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システム

 何時から店を開けているのか知らないが、占いの館に入ると、あの日と同じ様に小さなテーブルの上に水晶が置いてあり、それを目の前にして小さなイスに座った占いばあさんがいた。


「おはよう。久しぶりだねぇ」


「お久しぶり……です」


「なんだい、目が死んでるよ。占ってほしい訳ではなさそうだが」


 相変わらず感の鋭いばあさんだ。


「あの、色々と聞きたい事があるのですが……。大丈夫ですか?」


「アタシにわかる事なら答えるよ。ほれ、突っ立ってないでそこのイスに座んな」


 僕は水晶を挟むようにして、占いばあさんの正面へと座った。


「さ、話してみんさい」


「ありがとうございます。早速なんですけど……」


 と言いつつ、聞きたい事がありすぎて5秒ほど沈黙した。


「……おばあさんって、何者なんですか?」


「アタシかい?ただの占いババアだよ」


「あ、そうじゃなくて……」


 そうだった。相手にわかりやすく、理解してもらえる様に……。


「えーっと……。おばあさんって、この世界をループしてるんですか?」


 即座に、占いばあさんの顔色が変わる。


「ほほう。良い質問だ。では答える前に、お前さんの素性を教えてもらおうか」


 そうだ。僕はこのばあさんにまだ何も話していないんだった。


 僕は焦らずなるべく丁寧に、今まで起きた事の顛末を話した。



 この世界に自ら来たいと願って転移したこと。


 輝樹に体育館裏へ連れて行かれて、そこで気になる話を沢山聞いたこと。


 記憶がいきなり飛んでしまったこと。


 この世界が、自分の世界ではゲームになっていること。



「……なるほどねぇ」


 そう言うと占いばあさんは暫く目を瞑った。


まさかこのタイミングで寝る訳ないよな、と思った辺りで目を開け、口を開いた。


「お前さん、長方形の小さな銀色の機械は持っているかい?」


「へ?いや、持ってないと思いますけど……」


「念のため、服ん中を探してみんさい」


 何を言っているんだろう、と思いつつも立ち上がってポケットに手を入れたり身体中をパンパンと叩いたりする。


 ふと、胸の辺りに硬い感触を見つけた。


 ブレザーの内ポケット。


 全画面タイプの携帯電話のような銀色の機械が、入っていた。


 なぜ今まで気が付かなかったのだろうか。


「電源を付けてみんさい」


 占いばあさんに言われるがまま、右上部にある電源スイッチであろうボタンを押す。


画面が付いた瞬間、それは携帯電話では無い事がすぐに分かった。



「え、これって……!?」



表示された画面上部から順番に目を追っていく。


 まず、一番上には今日の日付と曜日が書かれている。問題はそのすぐ下。



 『週後半』と書かれている。



 さらに行を開けたその下に、信じられない項目があった。



 『ハート残数』



 ゲームと同じ赤いハートが4つ。一番右だけは黒いハートになっている。


 その下には『イベント進行状況』と書かれており、次の行には『朝・占いの館 進行中』と書かれていた。


 さらにその下、黒い日記に書かれているはずの『友好度』という欄があり、次のように表示されている。



 天音 琴葉 1point

 宇月 まどか 10point

 水瀬 鏡 1point

 霧島 玲香 0point

 桜小路 朱里 0point



 まだ会っていない別のクラスでお嬢様キャラの霧島玲香と、ふむふむ言ってる『しゅり先輩』こと桜小路朱里がいるので、嘘偽りなく、確実に現在の友好度である。


 最後の『設定』と書かれた欄は、次のようになっていた。



 エクスクラメーション表示 OFF

 ハート枯渇時 自動日付スキップ ON

 セーブモード ※機能停止中



 なんなんだ、これは。


 頭が、追いつかない。



「やはり、持っておったか」


 占いばあさんが何かを察したように、困惑した僕に声を掛ける。


「やはり、と言いいますと……」


「輝樹ってのも、同じ機械を持っているんだよ」


「え?そうなんですか?」


「懐かしいねぇ、この機械の話をするのは。確か、この世界を初めてループした時に奴と話をした以来だ」


「初めて、って……。じゃあ、おばあさんも?」


「ああ。アタシも、この世界をループしている」


 やっぱりそうか。


「……あの、まだ時間は大丈夫ですか?」


「お前さんの都合が良ければ、いくらでも」


 腕時計を見る。まだ、たっぷり1時間はある。


「是非、色々と聞かせてください。お願いします」


「かまわんよ。さ、座んな。何から話そうか」


 改めてイスに腰掛ける。しかしいきなり話せと言われると逆に悩む。なにせ聞きたい事が多すぎるのだ。


「えーっと……」


 わかりやすく頭を抱える僕を見て、占いばあさんが急に笑顔で笑い出した。


「ほっほっほ……」


 え、なに、怖い。


直後、僕の目を真っ直ぐに見て、こう言った。



「お前さん、やはり選ばれたんだね」


 


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