返事
その後、風呂に入ったり何やかんやしてベッドに就く。これで目を閉じたら日曜日になっているのだ。
果たして、無意識の僕はちゃんと日記を見てくれるのだろうか。
不安になったので、一度ベッドを降りて日記を開き、適当な白いページの端の部分を手で破り、
『黒い日記を見てね』と書いて、日記の上にわかりやすく置いておいた。これで大丈夫だろう。
不安もあるが、楽しみでもある。土曜日の僕はどんな行動をするのだろう。
良い結果でありますように……。
──目を覚ますと、雨の音が聞こえた。朝なのに部屋の中が薄暗い。
とりあえず電気を付け、早速日記を開いてチェックする。
僕が書いたページの横に、無意識の僕からの返事が来ていた。
交換日記みたいでなんか楽しい。ワクワクしながら読み進めていく。
「もう1人の僕へ。日記読みました。ことにゃんって天音さんだよね?変な記憶が追加されててビックリです。なんで親衛隊長なんかやってるんですか?」
いきなり怒ってる。短気になるなよ。
「あと、ゲームの記憶って向こうの世界の事ですよね?僕はこの世界の事しか知らないからちゃんと教えて下さい」
え、知らないの?しかも予想以上に怒ってるし。なんかごめん。
「っていうか、天音さんと仲良くならなくてよくないですか?スマビュ忘れたから好感度わかんないけど、宇月まどかじゃダメなんですか?」
なんかこの僕やだな。てかスマートビューの事スマビュって略してるんだ。
「映画館には行きました。入り口で待ってたら西園寺くんと天音さんが楽しそうに歩いてきました。
僕が声を掛けたら天音さんは怒ってないって言ってました。邪魔したら悪いしワンチャン無さそうだから帰りました」
なんという潔さ。しょうがないけどさ、もうちょい粘れなかったかな。あと、やっぱりぷりぷり怒ってる感じする。
「情報共有したい事は特に無いです。クラスで目立たず平凡に暮らしたいからそこんとこよろしく。じゃあね」
……うーん、なんていうか、僕って、こんな性格なのかな?
意識が無いとはいえ、こんな文章を書いてしまった自分を思うと心が痛い。非常に痛い。
もしかすると、映画館で大変なミスをして精神がおかしくなってしまったのだろうか。昨日の記憶をできる限り思い出す。
──土曜日の朝。日記を確認した無意識の僕は早速、書いてあった通り映画館へ向かった。高校から徒歩でさらに5分くらいの場所にある。
この時点で『何故ことにゃんと仲良くなる必要があるのか全くわからない』と感じていた。
映画館の入り口横で待ち構える。30分程して、輝樹とことにゃんが二人で歩いてきた。日記に書いてあった通りだ。
そこで、僕がいきなり話しかける。
「天音さん、こんにちは!暇だったから来ました!」
「へ!?ななな、なんですかいきなり!?」
「なんか悪いことしたみたいだから謝ろうと思って!」
「や、わ、私は別になにも謝られるような事は……」
「そうなの?なーんだ」
そう言うと、無意識の僕は帰路に着いた。ついでにショッピングセンターで新作ゲームをチェックしている。
待ってくれよ、やべー奴じゃん……。
こんな態度を取ってしまったのは恐らく、無意識の僕がことにゃんをどうでもいい存在だと思っているからだ。それに関係なく身勝手なのは否めないけど……。
さらに、記憶を辿る中で1つ気になった事がある。
僕自身、全く怒っていないのだ。
あの日記からは僕の説明不足に対する憤りで怒っている文面に見えた。
しかし、実際は全てストレートに感じた事や疑問に思った事を書いているだけなのだ。
もしかすると、身勝手な部分はこういう所に現れているのかもしれない。
今はことにゃんへの謝罪を優先するとして、今後は伝えるという事に対してさらに気を遣わなければならないだろう。
間違いなく将来、後悔することになる。




