三度
「うわぁっ!?」
思わず両腕で目を防ぐ。ついで地面へ尻もちを付いて倒れてしまった。
腕の隙間から少し覗くと、白い光は人型に輝いており、
ベンチの両端を掴むように両手を広げ、足を組んでどっしりと座っていた。
とりあえず直視できそうだ。頭の中で何が起きたのか必死で考えようとすると、突然声が聞こえた。
「私はブライトマン。心配になって出てきた者」
「……へ?」
いきなりなんだ?
「狩場幸太郎。あまりにも君がボロボロになっているから慰めにやってきたのだ。喜びたまえ!」
「……あの、なんなんでしょ」
「安心しろ。この瞬間に動いているのは、私と君だけだ」
「……あのー、これなんですか?」
「だ・か・ら!私がハートブレイクしちゃうから心配で出てきたの!」
「えっと……」
ダメだ、状況が全く飲み込めない。
「これって……幻ですか?」
「幻じゃない。現実だ……って何度言えば気が済むのだ!」
「ごめんなさい、本当にどういう事ですか……?」
「そうか、記憶が無くなっているのだな。今度から自動で蘇るようにした方が早いか……」
「あのー……なんの話で……?」
「あぁ、すまない。いま記憶を少しだけ戻すからな」
そう言うと、ブライトマンの胸元から白い閃光が僕に放たれた。特に痛みは無い。
その瞬間、ブライトマンと出会った記憶が、徐々に蘇ってきた。
「……あ、あぁっ、ああっ!」
「どうだ、思い出したか」
「この前、言いたい放題言って逃げたでしょ!?」
「お?思い出してくれたな?いいぞぉ、その調子だ!」
ブライトマンが右手の親指をグッと立てる。僕、怒ってるんだけど。なんなの、このノリ。
「この1週間、私は陰ながら君を見守ってきた。
だが、どういう訳か一向に無双しようとしない。どういう事なんだ」
「それは僕が聞きたいよ!」
僕はさらに怒りを込めて立ち上がった。
「だいたい、この世界に連れてきたのはアンタでしょ!?
責任取ってよ!特別な力で何とかできるんじゃないの!?」
「落ち着け、狩場幸太郎」
「見守ってるだけってなんだよ!僕はこんな展開望んでないよ!」
「だ・か・ら!1回落ち着けって!」
フー、フー、と僕は息を荒げる。本当にふざけんな。
「よいか、狩場幸太郎。私は直接的な手助けは出来ないのだよ。この世界の問題は、自分でなんとかするしかないのだ」
「そんな勝手な……!」
「だが、君が有利になるように、私は微力ながらも1度だけ力を使った。これは超特別待遇なのだぞ?」
「そんな嘘言ったって通用しないよ!」
「それならば、登校初日のことを思い出してみたまえ」
「は……?」
いきなり思い出せ、と言われても差し当たって気になる事は無かったように思う。
「君が席に着いて、違和感を覚えなかったか?」
「違和感……?」
もしかしてスマビュの事だろうか。でも占いの館でブレザーの内ポケットから出てきたし、そもそも初日の時点で気付かなかった。
「ならば質問を変えよう。君の隣の席は誰だ?」
「輝樹とことにゃんだけど……」
「狩場幸太郎。君は偶然、二人に挟まれたと思っているのか?」
「確かに偶然にしちゃ出来すぎだけど、だからってアンタの力って理由にはならないでしょ。証拠無いじゃん」
「では、前と後ろの席は誰だ」
「それは小川さんと加藤くん……」
あ。
「そうだ。『おがわ』と『かとう』だ。
君は『かりば』だろう?
なぜ間に挟まっているのだ」
「た、確かに……」
「わかるな?
この、私が!こ・の・わ・た・し・が!
天音という女と、楽しく会話ができるように!
わ・ざ・わ・ざ!
席順を変えてやったのだ!
どうだ、素晴らしいだろう!」
なんかドヤ顔してる気がする。ほんと苦手だなぁ、この人。
「そのお陰で、この世界に来てから天音と『唯一まともに会話ができた』時間を作ることが出来た。違うか?」
「うっ……そ、それは……」
思い出がフラッシュバックされる。ぐあ、あの笑顔を思い出すと、胸が痛い……。
「そんな顔をするな狩場幸太郎。過ぎた事は仕方ないだろう」
「だ、だけど……」
「よいか、狩場幸太郎。チャンスは意外と近くに転がっている物なのだ。
君は見事にそのチャンスを掴む事ができた。素晴らしいことではないか」
「そうなの……?」
不覚にも、ちょっと嬉しい。
「君にはチャンスを掴む力がある。そんな君に、もっと有り難いアドバイスを送ろう」
「どうせまた説教でしょ?そういうのいいから」
「そう言うな狩場幸太郎。今まで見ていたが、どうもゲームに依存し過ぎている気がしてならんのだよ」
「……ん?どういう意味?」
「君は、天音以外の女をどう思っているのだ」
「どう、って……。普通に攻略できるキャラだと思ってるけど」
「そこなんだよなぁ」
ブライトマンが右手で顔を抑える仕草をする。なんでこんな光ってる人に呆れられなきゃいけないの?
「占い婆さんも言っていただろう。この世界の者は『キャラクター』ではなく『人間』なのだ。
ゲームの知識を活かすのは大いに結構だが、全てゲーム通りに進める必要は無いのだぞ?
もっと自由に!思いのままに!楽しく!
この世界を過ごしていけば、それで良いのだ。さずれば、君は真の力を発揮できるだろう」
「わかったから、もういい?」
「悪いが、今回の滞在時間はちょっと長いのだ。もう1つ、大事なアドバイスをしよう」
「もう説教は……」
「本日。君はもう1度、絶望を味わうことになる」




