という文字が出て、
すぐに【職業が決定しました】という表示に切り替わった。
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名前:葉月 マリア
レベル:3
職業:ダンジョンマスター
スキル:なし
SP:20
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決定した職業欄を目にした瞬間、目の前にいままでそこに無かったはずの扉が忽然と現れた
ことに驚いた。
目線を少し動かすと、助けてくれた少年が力尽きて倒れている事にやっと気づいて、
さらに驚くことになった!
慌てて近づいて脈をとるも、生きていることが分かったマリアはひと安心する。
突然現れた不思議な扉に、慎重に近づいて開くも、そこは狭いながらも天井も壁も床も白一色の
不思議な部屋であった。
ただ、不思議とこの部屋は安全なのだと直感的に分かった。
なので、意識を失った少年をなんとかずるずると引っ張り入れ、何か着るものはないかと物色するも
何もなかったので、意識の無い少年に謝りつつも、服の上下をお借りした。
サイズは丁度よかった。
狭い部屋だったので、探索に時間はかからなかった。
最新式の洋式トイレを借り、水道からは水が出たし、とても美味しい水だったが、キッチンはあっても
食料は無いようだった。
あと部屋に入ったときから感じていた事だったが、不思議と身体が内側からぽかぽかするような
感じがするが、周囲に暖房器具のようなものは見当たらなかった。
少年はまだしばらく起きそうもないし、マリアは不思議な部屋の硬い床で、少し仮眠を取ることにした。
硬い床に横になる。
顔を横に向け、助けに来てくれた少年を見る。
誰かと一緒に寝るのは、すごく久しぶりだと感じた。
誰かがいる安心感を感じつつ、マリアはすぐに寝息を立て始めたのであった。
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