友好度
「あっ……」
まどかも見てたんだ。
「やっちゃいましたねー、先輩?」
まどかが後ろに手を組み、ニヤニヤと僕の顔を下から覗き込む。
「泣いた?泣いちゃった?」
「……ダメだよ。僕に近づいちゃ」
「なに言ってるの先輩!ほら、みんなの邪魔になるから行きますよー?」
まどかは僕の腕にしがみつき、そのまま強制的に外まで連れ出された。側から見たら彼氏を慰める彼女である。
「……ねぇ」
「あ、先輩やっと喋った!」
「なんで、僕に優しくしてくれるの……?」
「だって先輩、不器用すぎるんだもん」
「へ……?」
不器用?どういうこと?
「天音ちゃんの家にいきなり行くなんてダメだよー。連絡してから行かなきゃ」
「いや、その……」
途中から見てたのかな。僕はことにゃんの住所を知らないのに、勝手に家まで行ったんだよ。
「どうせ先輩の事だから、ゲームの知識で天音ちゃんの家に行っちゃったんでしょ?」
「え!?」
「前に、誰がどこに住んでるかって話したじゃん。覚えてないの?」
「そんな話……」
……あれ?してる?いつ?どこで?
ゲームの話は確実に伝えた。でもその後、誰がどこに住んでるかなんて……。
「……あ。先週の火曜日」
確かに話をした。
でも、僕じゃない。
無意識の僕が、話をしている。
「思い出した?
あの時は、いきなり私の家を当てるからビックリしたよ。
しかも、なんで合ってるのー?とか言って……」
そうだ。無意識の僕が特定の人に対して色々と知識があるから、パニックになったんだ。
それで怖くなって、メインの子とは会話しなくなって……。
「ずっと聞こうと思ってたんだよね。あの時の先輩、ゲームの事わからないって言ってたから」
「そっか、そうだったんだ。えっと、ちゃんと理由があってね……」
まどかなら、全部話しても大丈夫だ。
正門前で一度立ち止まり、無意識の僕が存在する事やスマビュの話を、なるべく分かりやすく説明した。
その間、まどかは真剣に僕の話を聞いてくれた。
「……つまり、明日から3日間は違う先輩になるってこと?」
「そういう事」
「それで、スマビュとかいう機械で、私達がどれだけ仲がいいかわかるんだ」
「うん……」
スマビュは言う必要無かったかな。でも、僕を信用してる貴重な友達を、これ以上失いたくない。
「ふーん」
まどかがイタズラな笑みを浮かべる。やめて。今はネガティブな事しか浮かばない。
「スマビュ、見たいなぁ」
「へ!?」
「先輩と私がどのくらい仲良いか、み・た・い・なぁ〜!」
「ちょ、マジで!?」
「そうと決まれば職員室だ!レッツゴー!」
「うわわわ!」
まどかの左手が僕の右手を思いっきり引っ張る。そして指が時折おっぱいに触れそうになる。もっとおっぱい大きかったらちゃんと触われ……じゃなくて!
「転んじゃう!落ち着いて!」
「急がないと学校閉まっちゃうから早く!」
「部活やってるからすぐに閉まらないよー!」
ドタバタと職員室へ到着し、何故かまどかが扉をガラガラと開けた。
「明智せんせー!」
「あら?宇月さん?」
「狩場くん連れて来ました!」
まどかが右手で敬礼する。当の本人は足ガクガクである。
「はぁ、はぁ……。あの、け、携帯を……」
「はいはい。もう学校に持ってきちゃダメよ?」
すでに明智先生はスマビュを手にしており、僕は息を切らしながら左手で受け取った。
「ありがとうござ」
「明智せんせー、ありがとうございます!じゃ、また明日!」
謝罪をする暇もなく、まどかは僕の右手をそのまま引っ張って外へと連れ出した。
「宇月さん、廊下は走らないのよー!」
先生の声を無視して、僕達は走りながら正門前へ辿り着いた。
「ぜぇ、ぜぇ……。あのさ、走る必要、なくない……?」
「早く見たいの!はい、貸してくーださいっ♪」
まどかが右手を差し出す。
「わかったよ……」
左手に持っていたスマビュをそのまま、まどかへ渡す。
家で携帯を使っているのか、まどかは手際良くスマビュの電源を付けてスクロールしていった。
「おぉ、ほんとだ!すごー!」
まどかが歓喜の声を上げる。
「ハート1つしかないよ?
えーっと……放課後、宇月まどか進行中……?へー、そうなんだ。
……ふーん、私の友好度25ポイントだって。これって多いの?少ないの?」
「あの、ちょっと、落ち着かせて……」
「ねぇ、25ポイントって多いの?少ないの?」
ニヤニヤしながら僕に顔を近づける。ひゃあ。
「えーっと……。こ、この時期にしては多いよ」
「ホント!?やったぁー!」
まどかが笑顔でガッツポーズをする。
「どこまでポイント上げればいいの!?」
「最大値は300ポイントだけど……」
「じゃあ私が一番最初に300ポイントになる!」
「いや、勝負じゃないから……」
「ねぇ、どうやったら早く300ポイントになる!?」
「うーん……」
どうしよう。本人から直接言われると困るな。
「いっぱい仲良くなれば、どんどんポイント上がっていくけど……」
「へぇー?」
ニヤニヤしっぱなしじゃん。いきなり豹変して殴られたらヤダな。
「って事はですよ?」
まどかはそっと、僕に抱きついた。
「こうすれば、もっと上がりますか……?」




