表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
75/141

先走り

 ──明日の事を部屋で考える前に、僕はスマビュをチェックした。



 やはり、というべきか。


 しゅり先輩の友好度が、100ポイントを超えている。



 この短期間で2人もノーマルエンド以上のフラグが立つなんて。異世界転生にありがちな『ポイント上昇能力』的なチート能力でもあるのかな。まぁいいや、なんでも。


 さて、明日は何をしようか。


 具体的な事を考えようとして、ふとした疑問が頭をよぎった。



 いや、よぎってしまった。



 僕は何故、ことにゃんに固執しているのだろうか。



 輝樹はことにゃんとの友好度が200ポイントを超えていると言っていた。


つまり、ことにゃんは嫌で輝樹と一緒にいる訳じゃなく、むしろ自ら望んで輝樹と一緒にいる訳だ。


 ことにゃんの幸せを考えるのであれば、今は二人の仲を邪魔しない方が良いのではないだろうか。


このまま距離を置いて、僕と輝樹の抗争も終わって、みんながこの世界で平和に楽しく過ごしていく。



 なんだ、簡単なことじゃないか。



 そうだ。ことにゃんはことにゃんで楽しく暮らしているのだ。


ストーカーみたいな存在がいなくなれば、ことにゃん自身の不安要素も無くなるだろう。


 そうと決まれば明日、みんなに伝えなければならない。


 ことにゃんは諦めて、普通の学校生活を送ることに決めた、と。


 僕は電気を消してベッドへ潜り込み、早々に目を瞑った。


そして、新たに始まる学校生活を夢見て、僕は深い眠りに就いた。



 ──とても清々しい朝だ。いつもより目覚めが良く、胸の辺りがスッキリしているのが良くわかる。


朝食のパンとコーヒーを頂き、僕は暖かい春の匂いが漂う外へと繰り出した。


最近は雨が降ることはなく、空にはいつも青空が広がっている。我が学校へ向かう生徒達に混じり、僕は景色を楽しみながら登校していった。


 教室へ着くと、すでに親衛隊のみんなとまどかが楽しそうに会話をしていた。


「おはよう、みんな」


「狩場氏、おはよう!今日は普段よりもスッキリした顔をしているな」


「良いことでもあったのか?」


「いつもより晴れやかだ」


 親衛隊のみんなが、僕の顔をまじまじと見る。めちゃくちゃ見てくる。……ちょっと見すぎじゃない?なんか恥ずかしい。


「狩場先輩、おはよっ!」


「おぉっと!」


 例によって、まどかが僕に横から抱き付いた。


「おはよう、まどか」


「なんか今日、爽やかだね!どうしたの?」


 笑顔のまどかに、僕は答えた。


「僕の中で決めたことがあってね」


「へー、どんな!?」


 朝からテンション高いなぁ。


「あのね、実は僕……」


 

 言い掛けて突然、教室の後ろの扉が勢いよくガラガラっと開いた。



「狩場幸太郎はいらっしゃいますの!?」



 突然の大声にビックリして後ろを振り向くと、物凄い形相の玲香様と目があった。


「そこにいましたわね、ストーカー。話があるからいらっしゃい!」


「先輩に何か用?」


 僕が反応する前に、まどかは僕から離れて玲香様に歩み寄っていった。


「なんですの?部外者は引っ込んでいて下さるかしら」


「部外者じゃないし。朝からうるさいんだけど」


「用があるのは、そこのストーカーです。天音さんだけでなく水瀬さんにまで手を出すなんて、本当に最低な人ですわ!」


 教室がざわつく。当のかがみんはまだ登校していない。


「いきなり失礼なこと言わないでよ。そんな嘘、誰から聞いたの?」


「嘘じゃありませんことよ。ご本人から直接聞きましたから」


「え!?かがみんが、そんなことを……!?」


 二人の会話を遮り、僕は思わず声を上げてしまった。


 ちょっと待ってくれ。


 かがみんのママには本物のストーカーだと思われたかもしれない。


 だけど、かがみんが本気で僕をストーカー扱いするなんて、思ってもいなかった。


 何度も繰り返すが、かがみんは本来であれば人を偏見で見るようなキャラクターではない。


不細工な人間にも、性格が悪い人間にも、誰からも嫌われている人間にも、かがみんは唯一の味方としてその人間へ寄り添ってくれる。いわば、ヒーローの様な少女だ。


「あなたには直接、謝罪をしていただきます。水瀬さんは怖がってこの教室に入ることが出来ず、私の教室で待機しておりますの。


もし来ないようであれば、この教室で強制的に謝罪してもらいます。その方が都合が良いかしら?」


「……わかりました。この教室で、謝罪します」


「あら、意外と勇気のある方ですのね。自分の醜態をクラス中に晒すだけでなく、担任の教師にもこの事実を知られる危険がありますのよ?


私はせめてもの優しさで提案したのに、バカな男ですわ。


今から呼びに行きますから、お逃げにならぬよう」


 そう言うと玲香様は、一旦教室の外へと出て行った。


「せんぱあぁい!!」


 まどかが慌てて僕の所へ駆け寄ってくる。


「もしかしてまた勝手に家まで行っちゃったんですか!?」


「その……うん……」


「もお!すぐ先走るんだから!」


「ごめんなさい……」


「全く、しょうがない先輩だなぁ……」


 まどかが呆れたように片手で頭を抱えた。


「我々も出来るだけ擁護するが、どこまで弁明できるか……」


「押されると萎縮してしまうのだ……」


「狩場氏をちゃんと擁護できるか……」


「本当に申し訳ない……。僕の問題だから、自分でなんとかするよ」


「ホントに一人で何とかできると思ってる?」


「だって、何とかするしか……」


「先輩。私達を頼って下さい。先輩が虐められてる所を黙って見てるだけって、おかしくない?」


「まどか……」


 まどかが僕の為に叱ってくれている。


 僕みたいな何も考えない人間を、ちゃんと守ろうとしてくれている。


「なんでそんなに協力してくれるの……?」


「当たり前でしょ」


 苛ついた表情のまどかが、僕を真っ直ぐ見た。



「だって私、狩場くんのこと好きだもん」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ