第39話
マリア視点となります。
私の名前は葉月マリア。
父が日本人、母がイギリス人、私はそんな両親の間に産まれたハーフです。
ただし産まれも育ちも日本人です。
何度か母の里帰りについて行ってイギリスには行ったことがあります。
私がまだ小学生だった頃、あるいは12歳の頃、交通事故で両親が死んだ。
ちょうど私は祖母の家に預けられていて、そのまま父方の祖母の家に引き取られることになりました。
頭の中が真っ白で、何も考えられないし、しばらく何もする気が起きなくて、ずっと部屋のベッドの
中に籠っていました。
泣いて、大いに泣いて、こんなのは嘘だと思いました。
おばあちゃんは、返事もしない私に毎日話しかけてくれて、ずっと優しくしてくれました。
おじいちゃんに先立たれて、残された私も悲しいから少しは気持ちが分かると言ってくれました。
祖母の家に籠って1年くらい経った頃、やっと部屋の外に出られる様になった私を、祖母は
つらかったね、つらかったねと、泣いて抱きしめてくれました。
祖母の胸に抱かれて、声を上げて一緒になって泣きました。
20歳を迎え、社会人となった私は、祖母と2人で暮らしていました。
幸せな毎日でしたが、ある日突然、祖母が亡くなりました。
事故などではなく、老衰だとお医者様は言っていました。
葬儀を済ませ、とうとう私は天涯孤独になりました。
小学生の頃のように家の中に籠るようなことはせず、というか出来なかったのですけれど、
新社会人として忙しく働くことで気を紛らわせられたのは、この頃の私としては
助かっていました。
ただ、家に帰るたびに、ただいまと声をかけたら、おばあちゃんがいつも通りに返事をして
くれるんじゃないかと妄想し、そうやって返事のない挨拶をする度に、じわりと涙が出ました。
1人で暮らす家のなんと広い事か、祖母の存在がどれだけこの広く感じる家の隙間を埋めてくれて
いたのか、祖母が居なくなって初めて気が付きました。
小学校の頃、両親と暮らしていた家は、すぐに祖母の家にひきとられたおかげもあって、その
寂しさを味わう機会が無かったことは、いまを思えば幸運だったのかもしれません。
それからか、再び親しい知り合いを失うことを怖がり、あからさまに親しい友人などを作る
ことを避け、ただ無意味に仕事をして、少し現実逃避気味な私は
読書という趣味を持ち、迎えた28歳の誕生日、世界が崩壊しました。
世界の終りの日、私はそれまでと同様に、仕事で会社に居ました。
仕事をしていると、急に会社の中や、それこそ外から、たくさんの人の悲鳴が聞こえてきて、
その直後、私を取り巻くたくさんの人々は、パニックに陥りました。
死んでいないだけの私は、突然訪れた絶望的な世界の光景にも、どこか現実味の無い冷めた感情で
壊れた自分を感じていました。
怖くて隠れる人や、逃げ惑う人、誰かを助けに行こうとする人や、いろいろな人が帰らぬ人となりました。
でも、私にとっては割とどうでもよくて、ほとんど誰もいない会社で就業時間を終えると、
その頃には外は嘘のように静かになっており、家に帰ろうと思いました。
帰り道、顔が豚のような大男に捕まり、ああ死ぬんだなと思いました。
不思議と恐怖感はあまり無くて、これでやっと両親や祖母に会えると思いました。
豚男の肩に担がれ、運ばれること20分ほどで、急に地面に降ろされて息が詰まり、
少し落ち着いたところで周囲を見ると、近くに同じような顔をした豚男が数人たむろしており、
何事かを話していた。
すると突然、豚男たちは言い争いを始め、仲間割れを始め、けっきょくその場にいた
ほとんどの豚男が倒され、勝者となった1匹の豚男が、手に槍を持ち、こちらにのっしのっしと
歩いてくるのを、他人事のように見ていました。
「くっ、殺せ!」
と私の自らの死を渇望する声が、思わず口からこぼれ出ていました。
ああそうか、私は自ら死ぬ勇気は無かったけど、でも死にたかったんだなと思いました。
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