選択
夕飯はボロネーゼのパスタとサラダだった。こちらの世界に来て和食は寿司とトンカツしか食べていない。そろそろ納豆や卵かけご飯が食べたい。
その後、リビングでゆったりした時間を過ごして自室へ。ベッドの上で明日からの計画を考える。
さて、今日でメインキャラ全員の出逢いイベントをこなした事になる。別にこなす必要は無かったが、出逢うに越した事はない。
ことにゃん攻略が絶望的になっている以上、外堀から埋める必要があるのだ。
他のキャラを利用してことにゃんへ近づければ、全ての出逢いは無駄ではなくなる。今後はことにゃん攻略に向けて全身全霊を注ぐのみ。
ただ、明日の朝一でかがみんに玲香様を紹介しなければならない。約束は守るのだ。
ゲーム内では、かがみんと玲香様が仲良くなる似たようなイベントがある。ハートを消費するので恐らく、ハートが1つ減ってしまうだろう。
占いの館も忘れずに行ってマイナス1。ハート3つをアイテム無しで1日乗り切るのは、少し厳しい。
現在の所持金は1100円。1つハートを回復できる『回復薬(小)』が100円で買えるので、1つはあった方がいいかもしれない。
幸いコンビニがあるから、学校へ行く前に買っておこう。
あと忘れちゃいけないのが、スマートビューことスマビュの回収。
学校に着いたらすぐに職員室へ行って返してもらわねば。
そしてビックリマークを表示させて、イベント攻略の目安がわかるようにその場で設定するのだ。
……よし。何となくだけど大丈夫そう。
あとは輝樹の妨害が無いことを祈るだけ。あいつなら全員同時攻略とかやりかねない。
大丈夫。自分を信じろ。
──翌朝、天気はすっかり回復して清々しい朝を迎えた。スズメがチュンチュン鳴いている。
朝食のトーストを食べ終え、お弁当を持って学校へ向かう。
食堂イベントの為に取っておいたが、正攻法でことにゃんを落とせそうに無いので、今日から持参である。
そういえば、無意識の僕は昼食をどうしていたのだろう。お金が減ってなかったからお弁当だったのだろうか。
「幸ちゃん、今日はお弁当持っていってくれるのね」
「へ?」
「先週の金曜日、忘れて出て行ったでしょ?お腹ペコペコなんじゃないかと思って心配してたんだから」
なるほど、だからステーキだったのか。
「ごめんね。ママのお弁当おいしいから、これからは毎日持って行くよ」
「嬉しい!これからはもっと気合入っちゃうなぁ♡」
「じゃあ、行ってくるね」
「はーい、いってらっしゃい♡」
今日も上機嫌だな。ストレスフリーで楽しそう。
さて、まずはコンビニからだ。玄関を開けて徒歩15秒。左隣のコンビニへ入る。
栄養ドリンクが売っているコーナーに『回復薬』と書かれた小瓶が100円で売られていた。わかりやすっ。
難なく『回復薬(小)』を購入し、所持金はピッタリ千円。うん、いい感じ。
コンビニを出て道路を渡る。多分、この辺りでかがみんが……。
「狩場くん、おっはよー!」
「うおっ!?」
急に左腕を思っ切り押された僕は、そのまま少しよろけてしまった。
「あれ?ちょっと強すぎた?」
「か、かがみんおはよう……」
「足腰鍛えないと骨折れちゃうよー?」
「大袈裟だなぁ」
「あ!狩場くんスッキリした表情になってる!安心したよー」
ニヤニヤしてただけなんだけど、スッキリしてたのか。こういうの慣れてないから嬉しいんだろうな、僕。
「そうだ!隣のクラスの霧島さんって知ってる?」
「もっちろん!ミルクティーみたいな髪色の子でしょ?かわいいよねー!
もしかして……惚れたの?」
「ほ!ほほ、惚れたわけじゃなくて」
「顔真っ赤じゃーん!好きなの?好きなの?」
「いや、そうじゃなくてね、その……」
「ん?」
「き、霧島さんが、友達になりたいって言ってたから……」
「え?もう仲良しだよ?」
「そうなんだけど、その……。ちゃんと、友達になってあげてほしいんだ」
「ちゃんと……?」
「うん。ダメ?」
さて、かがみんが玲香様と仲良くなるこのイベント。
実はゲームではかなり厄介なのだ。選択肢を間違えれば大惨事になってしまうので、ここからは慎重にならなければいけない。
「ごめん、もう仲良しなんだけど?」
ふー、落ち着け。
「霧島さん、こっちに引っ越してきたばかりなんだって。
それで、まだ友達がいないんだよ」
「霧島さんが、そう言ってたの……?」
「うん」
ここは、これで良い。あぁ、緊張するなぁ……。
「それじゃあ……」
かがみんが下を向く。
「ボクのこと、友達だと思ってなかったんだ……」
さぁ、ここで選択肢の時間だ。
実際のゲームの選択肢は3つ。シチュエーションは違えどセリフは一緒だから、かがみんと玲香様のイベントで間違いない。
実際の選択肢は以下の通り。
『水瀬さんは明るい性格だから友達が多いと思って遠慮してるんだよ』
『仲良しって言わないで友達だって改めて言えば良いんじゃない?』
『霧島さんは人付き合いが苦手だから仕方ないよ』
初見殺しだよね、この選択肢。
今度こそ、プログラミング優先であれ。




