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誤解

 場の空気が落ち着いた所で、僕とかがみんの歯車がどこから合わなくなっていったのか、改めて確認をした。


「かがみん。勘違い……って、どの辺から?」


「狩場くんと初めて会った時から、かな」


「えっ、最初から……」


「ボクと狩場くんって、公園のベンチで仲良くなったでしょ?


あの時、最初にかがみんって叫んだ理由を聞くの忘れちゃってさ。


帰って冷静になってね、いきなり叫び始める変な人と仲良くなっちゃったー!って、ちょっとだけ後悔したんだよ」


「後悔……ひどい……」


「あー、ごめん!今は嫌だなんて1ミリも思ってないから!変な人だなぁ、とは思うけど!」


 そんなに変かなぁ、僕。


「それで、狩場くんを変な人って勝手に決め付けて生活してて。


そしたら、宇月ちゃんがいつの間に狩場くんとめちゃくちゃ仲の良い雰囲気で喋ってるじゃん?


ヤバ、宇月ちゃん標的にされてる!って思っちゃってさ。


それで助けようと思って勇気出して話しかけたら、次の日の朝に狩場くんと二人きりで、公園で話をすることになった訳。


あの時は怖かったなぁ。何されるかわかんない!って思ってたもん」


 勘違いのオンパレード。ファーストインプレッションって大事なんだ。


「そしたら、ボクだけの秘密暴露したでしょ?やっぱりストーカーだ、って思い込んじゃって……」


 かがみんが思い出したように、少しだけ俯く。


「本当に……ごめんなさい……」


「そんなに何回も謝らないでよ。じゃあ……僕が言うのも変だけど、おあいこって事でいい?」


「……うん。ありがとう、狩場くん」


「優しいなぁ、かがみんは。これからもよろしくね?」


「もちろんだよ!今度は西園寺くんも誘ってランチしようね!」


 それは嫌だ。勘弁して。


「それと、ことにゃんもありがとう。一緒にランチしてくれて」


 ニコニコとかがみんの話を聞いていたことにゃんに、改めてお礼を言う。


考えてみれば、ことにゃんは別に参加する必要はないのだ。


「お礼なんて要らないのです。お二人がちゃんと仲直りしてくれたらいいなぁ、って思って声を掛けただけですから」


「言っておくけど、この仲直りランチって天音ちゃん主催だよ?」


「え、そうなの!?かがみんがことにゃんに頼んだのかと思った」


 つまり、ことにゃんが声を掛けなければ、僕とかがみんは未だに仲直り出来ていないという事だ。


 仲直りのキューピット。もはや本職では。


「それに、狩場さんとお友達の方々のお話も聞いてみたかったので。


なんだかいつも楽しそうにされていて、ちょっぴり羨ましかったんですよ?」


 ことにゃんが少しだけ首を傾げる。ロングストレートの黒髪が、シャンプーのCMかと思う程サラリと美しく揺れる。


 

 僕はいま、憧れのことにゃんと食事をしている。


 そうだ。


 僕はこんな風に、この世界で生きてみたかったんだ。



「狩場氏、目が潤んでおりますぞ?」


「わかります。わかりますぞ、狩場氏!」


「うぅ……ことにゃん様が……一緒に食事を……」


 僕の様子を察して声を掛けてくれた加藤氏と田中氏に対し、渡辺氏だけ思いっきり泣いていた。よっぽど嬉しかったのかな。


 大天使ことにゃんが心配そうに声を掛ける。


「渡辺くん、なぜ泣いて……」


「わ・た・な・べ・く・ん!!!!!


っっあああああぁぁぁぁぁ!!!!!」


 渡辺氏は大号泣しながら、そのままゆっくりと机に突っ伏した。側から見ればゲームか何かに負けたんじゃないかと思われそう。


「わ、渡辺氏!」


「お気を確かに!」


 二人が渡辺氏の所へ移動して、左右から背中をさするように落ち着かせようとした。てか周りもちょっとビックリしてるじゃん。でも嬉しいよね、名前呼ばれると。


「私、何かしてしまったでしょうか……」


「大丈夫だよ。多分、めちゃくちゃ嬉しいだけだと思う」


「?」


 小さく首を傾げることにゃん。僕も発狂しようかな。


「あはは、なんだか楽しいね!」


 かがみんは横でケラケラと笑っていた。いつものかがみんが戻ってきたみたいで安心。良かった。


 

 それからは、あっという間に楽しい時間が過ぎていった。


その場にいる全員が笑顔のまま終わりを迎え、仲直りランチは大成功に終わったのだ。


主催したことにゃんには感謝してもしきれない。これをきっかけに、何かお礼ができないだろうか。



 晴れやかな気分で席へと戻り、ふと僕は周りを見渡す。



 いま僕は、無意識にまどかを探している。


 

 授業開始まであと僅か。まどかの姿がどこにも見当たらない。


時間を守るまどかがまだ戻っていないなんて、おかしすぎる。


そのままチャイムが鳴り、明智先生が入ってきた。


「授業始めるわよー。宇月さんは保健室にいるから、この時間はお休みです」


「え、何かあったんですか!?」


 思わず声を上げる。


「体調が良くないみたい。熱はないから心配しないで」


「で、でも……」


「そんなに心配なら、保健室に行ってあげなさい。だけど、授業を抜け出すのは無しよ?」


「わ、わかりました……」


 左を見ると、輝樹はいつもの様に机に突っ伏していた。コイツ関係ないのか?それとも顔はニタニタしていて……?


 不安を抱えたまま授業は終わり、僕はすぐに保健室へと向かった。授業はまだ1限残っているので、早めに教室へ戻らないといけない。


「まどか!!!」


 保健室のドアを勢いよくガラガラと開けると、光盛先生が何事かと僕を凝視した。


「ビックリしたぁ、何かと思ったよ」


「まどかは!?まどかはどこですか!?」


「そこのベッドで寝てる。大きな声出したら起きちゃうでしょ?お・ち・つ・い・て」


「あ、ごめんなさい……」


 僕は呼吸を整え、先生の前へと座った。


「あのー……まどか、大丈夫ですか?」


「全然大したことないから安心して。なんか、疲れちゃったみたいよ?」


 そっか、朝から気張らせちゃったもんな。慣れない事させて、ごめん。


「次の授業も出れないから伝えておいてね」


「はい、わかりました……」


「そんなに不安なら、後で迎えに来てあげれば?」


「そうします……ありがとうございました……」


 僕は席を立ち、トボトボと教室へ戻っていった。


 光盛先生が大したことないって言うなら大丈夫だろう。


ただ、無理をさせてしまった罪悪感は消えない。


まどかは気を遣うなって言ってたけど、心配なものは心配なのだ。


後でゆっくり、まどかの不満を受け止めてあげよう。


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