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対立

「狩場氏。早速、本日の夕刻に行動を起こそうと思う。先にこれを渡しておこう」


 そう言うと、加藤くんは『絶対守護⭐︎天音琴葉』と印字されたハチマキを手渡してきた。超絶糞だせぇ。


「これ、頭に巻くの……?」


「これは隊員の証であり、我らの結束の証でもある。ゆくゆくは旗も作ろうと思っているが、予算が無いので今は我慢してくれ」


 我慢も何もハチマキすら巻きたくない。やだ。


「授業が終われば恐らく、西園寺は天音様に近づいて二人で帰路へと着くだろう」


「天音様があんなブ男と一緒に帰るなんて危険すぎる!」


「天音様が誘拐されるようなもんだ!」


 田中くんと渡辺くん、本当に息ピッタリだな。イケメンなのに勿体ない。


「そういう訳で狩場氏。作戦を聞いてくれ」


「はぁ……」


「放課後。まずは校門前に集まって天音様と帰る西園寺を待ち構える。


西園寺が来たら俺が先頭に立って口上を述べるから、俺の後ろで腕を組んでキリッとしていてほしい」


「口上?」


「天音様をお護りする宣言とでも言おうか。ついでに、俺の演説の応援を三人で頼む!」


「『そーだそーだ!』って便乗するやつ?」


「その通り!狩場氏は本当に話のわかるお方だ」


 ザコキャラがやるやつじゃん。やだ。やりたくない。


「上手くいけば西園寺は天音様に近づくことすら躊躇うようになる。そうなれば勝利したも同然。


天音様に声を掛け、放課後に我々と天音様で集まる会を作るのだ。


そこでお茶を嗜み、天音様と語らい、カラオケやボーリングへ行って絆を深め合う……」


「あぁ、なんと素晴らしい時間!」


「あぁ、なんと美しき青春!」


 勝手に妄想してるみたいですけど、輝樹そんなヤワじゃないッスよ。言わないけど。


「狩場氏、やってくれるな!?」


「天音様を助ける為だと思って!」


「四人、力を合わせて西園寺をやっつけよう!」


 主旨、変わってないッスか。


 拒否してもいいんだけど、ここまで圧倒されると断りにくい。それに今は絶対ことにゃんと帰れないし、仲良くなるチャンスも見当たらない。


これは負け試合なんだろうけど、もしかしたら先程のように話に割って入れば、強引にことにゃんイベントがスタートできるかもしれない。


この三人もことにゃんを想う気持ちは同じだし、放っておくのも可哀想だし、人助けだと思って……。


「……わかった。協力するよ」


「おぉ!狩場氏!」


「ありがとう、狩場氏!」


「最高だよ、狩場氏!」


 狩場氏って呼び方、連呼されると気になるなぁ。


まぁ、郷に入れば郷に従えって事で。僕もその呼び方にしよう。


「よろしくね。加藤氏、田中氏、渡辺氏」



 ──放課後。


 僕達は約束通り校門前に集まり、例の糞ださハチマキをして輝樹を待ち構えた。


配置は加藤氏を前に置いて、輝樹側から見て左から田中氏、僕、渡辺氏。


 別にいいんだけどさ。なんで加藤氏と僕の位置被ってんの?


これだと『そーだ!そーだ!』って言いながら加藤氏の後ろからひょこひょこ出たり隠れたりしなきゃいけないじゃん。もはやコントじゃん。


「お、来たか」


 加藤氏が言う。僕から見て、加藤氏の背中の右側から顔を出してチラッと正面を見ると、


輝樹とことにゃんが笑顔でこちらへ会話をしながら向かってきていた。


 間近になるとやっぱり恥ずかしい。僕は加藤氏に隠れるようにして腕を組んで立った。多分、キリッとはしていない。


「西園寺輝樹っ!」


 加藤氏が叫ぶ。


「我々は、天音琴葉親衛隊である!」


「「そーだそーだ!」」


「あ、そ、そーだそーだ」


 ワンテンポ遅れてしまったが、キョトンとした顔の輝樹とことにゃんが確認できた。


「今ここに、天音琴葉様をお護りする宣言を致す!」


「「そーだそーだ!」」


「え、そ、そーだそーだ」


 いやタイミングおかしいでしょ。


「西園寺輝樹!今すぐ天音琴葉様から離れるのだ!」


「「そーだそーだ!」」


「そーだそーだ……」


 もう恥ずかしい。早く終わって。


「えーっと……。君達は何か誤解をしているみたいだね」


 輝樹が答える。若干、笑いを堪えているのは気のせいだろうか。


「誤解とはどういうことだ!?」


「俺らの家が近いから一緒に帰っているだけなんだ。やましい気持ちなんて一つもないよ」


 やましさしかないだろ猫被り糞野郎。


「それに、俺と天音さんは友達なんだ。友達同士で帰るのは自然な事だろう?」


「うっ、そ、それは……」


 加藤氏が狼狽る。レスバよっわ。


「さぁ、わかったらどいてくれ。天音さんも怖がっているよ?」


 チラッとことにゃんを見ると、両手で輝樹の腕の裾を掴んでいた。明らかに表情は怯えている。



 ……待て。



 なぜ、僕がことにゃんを怯えさせる手伝いをしてるんだ。


 ことにゃんを本当に護れるのは、僕しかいないはずなのに。


 ならば、僕がやる。


 親衛隊のみんな、これが本当の主人公だ。


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