無双手前
「そんな訳だから狩場氏!放課後に約束を取り付けたから忘れずに頼みますぞ!」
「ありがとう……!本当にありがとう……!」
感謝してもしきれない。逆に彼らにお礼をしなければいけないぐらいだ。
「おや、まだ昼食を……か、狩場氏!」
「これは……愛妻弁当!?」
「なんと!狩場氏には彼女がいたというのか!?」
「違う違う違う!これママが作ったの!」
まって、めっちゃ恥ずかしい。
「狩場氏の母上……だと……!?」
「美しい……食べてみたい……!」
「羨ましすぎて嫉妬しそうだ……!」
そんなキラキラした目をされても困る。てか食べにくい。
「えっと……タコさんウィンナーいる?」
「「「ほしい!」」」
返事早っ。あと息ぴったり。
「じゃあ……1本ずつどうぞ」
袋に入っていた爪楊枝を3人に1本ずつ渡す。各々がタコさんウィンナーに爪楊枝を刺し、口の中へと頬張った。
「う、旨い!旨すぎる!」
「どういう事だ!?ただのウィンナーではないというのか!?」
「魔法だ!狩場氏の母上は魔法使いなのだ!」
無駄に無双状態な気がする。
嬉しいけどさ。嬉しいんだけどさ。
なんか、違くない?
それから僕は3人と談笑しつつ、羨望の眼差しで弁当を見つめられながら昼食を済ませた。
間も無く5時限目が始まる時間になり、3人はそれぞれ席へ戻った。すると、教室の外からことにゃんも席へ戻ってきた。
「天音さん!」
すかさず、僕は声を掛ける。
「あ、狩場さん……。お身体は大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫!それよりも、この前のことなんだけど……」
「ふふ、狩場さんのお友達から聞きました」
ことにゃんがニッコリと笑う。あぁ、大天使。
「こんな私のことを、一生懸命考えてくれていたんですね。
ことにゃん、なんて呼ばれてて……。可愛いお名前です。照れちゃいます」
「ほ、本人から言われると、僕の方が照れちゃうかも……」
「私は気に入ってますよ?狩場さんが考えてくれたんですよね。ありがとうございます」
ことにゃことここことにゃにゃことにゃ。
「この前のこと、私は何にも気にしていないのです。
でも、狩場さんのお気持ちが収まるなら、お家に帰りながら色々とお話を聞かせて下さい」
「そ、それって、一緒に帰ってくれるってこと……?」
「はい、もちろんです」
もちろんだって、もちろん!ありがとう、ことにゃん!
「うひゃあ!」
あぁ、違う心の声が!
「そんなに喜んで頂けるなんて……。お話、楽しみにしてますよ?」
そう言うと、ことにゃんは左目で僕にウィンクした。
後ろからポンポンと肩を叩かれる。
「狩場氏、良かったですな」
加藤氏が囁くように呟いた。その声のトーンで、祝福している事が分かった。
良い意味で頭がパニックになっていて、何を考えればいいかわからない。
ただ言えることは、みんなのお陰で僕が無双状態の1歩手前まで来ている、という事だ。
みんなのお陰で、大凶が大吉になった。
大凶が出たからと言って、絶望する事なんて無かったんだ。
授業は滞りなく進み、何事も無く放課後を迎えた。ホームルームが終わってすぐ、後ろから加藤氏が僕に声をかけた。
「狩場氏。我々隊員は邪魔にならないよう、先に帰宅する。明日の報告、楽しみにしていますぞ」
「うん!本当にありがとう、みんなのお陰だよ。今度何かお礼を……」
「お礼なら、狩場氏が隊長で居続ける事だけで充分だ。
我々の事など気にせず、ことにゃん様との帰路を楽しんでくれ」
なんていい人なんだ。
「ありがとう……。田中氏と渡辺氏にもよろしくね」
涙を堪えながら、僕は加藤氏の後ろ姿を見送った。
「狩場さん、帰る準備はできましたか?」
振り向くと、ことにゃんがカバンを持って立っていた。もちろん準備は……。
「あ、あぁっ、ああっ!」
「へ?ど、どうしましたか?」
「スマビュだぁ!スマビュ取りに行かなきゃ!」
「スマビュ……?」
「ごめん、天音さん!職員室に行かないといけないから、正門前で待ってて!すぐ行くから!」
僕はカバンを持ち、ダッシュで職員室へ向かった。
しかし、階段を降りようとした所で、思いもよらない声が聞こえた。
「狩場さん、ちょっと宜しくて!?」
「うおぉっと!?」
階段を降りる前で良かった。危うくコケる所だった。
「き、霧島さん!?どしたの急に!?」
「貴方、何か言うことがあるんじゃないかしら?」
「言うこと……?」
急いでいたので思考回路が停止している。しかしすぐに、言うべき言葉が見つかった。
そうだ、かがみんと……。
「貴方、私に嘘を付きましたわね?」




