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協力者

 改めてスマビュを確認する。


イベント進行状況の欄は『午前休憩・西園寺輝樹 終了』となっていた。


ハートは3つ残っている。かがみんをイベント扱いと捉え、まどかと親衛隊のみんなとの会話を通常会話と考えると辻褄が合う。


 そうだ。忘れないうちに、ビックリマークをオンにしておこう。


 設定の欄にある『エクスクラメーション表示』という項目をオンにする。これでビックリマークが出るはずだ。ようやくオンにできた。


 それにしても、思考がまとまらない。

 

 教室へ戻りながら、頭の中をゆっくりと整理させていく。

 

結局、輝樹は僕にライバル宣言をしたかっただけらしい。


てっきり『俺の女につきまとうな』とか『もっと地獄を味わえ』とか言われると思ってた。


それに輝樹は全く苛立ってなかったし、むしろ楽しんでいるように見えた。


だけど、あのニタついた笑顔だけは、思い出したくない。


確かに僕がアシストしている感は否めないし、輝樹が僕をバカにしたい気持ちも分からなくもない。


それよりも。


なんなんだ、あのゲスい告白は。思い出すだけで腹が立ってくる。


あいつは人間じゃない。


悪魔だ。人間の皮を被った、化け物だ。


早くことにゃんを助けなければ。次の昼休憩にみんなで作戦を立てよう。


 そんな事を考えていたら、教室に入るのが授業開始ギリギリになってしまった。


席へ着くと後ろからポンポンと肩を叩かれ、加藤氏が僕の耳に手を当てて呟くように言った。


「狩場氏、ケガはないか?」


 僕も小さな声で答える。


「うん、大丈夫。後でまた話すね」


 なるべく笑顔で伝えたつもりだが、隣に悪魔がいるせいで、無意識に眉間にシワが寄っていたんじゃないかと思う。


 ──授業中は特に何もなく、あっという間に昼休憩になった。


 いつもの様に渡辺氏の席に集まる。今日は最初からまどかもいるので、5つの席をくっつけた大所帯だ。


側から見れば姫を囲うオタクグループ。しかし、親衛隊メンバーの顔が整っているので、青春を謳歌するリア充グループにも見えなくはない。


だがその実態は、クラスのマドンナを護ると勝手に決めた上に本人の目の前で守護宣言をしたヤバめの集団と


異世界人の恋愛を成就させようという謎の目標を持っている変わり者の女子生徒と


全く無双できない異世界人本人の集まりである。


「早速なんだけど、1時間目が終わってすぐに──」


 それぞれが弁当を広げた所で、僕は話を始めた。


モグモグと弁当を頬張りながら、みんな真剣な眼差しで聞いている。


あのゲスい報告もした方がいいかなと思ったが、過去に輝樹とベストエンディングを迎えたであろう本人がいるので、軽く触れるだけにしておいた。


その代わり、輝樹がこの世界をループしている事を伝えておいた。ざまぁみろ。


「──じゃあ西園寺くんは、私の過去を全部知ってる……ってこと?」


 まどかが不服そうに言う。


「うん。何か変な事言われたりされたりしてない?」


「1週間前くらいに挨拶されたよ。でも、先輩と話した後だったから、それ以来なんとなく避けてたんだよね」


「そっか。小さな事でもいいから、何かあったら教えてね。どんな手を使ってくるかわからないから……」


「私、あの人嫌いだから大丈夫。あんまり近づかないようにするね。ありがと、先輩!」


 まどかの笑顔を見ると安心する。


 この笑顔が輝樹によって壊されると想像するだけで恐ろしい。


 ことにゃんを守るのはもちろん、まどかも輝樹からしっかり守らないといけないな。


「そう言えば我々はあの日以来、西園寺との絡みが一切無いな」


「考えてみれば彼はクラスではあまり目立たない存在だ」


「言われてみるとクラスの男子生徒と話している所をあまり見ないな」


 僕達の話を聞いていた親衛隊のみんなが、思い出したように不思議そうな顔をして発言をする。


「輝樹って主人公のプライド高いからね。モブキャラ的な人と話さないんだよ」


「なんと、我々をモブキャラ扱いしているというのか!?」


「我々を侮辱するとは何たる不届き者!」


「許すまじ西園寺輝樹!」


 3人が一気にヒートアップする。勢いで『モブキャラ』って僕が勝手に言っちゃったけど、輝樹からすれば間違ってないだろうし、まぁいいや。


「狩場氏!奴に対抗する為にはさらなる味方が必要だと思われる!他に心当たりはないか!?」


 加藤氏が目の色を変えて訴えかける。勢いがすげぇ。


「さらなる味方って言われても……」


 いきなり言われるとパッと思い付かない。協力してくれる人なんて他に……。


「あっ!」


「おおっ、何か心当たりが!?」


「うん。先輩で知ってる人がいるから、その人にお願いすれば協力してくれるかも」


「先輩の先輩?」


「ほら、スマビュに書いてあった桜小路朱里って人。3年生なんだけど、きっと力になってくれるよ」


 まどかは『おぉ!』という様な表情で手をパンと叩いた。


「先輩、ナイスアイディア!今からみんなで話しに行こっ!」


「い、いま!?」


「善は急げって言うでしょ?ほら、早くお弁当食べないと!」


 そう言うと、まどかは自分の弁当を手に持ち、一心不乱に箸でガツガツと食べ始めた。


「そうと決まれば、我々も早く食べた方が良いな」


「待たれよ、加藤氏。あまり大人数で行くとビックリされますぞ」


「輝樹の動きを警戒する為にも、狩場氏と宇月氏の二人で行くのがよろしいかと」


「一理あるな。狩場氏、どう思う?」


「うーん……。じゃあ、僕とまどかで行ってくるよ」


 勢いで突き進むまどかと冷静な親衛隊。なかなか良いコンビだ。現段階でも十分心強い。


輝樹がしゅり先輩を頼らないと言っているから、正直巻き込まなくても構わない。


しかし、輝樹が今後どんな策を打ってくるかを考えると、しゅり先輩を危険な目に遭わせない為にも、早めに協力してもらった方が良いと思うのだ。


「先輩、もう行ける?」


「あ、う、うん。大丈夫」


 食べ終わるの早いな。元気でよろしい。


「じゃあ行こっか!案内よろしくね!」


「うん。じゃあ、行ってくるね」


「頼んだぞ、狩場氏、宇月氏!」


 例の如く僕の腕にしがみつくまどかと一緒に、しゅり先輩のいる教室へと向かう。


 しゅり先輩にまずは、僕が異世界人だと伝えなくてはいけない。信じてくれるかなぁ……。



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