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決意

 購買店へと到着し、二人でパンを選ぶ。


「うわぁ、どれも美味しそう!意外と種類あるんだ」


 まどかがキラキラした目でパンを眺める。僕もゲーム画面でしか見たことがないので、実際に見ると感動する。


いつも選択肢で出てくる焼きそばパン、コロッケパン、サンドイッチ、メロンパン、クリームパン、チョココロネに加えて


クロワッサンやハンバーガーもあるし、フランスパンにタラコが載っているパンやチョコチップが散りばめられたパン等、どれも本当に美味しそうだ。


 さて、肝心のお金だが、実は初日限定ボーナスで手に入れた500円の他に最初から入っている1000円がある。


 この1500円は攻略上、基本的には好きに使って構わない。だが、あまり使いすぎてしまうと、ことにゃん攻略に支障が出てしまうので、せいぜい500円くらいまでだろうか。


さらに言うと、占いの館で『大凶』が出ると100円お金を落としてしまう可能性がある。


4月は『大凶』が出るのは4回までと決まっているが、低確率とは言え、やはりギリギリで保つのは不安だ。


 各パンはそれぞれ100円。1つ買えば充分なのだが、朝から何も食べてないし吐いたせいでお腹がめちゃくちゃ空いている。飢えには勝てない。


「宇月さん。いま食べたいと思ってるパン、当ててあげようか」


「わかるんですか?まっさかー!」


 ふふふ、僕を誰だと思っているのかね。


「いま食べたいのって……クリームパンでしょ?」


「えぇ!?なんでわかったの!?」


 ドヤァ……!


「だってクリームパンばっかり見てたし」


「ありゃりゃ、バレてたかぁ。だってクリームパン美味しいそうなんだもん」


「僕、サンドイッチとクリームパン買うから半分こしない?」


「いいの!?でも、おごってもらうのはちょっと……」


「だって、さっき……変なこと言っちゃったし。


それに、その、む、むむむ、胸のとこ、ばっか、見ちゃっ……ふしゅ……」


「え、ぜんぜん気にしてないよ!?ぜんぜん怒ってないし、それにお金大事だよ!?」


「お願い、今回だけ!僕の気が済まない、って言うか……」


 本当にそれだけの理由なのだ。まどかを攻略するつもりは無いが、失礼な事をしたのは百も承知である。せめて何かしてあげたい。


「そこまで言うなら……。でも、今回だけにしてね?」


「うん。なんか、ごめんね。お節介で」


「優しいなぁ、先輩は」


「臆病なだけだよ」


「先輩……」


 まどか悲しそうな顔をする。


「あぁ、僕また変なこと言った!そんな顔しないで!ごめんてぇ!」


「……ふふふ」


 あ、ちょっと笑った。


「狩場先輩って心配性なんですね」


「そう、かも……」


「私は、そのままの純粋で素直な先輩でいてほしいです。人によっては臆病に見えるかもしれないけど、そこが先輩の良いところなんじゃないかな」


「……そうかな」


「ほら、元気出して!早くパン買って戻ろ!」


「う、うん。そうだね」


 なんか励まされちゃったな。なんでこうなったんだろう?


 その後、僕達は自動販売機でそれぞれジュースを買った。


ジュースも奢ろうとしたけど、奢ったら本気で機嫌が悪くなりそうなのでやめておいた。


所持金は1200円。余裕すぎる。


 それから教室に戻り、まどかの席に自分の椅子を持って行き二人で仲良くパンを食べた。


何も知らないフリをしてまどかにあれこれ質問をしていたのだが、ゲームの知識がある分、めちゃくちゃ楽に会話が弾んだ。


これぞ僕が求めていた理想の形。ことにゃんの予行練習と言った所か。


 しかし、予想以上に宇月まどかに惚れそうだ。実際に会話をすると意見がことごとくマッチするし、時折り漫才みたいな会話になるし、本当に楽しい。


「先輩!今日は付き合ってくれてありがとね♡」


「付きあ……!はう……はう……」


「へ?……いいいいや、そそ、そうじゃないよ!!」


 分かりやすくまどかの顔が紅くなる。


 か、かわえぇ……。


「全くもう、何言ってんの先輩……」


「ご、ごめん。つい……」



「……ねぇ、やっぱり、今日の放課後って忙しいの……?」



 ……あぁっ、忘れてた!!


 しかも、今日一番のウルウル上目遣い……!


 そうか、だから強制イベントになるのか。この状況は、非常に断り辛い。というか、普通は断らない。どうすれば……。


「先輩。今日の放課後、何があるの……?」


「そ、それは……」


 その時、僕はまどかに言われた事を思い出した。



 純粋で、素直な先輩。


 人によっては臆病に見えるけど、それが先輩の良いところ。


 

 頭の中に、ふと過ぎる。



 今までこの世界でしてきた会話や行動は、全て自分よがりだったのではないか。


 『きっとこうだろう』とか『自分がこう思うから相手も同じ考えだろう』なんて考え方をして、失敗していた気がする。


 

 ならば……。



「宇月さん」


「なに……?」



「僕ね、天音さんと仲良くなりたいと思ってるんだ」


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