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「狩場くん……だっけ?ああいう子、苦手でしょ」


「世界で一番苦手です」


「やっぱりなぁ」


 楓先生がケタケタ笑う。絶対バカにしてるじゃん。


「美波とまともに会話できたら、他の女の子ともスムーズに会話できるようになると思うんだ」


「いや、僕、女の子と会話できるから大丈夫です」


 話し相手ならしゅり先輩やまどかで十分だ。好んでヤンキーと話す必要なんてない。


「ほんとにー?」


「はい。なので、気にしないでください」


「狩場くんがそう言うならいいけど……。もし悩んだら、またおいで」


「はい。でも、五十嵐さんと話すのはもう結構なんで」


「慣れれば良い子なんだけどなぁ」


「真剣に考えてくれてありがとうございました。何かあれば、また来ます」


 挨拶もそこそこに、僕は保健室を後にした。


自分でもビックリしたけど、珍しくイライラしてしまった気がする。


無意識にキツい言葉で楓先生を傷つけたりしていないだろうか。


胸騒ぎが収まらず、僕は保健室へと一旦戻った。


「あれ?どうした?」


 保健室の扉を開けると、楓先生は机に弁当を広げていた。


「あの……。さっき、僕がキツい言葉を言ってしまってないか、心配になりまして……」


「へ?」


「その……。なんか、怒った感じになっちゃってたら嫌だなぁって……」


「なにそれー」


 楓先生がケタケタ笑う。よく笑う人だなぁ。


「そんな事で戻ってきたの?」


「はい……謝ろうと思いまして……」


「そうだなぁ……。狩場くんが怒ってたと思うなら、怒ってたんじゃない?」


「えっ……?」


「自分の感情に素直になる。これ、大事よ?」


「わ、わかりました……」


「あたしも変に言い過ぎたかな。ごめんね?」


「いやいや!先生は何も悪くないです!僕が勝手にイライラしてただけですから!」


「やっぱりイライラしてたんだ」


「あ、いや……」


「本当にごめんね。また来てくれる?」


「も、もちろん!絶対に来ます!」


「ありがと。あと、できれば……美波の事もよろしく」


「へ?なんでですか?」


「何となくだけど、狩場くんと合うと思って」


 僕が?あのヤンキーと?


「いや、ないない!絶対にない!」


 あ、心の声が……。


「うわぁ!ごめんなさいタメ口じゃなくて独り言なんですごめんなさい!」


「アッハハハ……!いいよー、その感じ!」


 楓先生って笑い上戸なのかな。ゲームではこんなケタケタ笑う人じゃ無かったんだけど。


「ほら、昼休み終わっちゃうから早く戻りな?」


「あ、はい!本当にありがとうございました!」


「はーい、がんばって!」


 楓先生の笑顔に見送られ、僕は教室へ向かった。昼休みが終わる前にママのお弁当食べないと。ママ泣いちゃう。


 無事に教室へ着いて自席へと座り、まずはカバンからお弁当を取り出す。


ピンク色のお弁当袋を開けると、楕円形でシルバーの2段構造型お弁当箱が出現した。袋から取り出し、上下を外して左右に並べる。


まず上部分のフタを開けると、ご飯の上にスクランブルエッグが全面に敷き詰められており、シャケフレークで『LOVE』と大きく書かれていた。愛がでかい。


こうなると、下部分はおかずだろうか。フタを開けると、全面に敷かれたキャベツの上に、顔の付いたタコさんウィンナーが寝そべる様に数本配置されていて、隙間の部分にハーフカットのプチトマトが散りばめられていた。かわいすぎかよ。


 お弁当に見惚れつつ、ふと思う。


 何故、楓先生は僕とヤンキーが仲良くなれると思ったのだろうか。


 五十嵐さんは明らかに違う星の住人である。つまり宇宙人。そもそも会話ができないのだ。


どう考えても仲良くなれないような……。



「「「狩場氏ー!」」」


「うおぁ!?」



 突然、後ろから大声が聞こえる。振り向くと、ことにゃん親衛隊の3人がこちらへ走ってきていた。


加藤氏が僕の机にバンと両手を付く。


「狩場氏、体調は大丈夫か?」


 心配そうな顔で僕を見つめる。なんか大袈裟じゃない?


「放課後、みんなでお見舞いに行こうって話をしていたんだ!」


「でも、家がわからなくてとても困っていたんだ!」


 田中氏と渡辺氏も同じような顔で僕を見る。ようやく少し区別がついてきた。油断すると間違えそうだな。


「ごめんね、心配かけて。元気になったから平気だよ」


「おぉ、そうか!」


「何事も無くて良かった!」


「隊長の復活だ!」


 そんなに心配してたんだ。歓喜の声を上げる3人を見ると、なんだかほっこりした気分になる。ありがとう。


「狩場隊長。ことにゃん様の件で、ご報告がある」


「へ?」


 なんだろう。縁切られたのかな。


「先程の休憩時間、ことにゃん様に三人で先日の詫びをしたのだ」


「え!?」


「安心して下され。大天使ことにゃん様は快く許して下さった!」


「狩場氏の想いを純粋に伝えた結果、誤解をしていたとおっしゃっておりました!」


「さらに、狩場隊長と改めて話をしたいとの申し出がありました!」


「マジで!?うそでしょ!?」


 この三人ってモブキャラじゃん。なんでこんな力持ってんの。てか僕の想いってどんな風に伝えたんだ。


「先日の我々の不甲斐なさを心から悔いていてな。狩場氏に何かしてあげられないかと3人で話し合ったのだ」


「我々は狩場氏に勇気をもらった!恩を返すのは当然のこと!」


「ことにゃん様を全力でお護りできるのは狩場氏のみ!仲良くなってもらわないと我々は悲しい!」


「みんな……」


 

 この世界のことを、何か誤解していたのかもしれない。


 前に占いばあさんが言っていた、『メイン』も『モブ』も関係ない、という言葉。


 誰もが、ミラクルプリンセスの世界で、生きている。


 決してゲームをプレイしているのではない。


 いま僕は、この世界で、生きている。


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