信頼
「さ、西園寺くん!」
狼狽る加藤氏を横目に、僕は前へと出て行った。
「おや?狩場くんも居たのか」
見て笑ってたクセに。
「狩場くんなら、わかってくれるよね?」
「あ、天音さん!」
輝樹の言葉を無視して、ことにゃんへ声を掛けた。
「へ!?な、なんでしょう……」
「大丈夫、怯えないで。天音さん、友達作るの苦手って言ってたよね?」
「はい、そうですけど……」
「僕じゃ、ダメかな?」
「えっ?」
ことにゃんの目が丸くなる。止まるな、僕。
「僕、小さい頃から友達がいなくて、ちゃんと会話が出来たのって天音さんが初めてなんだ」
「えっ……?」
「あざとい、っていうのかな。同性の人からすると、女の子に媚びてるように見えるみたい」
「……一緒です」
きた!
「私と一緒です。その気持ち、すごくわかります……」
ことにゃんがだんだんと涙目になっていく。
決まった。必殺、パクリ作戦。
お気付きの通り、僕のセリフは全部ことにゃんのものだ。
しかもイベントすっ飛ばして友好度100手前のセリフ。
ここで実験するのもどうかと思うが、プログラミング優先であれば、この選択はあながち間違いではないはず。
「でも、狩場くんは私に優しくしてくれますか……?」
「もちろんだよ!自慢じゃないけど、産まれてから人に怒鳴った事も殴った事もない平和主義だしね」
「天音さん?狩場くんの言うこと、あんまり信じない方がいいと思うよ」
それまで黙っていた輝樹が急に割り込んできた。
「えっ?なぜでしょう……?」
「天音さんは狩場くんのことを、どこまで信用できるの?」
「どこまで、と言われても……」
「あまり話をしたことがないなら、すぐに人を信用しちゃいけないよ?
こんな風に、他の人を巻き込んで、天音さんに近づいて悪い事をしようとしているのかもしれない」
「ちょ、ちょっと待って!別に巻き込んでないし悪い事も……」
「それに。こういう変な奴らから天音さんを守るのも『友達』としての役目だ」
ことにゃんが僕と輝樹を見比べる。
そして。
「……ありがとうございます、西園寺くん。昔みたいにまた、危ない目に遭う所だったかもしれません」
心が、痛む。
「……天音さん。差し支えなければ、過去に何があったか、詳しく聞かせてくれないかな。
天音さんを具体的に守っていく方法が見つかるかもしれない」
「……はい。西園寺くんなら、信用しても良い気がします」
「ありがとう。なんか、暗い気持ちにさせてごめんね」
「いいえ、西園寺くんのせいじゃありませんよ?」
完全に、僕達が悪役じゃないか。
「いや、俺のせいだ。天音さんを悲しい気持ちにさせてしまったのは事実さ。……おい!親衛隊とやら!」
「な、なんだ急に!?」
加藤氏が狼狽る。
「もし次に天音さんに近づいたらただじゃおかない!天音さんは、俺が守るんだ!」
「西園寺くん……」
ことにゃんが、尊敬の眼差しで輝樹を見つめる。
「天音さん。一度、喫茶店へ行こうか。そこで色々と話を聞きたい」
「はい……」
二人はそのまま寄り添って、僕の横を通り過ぎた。
通り過ぎた瞬間、微かな声が、はっきりと聞こえた。
「雑魚が」
また負けたのか、僕は。
そうだよな、友好度が違うもんな。
……何がミラプリを極めただよ。
これじゃただの、ゲームオタクじゃないか。
「い、行ってしまったな……」
「狩場氏、あそこから動かないね……」
「加藤氏、田中氏、どうする……?」
「元々は俺が誘ってしまったからな……。謝ってこよう」
「待て。加藤氏が行くなら俺も行く」
「田中氏も行くなら当然、俺も行く」
「田中氏、渡辺氏。無理をしなくても良いのだぞ?」
「何を言うんだ。俺だって同罪だよ」
「田中氏の言う通り。連帯責任、ってやつだね」
「田中氏、渡辺氏……!」
「隊長だからって、一人で責任を被る必要はないよ?」
「そうそう。助け合うのがチームってもんでしょ?」
「ありがとう……!ありがとう……!」
「じゃあ、三人同時に声を掛けようか」
「田中氏、ナイスアイディア!では加藤隊長、頼みますぞ」
「うむ!行くぞ。せーのっ……」
「「「狩場氏ーーーー!!!!!」」」




