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 ──。


 ──まどかにこんな思いをさせてしまったのは、やはり辛い。嬉しそうに無意識の僕に話す姿を思い出して、心が痛くなる。


 こんな仕打ちを受けたのに、僕の事を一度も批判していないのだ。



 言い訳ばかり浮かぶ僕とは大違い。


 まどかを見ていると、自分が情けなくなる。


 

 それから無意識の僕とまどかは、しゅり先輩の凄さや今後の僕との付き合い方について語り合っていた。


思い出してみても、重要そうな会話は特に無い。僕の話題も学校の時と大差なく、平行線のままだ。


 一通り思い出し終わった所で、日記に目を戻す。


 二日目、三日目と読み進めていくと、楽しく学校生活を送る様子が拙い文章で書かれていた。



 ……あれ?


 ……終わり?


 ……これで、終わり?



 慌ただしくページを行ったり来たりして、必死で重要な事を思い出そうとする。



 ……ない。


 ……これ以上、重要な情報がない。



 三日間、僕とまどかは喧嘩をするどころかどんどん仲を深めていき、自然に僕の事を下の名前で呼べるようになっていた。


恋人繋ぎだけは一言断ってから行っているが、僕へ抱きつくような事は一切ない。



 火曜日から昨日までの三日間。


 まどかは、200ポイント以上の行動を、常に取り続けている。


 なのに、友好度は変わらず199ポイント。



 原因はなんだ?


 無意識の僕の行動だから、ポイントが反映されないだけか?


 となると、今日まどかと会えばポイントが飛躍して200ポイント以上になるのか。


 ……うん。可能性としては、これが一番高い。


 ふと気付くと、朝食の時間まで30分強という時間になっていた。雨のせいで外が暗いから、時間感覚が狂ってしまっていたらしい。


部屋を出て下の階へ降りる。真っ暗なリビングから察するに、パパとママはまだ夢の中だ。


部屋へ戻って制服に着替え、洗面台で身だしなみを整える。


置き手紙を残して、僕は家を出て占いの館へと向かった。


 大雨とまではいかないが、風があるせいで傘を差しても膝から下が徐々に濡れていって、その部分だけが変色したように濃くなった。


雨の音が心地良い人の感性が羨ましいなぁと思いつつ、紫色から紺色ぐらいにまで変色したのれんの垂れ下がる、占いの館へ到着した。


流石に開いているか不安になり、濡れたのれんを片手でずらし、中の様子を伺った。


 占いばあさんが、いつもの様子で座っている。


「おや、今日はバカに早いね。コソコソしてないでこっち来な。風邪引くよ」


 言われた通り中へ入り、絞った傘をトントンとやって水滴を弾かせる。


コンクリートの地面にポツポツと水滴の後ができて、なんだか普通に現実の世界で暮らしているような気分だなぁ、と思った。


「どうした、早く座んな」


「あ、はい……」


 傘を部屋の角に立てかけ、そのまま占いばあさんの前へと座った。


「元気んなったか」


「とりあえずは……」


「幸太郎にとっちゃ三日ぶりってよりも、昨日ぶりという感覚か」


「まぁ、そうですね……」


「どうだい。三日間なんかあったか」


「まどかと、恋人みたいな関係になりました。


あくまでも『みたい』というだけで、付き合ってはいないのですが……」


 まずは火曜日に起こった出来事を報告する。嬉しい報告でもあり、悔しい報告でもある。複雑な気分だ。


「……なるほどな。進展があったなら良かったじゃないか。しかし何故、こんな朝早くからここへ来た」


「そうだった!えっと、友好度の事なのですが……。


無意識の時のポイントの溜まり方について、輝樹は何か言ってましたか?」


「うーん、どうだったかねぇ……」


 早く予想を確信に変えたくて、朝っぱらからわざわざ占いの館へ来たのだ。念のための確認である。


初期の輝樹が色々と占いばあさんに相談していたという事は、無意識の輝樹についても全て話しているはず。そう思っていた。


しかし、占いばあさんはなかなか返答をしない。思い出そうとして言葉が出てこないような、唸り声を上げている。



 次の言葉を聞いた瞬間、僕は耳を疑った。



「ポイントが溜まりにくい、と言っていた様な気はするが……」


「えっ、ポイント溜まるんですか!?」



 溜まり『にくい』じゃなく、溜ま『らない』の間違いじゃないのか?


 ここへ来て、嫌でも占いばあさんの老いを疑ってしまう。



「曖昧だが、そう言っていた様な気はするよ。老いぼれなもんで記憶がな……すまないね」


 やはり曖昧か。占いばあさんの言うことだから信じたいけど、果たしてあやふやな記憶を信じて良いものだろうか。


占いばあさんは申し訳なさそうに、話を続けた。


「その話題が出たのは、もう随分と前の事だ。


ポイントが溜まりにくいからどうにかしてくれ、と相談を受けたような気はするのだが……。


ところで、それを知った所で何が分かると言うんだい」


「実は、まどかの行動が不可解なんです。


さっき話した内容って、友好度が200ポイント以上の行動なんですよ。


でも、スマビュでは199ポイントのまま止まってるから、無意識状態だと上がらないのかなぁ、と……」


「そういう事だったか……」


 占いばあさんは思い出したように、続けて発言した。


「あの後、占ってみたんだよ」


「えっ?」


「幸太郎の行く末をな。この水晶は運勢だけではなく、簡単な未来なら占うことができる。


幸太郎があんな風になってしまったからね。先に今日のことを占っておいた」


「わざわざそんな……。ありがとうございます」


 ゲーム内では運勢と一言コメントだけだった。そのコメントで何が起こるか大体わかるのである。


占いばあさんの言う未来占いは、この一言コメントの延長と考えて良いだろう。


「見えた未来を一言で表すのであれば……」


 占いばあさんが言い淀む。ここだけゲームと同じなのやめて。スッと言ってほしい。



「……乙女心は、複雑なものになる」


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