第36話
「武器になるものも調達しておいた方がいいんじゃない?」
ショッピングセンターで何か他に目ぼしいものはないかと二人で散策している途中で、
ふとマリアがそんなことを言ってきた。
「そうだな、たしかスポーツ用品店が一店舗あったはずだ。
ついでに毎日の運動スキル強化のためにトレーニング器具もいくつかほしいな」
スポーツ用品店で片手武器として扱える木製バット、金属製バット、竹刀に木刀、
ゴルフクラブなどを調達した。
弓の心得は無いが、アーチェリーの類も壁にかかっていたので矢と一緒に一応もらっておく。
ダンベルも重量別にいくつか拝借した。
すこし変わったもので、身体につけられる重り・・・各種ウエイトを手に入れた。
手首につけるリストウエイト、腰につけるアンクルベルト、胴に着けるアンクルベスト、
足首につけるアンクルウエイトなどだ。
亀仙流において、これらの効果のほどはご理解いただけることだろう。
ん、亀仙流とはなんのことか?
いや、知らないのなら気にしないでもらって構わない。
重りをつけて修行をする、そういう流派があるというだけの話である。
それにこれらは、中に重りが内蔵されていることから、用途こそ違えど、多少の防具としても
機能することもあるのではないだろうか?
説明文を読むに、中に鉄紛や砂鉄のようなものが入っているらしいので、若干の衝撃吸収効果が
見込めるかもしれないが、そもそもの用途が防具のそれではないので、過度な期待はしない方が
いいだろう。
藤次は服の上から、一番重いウエイトを全身に装着してみた。
その場で軽くぴょんぴょんとジャンプしてみるが、そこまですごい負荷がかかっているような
感じはしなかった。
動いてみて、ひどく音がするとかそういうこともなさそうだ。
あとは何かないかと、スポーツ用品店を見回してみると、靴が置いてあったので
何足分か余分に回収しておく。
「これくらいかな?」
「そうねぇ、食料にはならないけど、スポーツ飲料の粉のやつとか、プロテイン飲料の粉のやつが
けっこうバックヤードにあったから、身体を鍛えるならついでにこれも飲んでみたら?」
「へぇ・・・うん、飲んだことないけど、試してみるよ」
マリアから受け取った箱の後ろに書かれた謎の呪文めいた成分表を眺めながら、藤次は
ありがたく回収した。
「で、行くんでしょ?」
なんの前置きも脈絡もなく、唐突な質問がマリアの口から飛び出す。
「うん、行くよ。
ただこれは俺の我が儘のようなものだから、マリアには強制はしないよ。
だから、この件に片が付くまでの間、不思議部屋の中にいてくれて構わないよ」
唐突で主語の無い会話に、けれど藤次は瞬時に返事をする。
この話はいつかどこかでしないといけない予定だったからだ。
いつするか、どこでするか、ただそれが決まっていなかっただけの話なのだ。
「な-に言ってるのよ、付き合うわよぉ!
藤次の彼女の椎名さんとやらも見てみたいしね! にひひっ!」
「だ、だから言ってるだろ、彼女じゃないって!」
「いーじゃん、いーじゃん、べつに隠すようなものでも無いでしょー?
それに必死に否定するところが怪しいなー!」
こんなふざけた軽口に、マリアの気遣いを感じる。
彼女がふざけだすのは、大抵そういう空気を払拭するためのような気がするのは、
ただの考えすぎか、僕の気のせいだろうか?
それでもありがたいことに変わりはない。
「もぉー! でも、ありがとう・・・」
「お礼はダンジョンポイントでいいぞー!」
わはーっと快活に笑った彼女の歯が白く輝いていた。
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