仲間
僕を呼ぶ声がする。複数の声がするから、幻聴ではないはずだ。
声の方に目をやると例の三人がこちらに駆け寄り、僕の目の前に横一列になって止まった。
「狩場氏、本当にすまなかった。俺が不甲斐ないせいで、天音様を護るどころか悪役扱いにされてしまった……」
「加藤氏を責めないでやってくれ。俺だって狩場氏のように飛び出してフォローすれば良かったのに、何も思い浮かばなかったんだ……」
「いや、加藤氏も田中氏も俺ほど悪くはないんだよ。事前に対策を練った方が良いと頭では解っていたんだけど、提案できなかった……」
三人とも、本当に申し訳なさそうな顔で俯いている。
「ちょ、やめてよ……。勝手に輝樹に食ってかかったのは僕だし。三人とも悪くないよ」
「では、許してくれるのか……?」
「許すも何も……。最初からみんなが悪いって思ってないし」
「なんと心が広いお方!」
「狩場氏は天使のようなお方だ!」
「狩場氏はやはり最高のお方だ!」
なんか称賛された。
「狩場氏!俺は決めたぞ!」
「へ?」
「今から天音琴葉親衛隊は、狩場氏を隊長とする!」
「おぉー!」
「素晴らしい!」
そう言うと、三人は僕に向かって笑顔で拍手をした。正門前で何やってんの僕達。
「そうと決まれば、親衛隊の名前も変えた方が良いな。気分を一新するのだ。何か良い案はあるか?」
「いやいや、隊長やるってまだ言ってないよ……」
「大丈夫!狩場氏なら見事にこなせるであろう。さぁ、新しい親衛隊の名前を発表してくれ!」
えぇ……。
「例えば普段、独りの時に呼称している天音様の名前を付けるのも良いと思うぞ」
「加藤氏。それは地雷しかないのでは……?」
「加藤氏の提案であれば、加藤氏から発表すべきだ」
「田中氏、渡辺氏!きゅ、急にどうしたのだ!狩場氏だけで良いではないか!」
「いいや、平等だ」
「うん、平等だね」
二人の呼吸合うな。双子にしちゃ微妙に顔違うし、仲良いんだね。
「そ、そこまで言うのなら……。
お、俺は……。こ、琴葉タンと呼んでいる……。
ほら、言ったぞ!さぁ二人とも言え!」
「うわ、本当に言った!
俺は、俺は……ことっちだ」
「田中氏、マジか……。俺はシンプルに、琴葉ちゃん……」
「渡辺氏、ズルイぞ!」
「そうだ!一人だけ普通な訳ないだろ!白状しろ!」
「わ、わかったよ……。コ、コットちゃん……」
「コット!?ポットみたいな呼び方してたのか!?」
「渡辺氏、独特で良いセンスだなぁ」
「やめろよ!人それぞれだろ!」
……あのー、なんか楽しそうにしてるけど、僕、置いてけぼりくらってます。
「……あぁ、狩場氏!勝手に盛り上がってすまなかった!
狩場氏は、その……なんて呼んでるんだ……?」
「ことにゃんって呼んでるよ」
「スムーズ!スムーズ・オブ・ザ・スムーズ!」
「一切ためらいが無い!カッコいい!」
「それと比べて我々のなんと未熟なことっ……!」
そう言うと、三人は何故か地面に突っ伏して各々悔しそうに地面を叩いた。
「あー……。じゃ、じゃあ、ことにゃん親衛隊でいい……?」
「ことにゃん親衛隊!素晴らしい!」
加藤氏がスッと立ち上がる。
「なるべくしてなった名前だ!」
「我々も今日からことにゃんと呼ぼう!」
田中氏と渡辺氏もスッと立ち上がった。
こういうの情緒不安定って言うんじゃなかったっけな。
「お、狩場氏が笑った!」
「涙なんて無かったんだ!」
「元気になって良かった!」
三人が僕を囲んで頭やら肩やらをポンポン叩く。
「ちょちょちょ、三人だと圧が……」
なんだろう。
モブキャラも、悪くないかもな。




