打開策
さて、これからどうしようか。
玲香様は解決したけど、ことにゃんは全く解決していない。何処にいるか見当もつかないし。
望みは薄いが、家にいる可能性も無くはないだろう。とりあえず、ことにゃんの家に行ってみよう。
ビニール傘を手に、一路ことにゃんの家へと向かう。相変わらず雨は降り止まない。今日はずっとこんな天気だ。
歩道橋を渡り、ミニ動物園と公園を左に見ながら真っ直ぐと進む。
しばらく歩くと『エクセラ西月出里』と書かれた白い巨大マンションが見えてきた。これが、ことにゃんの住むマンションである。
入り口前で立ち止まり、マンションを見上げる。
さて、来たはいいがどうしたもんか。
ことにゃんの家は407号室だ。1度でもミラプリをクリアすれば馴染みの数字になる。
しかし、今の僕はことにゃんの家に行ったことが無いばかりでなく、どこに住んでいるかも知らない状況だ。
果たして、このまま会って本当に大丈夫なのだろうか。インターホンを押した時の事を妄想する。
『天音さん、突然すみません。狩場です』
『へ!?ななな、なんで私の家を知ってるんですか!?』
『理由はしっかり説明します。家へ入れて下さい』
『変態さん!?ストーカーさん!?いやぁ!ママぁ……!』
『は、話を聞いて天音さん……』
『キミ、なぜここにいるんだね?』
『え!?なんで警察が!?』
『署でゆっくり話を聞こうか』
『やめて!やめてえぇー……!』
あー、ダメだ。人生終わるわ。
ことにゃんが来るまで公園のベンチで待ち構えていようか。でも雨のせいで座れないし、家の前で待ち伏せとか本気のストーカー行為だ。
しょうがない、家に帰るか。
僕は足取り重く、近道である公園をトボトボ歩いた。休日なのに人がいない。なんか寂しい。
帰ったら美人ママに癒してもらおう。抱き付くぐらいなら許され……。
あ。
占いの館、まだ行ってない。
また忘れそうになってしまった。最後の砦、モッチの財布を手に入れなければ。今の僕にはこれ以外に打開策が見つからない。
すぐに方向転換し、占いの館へルートを変えた。
まだ夕方には早いし、時間はたっぷりある。少しだけ気持ちが楽になり、再び雨のミラプリの世界を楽しみながら歩みを進めた。
来た道を引き返し、歩道橋を前にして左に進んで占いの館へと到着。
紫色をしたのれんと白い字で大きく書かれた『占』という文字は、相変わらずの存在感である。
中に入ると、いつものように黒いレースの花柄が付いた服を身に纏った占いばあさんが、小さなテーブルの上に水晶を置いて座っていた。
「来たね、幸太郎」
「こんにちは」
僕はそのままイスに座って向かい合った。それにしても占いばあさんって服変わらないな。これしか持ってないのかな。
「どうだい、あれから順調かい」
「うーん……」
「芳しくないようだね」
「そうなんですよ。なんか上手くいかなくて……」
「上手く行かんのは当たり前だ。人生、思い通りな方へ行く事のが少ないんだからね。これから頑張りゃあいい」
「うーん、そうなんですけど……」
「まだ始まったばかりさね。そんなに落ち込む事はないよ」
確かに言われてみれば1週間経っていない。もう1ヶ月ぐらい過ごしてる感じがするけど、ゲームで言えばチュートリアルが終わるくらいの進み具合である。
「……そうですよね。ありがとうございます」
「それで、全てのメインの女子とは会ったんかい」
「はい。今日でみんなと会いました」
「ならば、ここからが勝負という事だ」
「そう……ですね」
「なんだ、もう狙う女子でも見つけたか」
「はい。ことにゃん……あ、天音さんです」
「その子と、上手くいっていないと?」
「はい……」
「ほう」
占いばあさんがニタリとする。
「輝樹だね?」
「え?」
「奴が妨害しているんだろう」
「はい、そうなんです!なんでわかったんですか!?」
「奴とは付き合いが長いんだ。すぐに察しはつくよ。それに……」
一瞬、考えるように眉間にシワを寄せる。なんだろう。
「……それにね。輝樹がここへ来て、幸太郎の事を色々と聞いていったからね」




