第22話
どうしてこうなったっ!?
時は、数分前に遡る。
ゆっくりと目を覚ました藤次は、床で寝ている自分に気がつくことになった。
不思議部屋の無機質で真っ白な天井が見える。
目覚めるまでの記憶を思い出してみるが、不思議部屋への出入口を作成したところまでは
覚えているが、そこからこの不思議部屋の中に入り、今に至るまでの記憶が無いのだ。
身体を動かそうとすると、身体がまるで何かで拘束されているかのように、まったく動けない。
「う、ううん・・・・・・」
さらに耳元で、何やら見知らぬ女性の悩まし気な声が聞こえた。
首だけを動かして、隣をおそるおそる見ると、そこにはパンツ1丁という情けない姿の藤次を
ダッコちゃん人形よろしく、俺を抱き枕代わりにして眠る20代後半を思わせる美しい女性がいた。
よくよく見ると、いま女性が着ている服は、記憶が途切れる前に藤次が着ていたものだった。
どうしてこうなったっ!?
冒頭に戻る。
目を閉じ、冷静になれ、冷静になれ、冷静になれ・・・と心の中で念じる。
身体を動かせないと思うと、その反動で体は思わず微妙に動いてしまうもので、
女性特有の柔らかい体の感触がダイレクトに全身に伝わってくる。
高校生にはちょっと刺激が強すぎる。
なんとか頑張って拘束から抜け出したところで、ようやく女性も目を覚ました。
「・・・ううん・・・。
あら、少年おはよう?」
「お、おはようございます・・・。
えーと、昨日のアレからの記憶が無いんですけど、どうしてこうなりました?」
それから、お互いに自己紹介をした。
彼女いわく、年齢は28歳で、名前をマリアと名乗った。
青い目を見せて、ハーフなのだそうだ。
昨日のあれからのことを聞くと、彼女のユニークジョブに関する能力で、この出入口を
設置するところから見えていたことと、中に入れるということが判明し、一緒に入ったとのこと。
ユニークジョブに関しては、生命線ともなりえるので、あちらから言わなかったので、
詳しくは聞かなかった。
その際、この空間が藤次のスキルによるものであり、安全地帯であり、普通は誰も入れないという
ことを一通り説明した。
マリアさんから、勝手にトイレやキッチンを借りたことと、着ていた服を貸してもらっている
ことに対して謝られたが、ここで脱がれるとこちらの精神衛生上よろしくないので、そのまま
着ておいて下さいとこちらからお願いすることになった。
「マリアさん、俺はこれから駅に戻って仲間たちを助けに行かなければなりません。
だからここでお別れです」
時間的に、何時間経過したか分からないが、たぶん状況は絶望的だろう。
だが、どれだけ絶望的であろうとも、生存確認だけでもしておきたい。
「この近くの駅って、渋谷駅?
やめた方が良いよ、だってあそこAランクダンジョンだよ。死にに行くようなものだよ?」
と言ったマリアは、しまったとばかりに慌てて口を塞ぐような仕草をする。
「え、Aランクダンジョン・・・ですか?」
意味は理解できる。
だが、どうしてそれが分かるのか、それも彼女のユニークスキルによるものなのだろうか?
藤次に不審げな視線を向けられて、それでもしばらくうんうんと唸ったあと、マリアは長い溜息と
ともに諦めたように語りだした。
「はぁ・・・、昨日危ないところを助けてもらってるもんね・・・。
だからあなたにだけ正直に話すけど、これはぜったいに他言無用でお願いね?」
藤次は約束すると同時に、大きく頷いて見せた。
それを確認しても尚話し難い内容なのか、マリアはキョロキョロと周囲に
他に誰もいないことを確認しつつ、なるべく声を潜めて語りだした。
「私のジョブは、ダンジョンマスターというの。
ダンジョンの場所やランクが分かるのも、ダンジョンサーチというスキルがあるから。
あと私のジョブには、ダンジョン管理人という固有スキルがあって・・・え、もういいの?」
マリアの説明を途中で制止する。
そこまで聞く必要はないし、もうなんでここに入れるのかもだいたいわかった。
この不思議部屋が、いわゆるダンジョンとして認識されたのだろう。
それにしてもダンジョンマスターとは・・・・・・ジョブ名を隠すのも頷ける。
確かにそのジョブ名であると、人類の敵対者として捉えられかねない。
そういう系の小説では、大概が人類の敵側だしなぁ。
「質問なんですけど、ダンジョンマスターの固有スキルでダンジョンの敵から
襲われくなるなんてことは?」
マリアは、首を振って自分のダンジョンではないから無理だと答えた。
「マリアさんが管理するダンジョン以外にも、ダンジョンがあるんですか?」
「自然発生するダンジョンがあるわ、というか99%がそれね。
というか、私のダンジョンはまだないわよ?」
なるほど。
色々と分かってきた。
「最後の質問、Aランクダンジョンの最弱モンスターって何かわかりますか?」
少し目線を上げて、中空を見つめるような感じで、しばらくボーっとして
いるように見えたマリアは、しばらくすると、ちょっと自信の無さそうな様子で
ひとつの言葉を口にする。
「れっさーどらごんって出たけど、何だかわかる?」
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