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判断

 ゲームならいくらでも考える時間はある。しかし、リアルタイムで進むこの世界では咄嗟の判断をしなければならない。


 いつもの僕ならまどかだ。かがみんには、いつでも謝れる。


 それに、先ほど『昼休憩の時に改めて』と口約束をしている。


 迷う必要なんてない。こんな状況じゃなければ。


 僕が一番懸念していることが、『謝罪』という重要な行為を後回しにする事。


 ただでさえ謝るのが遅くなっているのに、それを先延ばしにするのは人としてどうなんだ。


 謝るなら、今。疑念が晴れつつある、今。


 放課後に回したら、輝樹が邪魔しに来てしまう。


 ただ、その輝樹がまどかと食事をするのは非常に良くない。最悪。最悪中の最悪。


 だけどそれは、確定している訳じゃない。あくまでも僕の憶測。僕が勝手に決め付けてつけているだけ。



 僕の選択は……。



「み、みんな、とりあえず一旦落ち着こう!」


 まずは、興奮さめやらぬ親衛隊のみんなを落ち着かせる。


 みんながことにゃんから軽く距離を置いた所で、僕は自身の選択を告げた。



「ことにゃん、誘ってくれてありがとう。


 みんなで、お昼ごはん食べよっか」



 ことにゃんと食事をしたいという単純な理由ではなく、やはり謝って仲直りをする事が先決だ。


それに、僕はいつも決め付けで失敗をしている。まどかが輝樹と食事になんて、行く訳ないじゃないか。


まどかに伝えたい事も、昼じゃなくて放課後の方がむしろ都合が良い。時間をそこまで気にする必要が無いからだ。



 まどかを信じろ。


 きっと、玲香様辺りと話をしに行ったのだろう。


 放課後、二人きりで、改めて話をしよう。



 僕達はいつもの渡辺氏の席へ移動した。周りの机をくっつけて、僕と親衛隊のみんなにことにゃん、かがみん。


合計6人の男女が集う、大変賑やかな場となった。


「なんだか、とっても不思議な感じがします!いつもと違う雰囲気って、楽しいですよね!」


 分かりやすく上機嫌のことにゃん。ホントに友好度0ポイントなのかな。


「そそ、それでへぁ!?わぁれわれと、こと、ことにゃんしゃまと、みにゃ、みにゃしぇしの、なかなおりランチという訳でして!」


「加藤氏加藤氏落ち着くのだ!そうそう落ち着く落ち着く!うん落ち着いたうんうん落ち着いた!あー落ち着く!うふふ落ち着く……!」


「ことにゃん様……食事……ことにゃん様……」


 3人ともバグった。動揺しすぎでしょ。とりあえず、僕が喋るしかないか。


「あー……。とりあえず、まずは集まってくれたみんなへの挨拶を……」


「固いっ。固いよー、狩場くん。校長先生じゃないんだから」


 かがみんが突っ込んでくれる。すでに許してくれている気はするが、本心はどうだろうか。


「仕方ないなぁ、ボクから挨拶ね。


えーっと、改めて。


天音さん。それから、ことにゃん……だっけ?親衛隊の皆さん!


変な騒動に巻き込んじゃって、ごめんなさいっ!」


 かがみんが勢いよく頭を下げる。今回はすぐに顔を上げて、話を続けた。


「元はと言えば、ボクが色々と勘違いしてたんだよね。


狩場くん。悪者みたいな扱いしちゃって、本当にごめん」


「いや、謝るのは僕だよ。さっきも言ったけど、僕があれこれ言って傷付けちゃったのが原因で」


「そうじゃないの!


ウソ付いてないのに、ストーカーだよ?犯罪者扱いだよ?めちゃくちゃ冤罪じゃん!


狩場くんがそのまま学校に来られなくなっても不思議じゃなかったんだから!」


「それはこっちのセリフだって!隠したい秘密ベラベラ喋るなんて人として……!」


「ふふふ……」


 ことにゃんが笑顔になる。


「こういうのって、素敵なケンカですよね。


お互いを尊重しあって、慰め合いながら、仲直りする所を見ると……なんだか……涙が……」


「ことにゃん様!俺のハンカチをお使い下され!」


「黙れ加藤氏!俺のハンカチを使って頂くに決まっておるだろう!」


「ハ、ハンカチが無い!ことにゃん様、ティッシュじゃダメでしょうか!?」


 うわー、醜いケンカ。哀れなり。


「皆さん優しいですね……。そのお気持ちだけ、頂いておきます」


 そう言うと、ことにゃんは花柄で薄いピンクのレースのハンカチを取り出し、自身の顔をポンポンと軽く叩くように涙を拭った。


「美しい……」


「神々しい……」


「素晴らしい……」


 3人は口を半開きにして、ことにゃんに見惚れている。気持ちはわかるけど、めっちゃ間抜け。


「あ、改めてみんなで、お昼ごはんを……」


「そうだね!じゃあ、いただきまーす!」


「かがみん!?こういうのって、みんなで合わせて言うもんじゃないの!?」


「いただきますっ」


「ことにゃんまで……。


ま、いっか。いただきまーす」


 こうして、僕達の仲直りランチはゆるーく始まった。親衛隊のみんなは相変わらず生気が抜けている。


 

 ……まどか。


 やっぱり、まどかと食事するべきだったかな。


 何となく罪悪感が抜けず、食事が喉を通りにくい。


 でも、やっぱり謝罪は優先するべきだ。


 僕の選択は、正しかったはずだ。


 今は、まどかを信じる他ない。


 大丈夫。仮に輝樹が言い寄って来ても、まどかならきっと、完璧に跳ね除けるはずだ。



 くすぶる気持ちを切り替え、僕は仲直りランチへと意識を向けた。


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