スキップ
「はぁ……!?」
五十嵐美波が、メインキャラクター?
あんなヤンキーが、純粋無垢なミラクルプリンセスの世界で、攻略対象だったってこと……?
「本来はもっと後になってから教えてあげようと思っていたのだが、
順調に攻略を進めた上で行き詰まっている様子を見て、このタイミングでも良いと思ってな」
「ちょ、ちょっと待って!メインキャラクターって……ほんとなの!?」
「あぁ。嘘偽りなく、本当にメインキャラクターだった」
信じられない。
仮にそれが本当だったとして、誰が好き好んであんなヤンキーを攻略しようと思うんだ。
「唐突に五十嵐美波が出てきて不思議だろう。だが、彼女が宇月まどかの友好度に絡んでいる事は間違いないのだ」
「へ……?」
まどかと、ヤンキーが?
ことにゃんならまだしも、二人の絡みって一度も無いじゃないか。
「つまりだな。現在、五十嵐美波のフラグが絶賛進行中なのだよ。
その関連で、宇月まどかはこれ以上ポイントが上がらないのだ」
「それ、本当のこと……ですか?」
にわかには信じがたい。でも、このブライトマンが僕に嘘を付いたところで意味があるとは思えない。
「まぁな。システム的には上がっているのだが、数値には現れない状態となっている。
つまり、これ以上はウダウダしているだけとなり、じれったい日常が過ぎていくのだよ」
「はぁ……」
「そこでだ。狩場幸太郎に、改めて相談を持ちかけたい」
ブライトマンは改めて腰に手を当て、背筋をピンと伸ばしたような形になった。
「いま、モッチの財布を手に入れようとしているな?」
「うん。ずっと頑張ってる」
「順調に行けば、その日はいつだ?」
「来週の日曜日だけど……」
「正解!さすが、無双できるだけの知識はあるな。いいぞぉ、その調子だ!」
また前のめりになってる気がする。ヤダなぁ、このノリ。
「突然だが、狩場幸太郎。
このまま、来週の金曜日までスキップする……というのはどうかね?」
「えっ……!?」
そんなこと出来るの?っていうか、なんで金曜日?
「安心したまえ。日曜日と月曜日は無意識の狩場幸太郎が占いの館へ行くことが決定している。
キミが書いた日記のお陰で、明日どころか毎日通うようになるのだ。良かったなぁ、狩場幸太郎!」
ブライトマンが親指を立てる。この手はどうなっているんだろう。
「でも、無意識の僕がビックリしちゃうよ。それに、まどかも悲しむだろうし……」
「相変わらず自意識過剰な男だな、狩場幸太郎」
再び、ブライトマンが頭を抱える。それやめて。
「宇月まどかの本当の心情など分からないだろう。
憶測だけで、よくもまぁ自信たっぷりに『まどかが悲しむ』なんて言えるな。
まさか、天狗になっているんじゃないか?」
「別にそんなことは……」
「いいや、天狗だ。天狗になっている。
その自信が、いつか災を生むのだ。気を付けたまえ」
いきなり説教かよ。好きだなぁ。
「以前、私はこの世界で力を使えないと言った。
しかし、これは私による力ではなく、システム的な力でスキップ可能となっている。
キミがこのゲームを何度も攻略していて、本当に助かった。
我ながら、この転生を許可した事は、良い判断だったと思うよ」
「だから『転生』じゃなくて『転移』だって。もう……」
それにしても。
スキップ可能というのは、一度イベントをクリアした人のみができる行動だ。
この特殊すぎる状況で、今後ゲームと同じ会話や選択肢が現れるとは到底思えない。
「では、決定ということで決まりだな」
「いや、まだ何も」
「なお!」
「うわぁ!ちょっ、待った待った!」
「この記憶は!」
「ダメダメ!まだ色々と」
「一部を除いて、消滅する!」
──清々しい朝を迎えた。鳥がチュンチュンと鳴く、休日らしい休日だ。
いつも学校へ行く時間に起きてしまったのは、体内時計がセットされているせいだろうか。寝ててもよかったんだけどな。
「おはよー」
眠たい目を擦りながら、トーストとサラダがセットされたテーブルの前に腰掛ける。
「幸ちゃん、珍しく眠そうね。夜更かししちゃった?」
「そうじゃないんだけど、休みの日くらい寝てようかなぁって……」
「えっ?」
ママが不思議そうな、心配そうな、複雑な顔をする。
「幸太郎、何を言ってるんだ?」
パパまでコーヒーを飲む手を止めた。どうした。
「休みは明日じゃないか」
「わかった!まだ寝ぼけちゃってるのね!かわいいなぁ、もう♡」
……ん?
……え?
……え、え、え?
ええええええええ!?!?!?!?!?
「いやいやいや!待って、今日って何曜日!?」
「金曜日よ?どうしたの、そんな慌てて。何かあったかしら?」
「違う違う!えっ!?からかってるだけだよね!?ほんとに金曜日!?」
「何か約束でもあったのか。それとも、宿題でも忘れたのか?」
「パパ、あんまり怒っちゃダメよ?誰だって忘れることくらいあるんだから」
「ごめん、ちょっとすぐ出掛ける!ほんとにごめん!」
バタバタと階段を駆け上がり、急いで制服に着替えて準備をする。
待ってくれ、何が起きてるんだ……?




