表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
115/141

入手方法

「なんで、日曜日なの……?」


 未だにこちらを見ることなく、相変わらず俯き加減のまどかに問う。


「こういうのって、早い方がいいもん。それだけ」


「他に理由は……?」


「逆に、日曜日がダメな理由があれば教えてほしい。


私とのデートが嫌ならちゃんと言ってほしいし、もっと重要なことがあって、それが私にも協力出来ることだったら、力になりたい」


 もしかして、モッチの財布のことを知らないのだろうか。


だけど、占いばあさんと話していた時にその話題も出ていたはずだ。


そもそも僕が占いの館へと通う一番の目的がモッチの財布なんだから、話題が出ないはずがない。


「……モッチの財布の事って、聞いてるよね?」


 意を決して、まどかに訊ねる。


「知ってる。次の日曜日に手に入るんでしょ?」


「えっ、わかってて……!?」


「朝から行って、福引で手に入れれば問題ないでしょ?」



 あ、そうか。


 モッチの財布を手に入れる条件、知らないんだ……。



「……ごめん。朝だと、モッチの財布は手に入らない」


「……えっ?


だって、日曜日には、手に入るんじゃ……?」


 まどかの顔が初めてこちらへ向く。目を見開き、明らかな戸惑いを見せている。


「そうなんだけど、条件が厳しいんだ。


今から伝えるから、みんなも聞いててほしい」


 僕は立ったまま、改めて説明を始めた。


「まずは朝。占いの館へ行って、普通に占いをしてもらう。


まずはここで『超吉』というのを出す必要があるんだ」


「超吉……?大吉までしか無いんじゃないの?」


 困惑の続くまどかが疑問を呈する。


「普通はね。


だけど、初日から占いの館へ通い続けると、この日だけは『超吉』が出る。


もし1度でも占いを逃してしまうと、絶対に超吉は出てこないんだ」


 ゲーム内でいう毎回だから、この世界では意識のある週3回。


スキップしてしまったものの、無意識の僕が代行してくれたからフラグは折れていないはずだ。


「そして昼から、黒猫を探さなきゃいけない」


「黒猫……?」


 ますます困惑するまどか。


「黒猫なんてこの街にいただろうか……?」


「野良猫なら沢山いるが、黒猫は見た事がないな」


「探せばいそうだが……」


 親衛隊の皆も首を傾げる。


「出現場所がランダムだから、見つからない事も多いんだ。


ある程度は決まってるんだけど、見つけるだけじゃフラグは立たない。


猫の鳴き声が、重要になってくる」


「特殊な鳴き声……ということか?」


 加藤氏が腕を組んだまま訊ねる。


「ちょっとだけね。


文字で言うと『にゃにゃーん』なんだけど、その鳴き声もランダムだから上手く鳴くかわからない。


そこでマストアイテムになるのが、キャットフード。


1個100円で売ってて、食べ終わった後に『にゃにゃーん』って鳴く確率がぐんと上がるんだ」


 現在の所持金は900円。僕がお金を貯めていた理由が、ここにある。


「上手く鳴いたら、いよいよパルプの福引場。


これも時間帯が決まってて、夜にならないと絶対に手に入らない。


ここまで来ると出玉が決まってて、1回目で必ず大当たりが出る。その後は4回連続でハズレ。


その後に福引を引くと、虹色の玉が出て超大当たり。


そこで、ようやくモッチの財布が手に入るんだ」


 通常プレイだと、事前準備として福引券を6枚所持しなければならない。


パルプ内で買い物をするとランダムで入手できるが、


平日は学校の帰りじゃないと買い物できないし、


そもそもお金が手に入らないから買い物が出来ない。


初日に占いばあさんから福引券を10枚貰えた事が、どれだけ幸運なことだったのかは計り知れない。


「このイベントはフラグが重要になってくる。


少しでもゲームと違う動きをしたら、手に入らないかもしれない。


だからモッチの財布は、僕一人の力で手に入れなきゃいけないんだ。


そして、モッチの財布が手に入ったら……」


 視線は自ずと、彼女へと向く。



「宇月まどかさん。貴女へ、差し上げます」


「えっ、私……?」



 まどかの掠れ声が耳に響く。


「だって、友好度が200ポイントも上がるんだよ?


天音さんにあげたら、すぐに仲良くなれるのに……」


 僕は無言で首を振った。


「気付いたんだ。


いま、ことにゃんは輝樹と仲良く過ごしている。


輝樹の事が本当に好きなんだろうなって思うし、二人の関係を邪魔しちゃいけないな、とも思う。


それに僕の中で、ことにゃんよりまどかの方が大事なんだな、って……」


 現実世界では、ことにゃん一筋だった。


 だけど、この世界で一緒に過ごして、考えが変わってしまった。


 二次元だけに存在していた天音琴葉の魅力を、もう一つの現実世界で共に過ごした宇月まどかが上回った。


 ただ、それだけの事だ。



「だからね。


モッチの財布を手に入れたら、改めて想いを伝えさせて下さい。


そして僕に、宇月まどかを、選ばせて下さい」



「幸太郎くん……」



 まどかは両手で口を覆っている。


 次第に涙が溢れ出てきて、幾度となく嗚咽を漏らした。


 

 これで、全て伝えた。


 後は当日、モッチの財布を手に入れるだけだ。


 ランダム要素が強すぎて、本当に手に入るかわからない。


 だけど僕は、必ず手に入れてみせる。



 まどかを、幸せにする為に。


 僕自身が、幸せになる為に。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ