駆け引き
映画ペアチケットの最速入手方法は次の通り。
まず、初日にことにゃんとランチを過ごして友好度を上げておく。
週後半で再度ランチを過ごして映画の話題をする。フラグはこれで完了。
休日になったらショッピングセンターへ行って適当に買い物。すると、福引券が手に入る。
その足で福引場へ行くと必ず1等が当たり、映画ペアチケットが手に入る。
これで終わりでは無く、さらにこのまま映画館へと向かって映画情報をチェック。
どんなジャンルの映画があるか確認して、次の週後半内の昼休憩終了までに、ことにゃんへ話しかける。ちなみに週前半で話しかけても、映画の話題は1日通して出てこない。
この時、映画情報をチェックしていなかった場合は『何の映画が上映されているか知らない』という事になり、
映画ペアチケットが当たった自慢話、という内容でイベントがそのまま終了してしまう。
さらに友好度もしっかり下がってしまうので、手順を踏まないと最悪の事態となってしまうのだ。
ここまでやらないと手に入らない映画ペアチケット。
同じ条件の輝樹が週前半のあの日だけで全てをこなす事は、まず不可能。誰の目にも明らかである。
しかも、福引が行われるのは休日だけと決まっているのだ。
考えたくもないが、チートを使っていると思わざるを得ない。
しかし、チートコードの入力なんて出来るのだろうか。
まさかとは思うが、歩数等で乱数調整をしたり、アイテムを入れ替えたり特定の建物の出入りを行ったりして、ゲームプログラム内の数字をイジって入手したのだろうか。
いずれにしても、ズルはズルだ。
いくら輝樹がクソ野郎だからと言って、ここまで性格がひん曲がっている奴だと思わなかった。
機械を取られた仕返しだ。見せしめにしてやる。
「……西園寺くんオススメの映画さんって、なんですか?」
「えーっと……」
今だ!
「西園寺くん!ちょっといい?」
「ん?なんだい?」
「そのチケット、偽物じゃないよね!?」
よし、言ってやった!
さぁ、どう答えるんだ輝樹。白状しろ!
輝樹の表情を見る。
目が、ふっと細くなる。
そして、口角が、しっかりと上に上がった。
まるで、罠にかかった獲物を捕らえたように。
「うん、本物だよ。天音さんが映画を観たいっていうから、福引で当ててきたんだ。
アニメ映画をやっているみたいだから、一緒に行こうと思ってね」
「で、でも、福引やってるのって休日だけでしょ!?」
「えっ?」
輝樹がわざとらしく、不思議そうな顔をする。
「福引って、日曜日と水曜日だよ?」
……は?
なに言ってるの?
日曜日と……水曜日?
「そうだよね、天音さん?」
「ふえ?確かにそうですね。私もたまぁに福引やるんですけど、なかなか当たらないんです。
あ!もしかして1等が当たったのって、西園寺くんだったんですか!?」
「そうなんだよ!『火曜日』のランチの時間に映画の話をしたのが気になって『水曜日』の帰りに福引を引いたら『偶然』当たってね!」
「はわわ、天使さんが味方してくれたんですね!」
嘘だ。
嘘に決まってる。
そんな事、あっていいはずがない。
「じゃあ、明日は映画に決定ということで!」
「ふわぁ、楽しみですー!」
「続きはランチの時にまた話そうか。あ、それと狩場くん?」
そう言うと、輝樹が僕の耳元に口を当てて囁いた。
「主人公、舐めンじゃねぇぞ?」
何も、言い返せなかった。
ニタついた輝樹が席に戻る。
イスに座ったまま正面を向いた僕は、思考を停止した。
いつものように、涙が頬を伝った。




