表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
106/141

告白

 ママは何も聞かなかった。夕飯を食べる時も普段通りに接してくれて、パパも気を遣うような素振りは見せずにいつもの爽やかな笑顔を浮かべていた。


悩みを訊こうとしない、と言ったら聞こえは悪いだろうけど、慰めの言葉を掛けられるよりも、今はそれが一番嬉しい。


 長い1日が終わり、僕は机に向かって黒い日記を開いた。


例によって、無意識の僕にメッセージを書いていく。


いつの間にか、この存在は交換日記のような役割を果たすアイテムとなっている。


面と向かって話は出来ないけど、僕の事を誰よりも理解してくれている、大事な友達。


そんな無意識の僕へ、今日の物語を綴っていく。



「無意識の僕へ。


まずは、僕のためにまどかと仲良くなってくれてありがとうございました。


今日は初めてハートがゼロになって行動するくらい、色々な事がありました。


朝、占いの館へ行って占ってもらったら、いきなり大凶。


その時は『別にいっか』と思ったけど、甘かったね。


まず、まどかを迎えに行って一緒に登校したんだけど、ずっと離れて無言で歩いてました。


午前休憩の時に改めてまどかの所へ行ったら『胸が痛い』って言うんで、そのまま保健室へ。


少し話をして、教室に戻って、昼休みに迎えに行こうなぁと思った所でことにゃん登場。


結局、流れでまどかを迎えに行かないで玲香様と仲直りランチしたんだけど、今日イチで最悪だったね。


僕も悪いんだけどさ、ゲームの知識ベラベラ喋ったらドン引きよ。


玲香様は怒って帰っちゃうし、ことにゃんは怯えて泣きそうになるし……。


で、追い討ちをかけるように五十嵐美波とかいうヤンキーが来てあーーーーもう最悪!思い出したくない!


キミもあのヤンキーには気を付けた方がいいよ?


めんどくさいっていうより、僕がいっっっちばん絡みたくないタイプ。


そのせいで、ことにゃん泣いちゃってさ。


僕もヤンキーの仲間みたいに思われちゃって、友好度10ポイントも下がったよ。謝ってほしいよね。


そうそう、輝樹がまどかに近づいてるみたい。大丈夫だと思うんだけど、一応気にしておいて。


それで、放課後はまどかと一緒に帰りました。


正門で抱き締めてくれたんだけど、まどかの家まで終始無言。


なんにも話してくれないの。


しかも、まどかの家に着いた瞬間カギかけられて『今日はもう帰って!』とか言われちゃってさぁ……。


ほんと、僕の事どう思ってるんだろうね。わかんないよ。


そっから、しゅり先輩の家に行こうとしたり占いの館で相談しようとして、ハートが無いのに気付いてさ。


ただ、ハートが無いせいで会えなかったのか偶然なのかわかんないんだよね。


占いばあさんって会ったことないよね?


公園の近くにあるから、暇だったら行ってみて。


あとは、ママに抱き付いてみっともなく泣いたくらいかなぁ。


もしかしたら変な空気になるかもしれないけど、そこは許して。ごめん。


とりあえず、今の僕からキミにして欲しい事は特に無し。日曜日も何しよっかなぁ、って感じ。


まどかに会いたいんだけど、月曜日までそっとしておいた方がいいと思う。


この前みたいに怒ってまどかの家に突撃しないでね?


あの感じは、僕のこと考えすぎて疲れちゃってるんだと思うから。


2日間ちゃんとリラックスさせれば、きっと元気なまどかに戻るよ。


以上、僕からはこんな感じかな。


たまにはキミも気兼ねなく休日を満喫してね!ばいばーい!」



 今までにないくらい、フランクな文章になった。


 本当はもっと、まどかについてあれこれ書こうと思っていた。


 だけどこれは僕の問題だし、そもそも本来の僕はしんみりした空気が苦手なのだ。


 何も考えないで、明るく、楽しく、平和に暮らしたい。


 今の僕にとって、これ以上の贅沢はないと思う。


 恋愛って、こんなに複雑で難しいものだったんだ。


 頭の中であれこれ考えても、一向にクリアできる気配がない。


 この世界でまどかを攻略できた時、僕はどれぐらい成長できるんだろう。


 そんなワクワクを抱きながら、僕はベッドに入って深い眠りに就いた。



 ──眩い光で目が覚めた。目を塞ぐように手の隙間から覗くと、白い光は両手を腰に当てた人型に輝いているのがわかった。


とりあえず直視できそうだ。ぼんやりと頭の中でこの状況を整理しようとすると、突然声が聞こえてきた。


「私はブライトマン。相談しにやってきた者」


「……?」


 いきなり、なんだ?


「少しだけ記憶を戻すから、大人しくしていてくれたまえ」


 そう言うと、ブライトマンの胸元から白い閃光が僕に放たれた。特に痛みは無い。


 その瞬間、ブライトマンとの記憶が、徐々に蘇ってきた。


「……あ、あぁっ、ああっ!」


「どうだ、思い出したか」


「うん、思い出した。相変わらず急に現れるなぁ……。


ところで、こんな夜中にどうしたの?今のところ順調だよ?」


「うむ。折り入って相談したい事があってな」


「相談?なんかあったの?」


「あぁ。宇月まどかの事でな」


 まどか?なんで、この変な光る人が……?


「現在、友好度が199ポイントで止まっているだろう」


「うん。……あれ、もしかして何か知ってる!?」


「少しはな。今から」


「ほんと!?どうして!?なんで友好度199ポイントで止まってるの!?」


「だ・か・ら!いま教えるから!落ち着きなさい!全く……」


 ブライトマンが頭を抱える仕草をする。よくわかんないけど、悲しい気分になるから呆れないで。



「あのな、五十嵐美波だが……」



 次の言葉を聞いて。


 落ち着き始めた僕の心臓は、この世界に来て一番の鼓動を鳴らした。



「あの娘は、元々メインキャラクターだったのだ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ