第31話
「まず、武器を捨てろぉ!!!」
それなりに離れているが、それが半年間スーパーで一緒にいた一部の男たちであることは分かった。
だが、武装解除を求めて大声をあげてくる男は知らない。
マリアに俺が交渉をすると目配せして、少し前に出る。
ショッピングモールとは反対側から現れたということは、あちらにはメイン職業が盗賊である
者もいることから、たぶんかなり前から補足されていて、後ろを尾行されていたのだろう。
まったく気が付けなかった・・・。
「俺の名前は霧型藤次、そっちの何人かは俺を知っているはずだ!
武器を捨てる前に、まず俺たちの安全を保障してもらいたい!
あと、そちらに居るであろう椎名さんか長老と話をさせてほしい!」
この言葉で、まず相手の反応を観察する。
見知った男たちはその言葉を聞いても、うつむいたままじっと無言を貫いている。
あっ、顔を背けた人が1人だけいたのを俺は見逃さない。
「そんな奴らは知らないしぃ、みんなお前を知らないと言っているぅっ!!!
武器を捨てないのであれば、こちらもそれ相応の対応をさせてもらうぅっ!!!」
リーダーは語るに落ちているが、どういう事情があるにせよ、見知った面々とはできれば戦いたくない。
まだだいぶ距離があるうちに、素早く決断をする。
「マリア、いったん安地に退こ、う・・・!?」
藤次が踵を返したときには、マリアはすでに不思議部屋の扉を開けていた。
たぶんこうなると予想して、ジリジリと下がっていたのだろう。
俺たちは訳も分からず、ひとまず安全地帯へと逃げ込んだのだった。
だがあえて出入口の扉は閉めない。
閉めないことで、外の様子を窺うためだ。
そしてこのスキルによる扉はほかの者には感知できないし、触れない。
相手からしたら、急に壁の近くで消えたように見えただろう。
ただスーパーの男たちは、俺のスキルを知っているはずだから、バレている可能性も否定はできない。
先頭で武装解除を求めていた男が、遠くから怒鳴りながら走ってくるのが見える。
それは言っては悪いが、見るからに小悪党といった感じのネズミのような面構えをした男であった。
仮に、そいつをネズミ男と呼ぶことにする。
「ねぇ、あいつらと知り合いなの?」
マリアが肩越しに、後ろからそう聞いてくる。
「先頭のネズミ男は知らない、他はほとんど知ってる。こんな世界になってあいつらと半年くらい
一緒に暮らしていたんだ」
「椎名さんってたぶん女よね? なになに? 藤次の彼女なの?」
シリアスから一転して、からかい気味のマリアの声に振り返ると、案の定、口元にいやらしい
笑みが浮かんでいる。
「ちげーよ、椎名さんは、あいつらと暮らしていたスーパーで、リーダーをやっていた女性なんだ。
世話になっていたけど恋愛感情は無い、どちらかというと尊敬してる」
「ふーん、つまんないわねぇ、あっそろそろ到着みたいよ」
こんなときだというのに、マリアも相当に肝が据わっていると思った。
まぁ馬乗りになるオーク相手に捨て台詞のひとつも言うのだし、それと比べれば武装した人間など
あまり大したことはないだろう。
後ろのマリアの顔から正面へと視線を戻す。
「ぜぇはぁ、ぜぇはぁ、・・・おいィっ、あいつらどこ行きやがったぁっ!!!
盗賊、すぐに索敵しろぉぉぉ!!! 男は見つけ次第殺す、女は拘束しろぉっ!!!」
ネズミ男は、苛立ちを隠そうともせず、いちいち勘に触るような怒鳴り声をあげる。
見知った盗賊の男は何も言い返さずに、ただ淡々とスキルを発動させているようだ。
みんな何かに耐えるかのように辛そうな表情を浮かべている。
「なんかネズミ男に嫌々従っている感じ、だね?」
マリアの言葉に頷き、そろそろ日が暮れることも考慮して、いったん夜になるのを待つことにした。
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