第25話
「私のダンジョン、作った方がいいのかな?」
唐突なマリアの呟きに、一瞬それが独り言なのか、はたまた自分に向けられた言葉なのかを
計りかねた藤次は、顔を上げてマリアを見た後、黙って次の言葉を待つことにした。
「いままで相談できる人がいなかったから・・・・・・霧型さんは、どう思う?」
藤次のいままでの経験上、知り合いがこういう相談をしてきたときは、大抵の場合がその相談者
の中ではすでに答えが出ている場合が多く、それが正しいことなのか決断できないからこそ、
相手に背中を押してほしいことで、こういう質問をしてくる人が多かった。
だから、こういう場合の答え方は藤次の中では決まっていたので、そのまま口に出す。
「マリアさんは、どうしたいの?」
「私は・・・・・・私のスキルだし興味がある、かな・・・」
マリアは少し言い淀んだあと、はっきりとそう言葉にした。
「なら、良いんじゃない?」
「・・・良いのかな?」
このやり取りだけで、藤次はマリアが何を心配しているのかがだいたい分かったような気がした。
たぶん人類の敵となる可能性という話だろう。
「俺は、スキル自体に善悪は無いと思っているよ。
ようは使い手が、その力をどう使うか次第だと思う」
「うん、じゃあ、ダンジョンコア設置っと」
すいっと空中に指を走らせたかと思った瞬間、不思議部屋の床に座ったマリアさんと自分の間に、
赤い水晶が突如として出現した!
ふわふわと空中に浮かぶそれは、六角柱のまさにこれぞ水晶という感じの、およそ縦に1mほどの
大きさをした一点の曇りもない赤く透明な水晶であった。
「ちょっ、えーーーーっッッ!!!!??」
「なっ、なに!?
もう、急に大声出したらびっくりするじゃないっ!」
マリアさんは急にどうしたんだとばかりに、こちらに非難めいた視線を向けてくる。
いやいやいや・・・。
「だ、ダメですよ、ここに設置したら!」
「だって、さっき良いって言ったじゃないっ!」
いや、だからそれは違う意味で、と藤次は自分の勘違いと説明不足な会話に、
深い後悔を覚え、天を仰ぐ。
「あーもう!
と、とにかくいったん設置を解除してくださいよっ!」
「無理よ!
一度設置したらもう動かせないってアナウンスが言ってたもの!」
ギャーギャーワーワーと喧しい言い合いがしばらく続き、あるときを境に二人そろって
ほぼ同時に無言の空白が生まれたことにより、いったん水を飲んで落ち着こうという話になった。
「ごくごく・・・、この水道の水、昨日も勝手に飲ませてもらったけど、まるで3日間砂漠を
うろついて初めて飲んだ水のような爽やかさよね!」
「ごくごく・・・、まぁたしかに気品に満ちた水っつー感じだよな!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「でだ、まぁ言葉足らずだったことはお互い様だし、設置してしまったものはもう仕方ないから、
今後に向けた建設的な話し合いをしようぜ、マリア」
もうここまで来たら一蓮托生であるし、他人行儀な呼び方はやめて、
お互い名前をそのまま呼び合うことにした。
「そうね、ここにダンジョンコアを設置したことで、ここに私のダンジョンを作成できるわ。
ただ、私はダンジョンマスターだから自分のダンジョンでは経験値を入手できないの。
でも、藤次は違う。
私のダンジョンからでも経験値が入手できる、これがどういう意味か分かるわよね?」
藤次は考えるまでもないとばかりに頷いて見せた。
ダンジョンマスターが自分のダンジョンで効率良く安全に経験値を稼がせてくれると言っているのだ。
「その代わりに、俺はマリアにこの安全地帯を貸すことができる。
施設もこれから充実させていくし、ここほど安全なダンジョンコアの設置場所もないと思う」
つまりお互いにとってWin-Winな関係というわけだ。
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