降り立った世界
輝樹と占いばあさんだけがループ……。
「最初は奴も不安だったのだろう。意識のある週3回、必ずここへ来ていたよ。新しい発見をした、と子供のように報告をしにね。
だけど最近は、会話なんて無いよ。
訪ねてくるなり『占い』と一言。
アタシが『小吉』なんて言えば、ありがとうも言わずにどっか行っちまう。冷めた関係さ」
占いばあさんのトーンが少し下がる。
「奴がアタシに危害を加える訳ではないから、別に良いのだけども」
もしかして、孫みたいな感覚で話してたのかな。そう考えると、ちょっとかわいそう。
「あ、そういえば……」
「なんだい?」
「なんで、あの日ハート5個無くなったんでしょう……?」
「ほう。自分で思い出してみんさい」
言われた通り、自問自答で思い出す。
ハートが5個無くなった、という事はイベントを5つこなした、という事だ。
まず、家を出てすぐに水瀬鏡と話をした。メインキャラと出逢ったから、恐らくイベント扱いになっているはずだ。
その後、輝樹とことにゃんを見て絶望した後に占いの館へ。
そして学校に行ってことにゃんの自己紹介。メインキャラ絡みだが、実際のゲームではストーリー扱いとなり、ここでハートは消費されない。
輝樹に体育館裏へ連れて行かれてやんややんや言われ、教室に戻ってことにゃんと会話。授業終わりでまどかイベント。
「……ハートを消費しそうなイベントは5個ある気がします。
でも、ゲームに登場しないイベントばかりなんです。
授業中に会話したのですが、本来は回想でしか授業シーンは出てこないですし。
それと、ことにゃんと会話をしてない箇所が1つあるので、そこでハートは消費してないと思います。
可能性があるとすれば、輝樹もハート消費イベントに入っているのかと……。
あ、でもことにゃんと初めて出逢ったっていう意味ではイベントか……?」
ゲーム内に存在するイベントなら一発でわかるのに。
輝樹が関わるかどうかで、今後のハート消費の計算に影響が出る。
もっと早く気付ければ良かったが、今更遅い。
長話を黙って聞いていてくれた占いばあさんが口を開く。
「お前さん。過ぎた事を悔やむのは仕方がないさね。
今後はビックリマークとやらが出るんだ。奴が関わるかどうか、学校で確認すりゃあそれで終いだ」
「確かにそうなんですけど……」
「それと。お前さんの世界では、テレビゲームになっていると言うたね?」
「はい、そうです」
「アタシャ古い人間だから、テレビゲームの事はよくわからぬ。
一つだけ言えるのは、この世界では誰しもが、
『自ら考えて行動をしている』
と、思うておる事だな」
「……え?」
「お前さんの世界と同じように『メイン』も『モブ』も関係なく、
住む場所があり、家庭があり、笑い合い、語り合い、時には怒り悲しみ、
それぞれが共存し合いながら生きておる。
誰も、自分がプログラミングされているなんざ、思うてないよ。
もちろん、お前さんの言うゲームの知識は十二分に役に立つ。
だが、それだけでこの世界を生き抜くのは、容易な事ではない。
そこをしっかり考えれば、お前さんの望む結末になるだろうて」
言い終わると、占いばあさんはニッコリと微笑んだ。
ここはミラクルプリンセスの世界。
だけど、ここで暮らす人々は、僕と変わらない人間生活を送っている。
それでも所々で適応される、ゲームキャラクターの本能とも言えるような行動。
あの輝樹でさえ、自己紹介の時、プログラミングに勝つことができなかった。
……やはり、僕は選ばれた人間なのだろうか。
この世界で、現実とプログラミングの狭間で生きていける、唯一の人物。
それこそが、僕なのかもしれない。




