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剣と龍と神  作者: カナメ
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七十三・五話

もうすぐこの作品を書き始めてから一年になります。

…………はやっ!!あと四日……それまでには百話いきたい。


雨夜の王都で幾つもの白刃が輝く。

同時に甲高くも重々しい低い金属音が、響く、響く、響く。均等だったその音はしかし徐々に片方に偏っていく。

均衡は崩れ、片方に死が形となって押し掛けるように、音は激しさを増す。

やがて金属音以外の音が混じり出す。



肉の斬れる音だ。

金属音よりも静かなそれを、しかし確実に斬った方にも、斬られた方にもその音を聞き逃す事など出来ない。

この音に比べれば金属音などただの前奏部分、これからが本番だと言わんばかりのように、斬った側が怒涛の如く剣を振り続ける。

斬られた側はただただ圧倒される一方。 やがてその時は訪れた。

誰もが来るであろうと確信していた瞬間は劇的な逆転劇を生む……ことなどなく、圧倒されていた側は敗者となり骸を晒す。

血と肉片を撒き散らし、無惨な形で。

それを一瞥する勝者……ヴェルガードはすぐに周囲を油断なく見回す。



「……敵影なし、と。やれやれ、王都の警備はザルか?これで何人目だ、ホトの刺客は?」



死者ゆえに斬っても動きは鈍らないし、疲れも感じないのでいつまでも攻撃の手は止まらない。

しかも恐怖を感じず、命じられたままに死ぬまで命令を実行する。

これほど敵に回して厄介な存在はいないだろう。

人知れず暗闘するヴェルガード一行は、これまでに二桁に届く高位剣使を狩ってきたが、状況の改善は未だになし。

王国側の対応の遅さに、さすがのヴェルガードも苛立ちを隠せなくなってきたのだから相当の手際の悪さが伺える。



「ヴェルガード様、こちらも片付きました」



キーリカの直属配下である道雪の報告に、ヴェルガードは一先ずの安堵。

さすがのヴェルガードも、高位剣使を連戦で相手にするのは無謀だ。

敵が疲れを知らない死者の軍団なら尚の事。



「ご苦労、皆にケガはないか?」



「はっ、軽傷の類いはいくつかありますが、戦闘に支障はない範囲です」



「そうか。だが大事をとって今夜はここまでにして帰る…………わけにはいかなくなったか?」



「……そのようです」



二人の視線の先には屋根上に立つ一つの人影があった。

忽然と現れたソレを、味方と楽観できる者はこの場に皆無。屋根上に立つソレが、道雪を見て……次にヴェルガードを見つめる。

まるで値踏みするような目に、ソレは自身に絶体の自信があるのだろう。

お前らは自分を満足させる事が出来るのかと言外に問い、ヴェルガードは無言で挑発的な笑みを浮かべることでソレに応えた。



「久方ブリノ強者ニ出会エタ」



「さて、ワシはお前さんの期待に応えられるかまでは保証できないぞ?」



「一目見レバワカル。マズハ名乗ッテオコウ我ハ、ベルゼト」



「ヴェルガードだ。しかしホトの奴め……まさかこんなに早く三大聖剣使の一人を投入するとは、な」



「ホウ、意外ニ我ハ有名ナノカ?」



「あぁ中々の知名度だ。三大魔剣使に並ぶ猛者ぞろいの三大聖剣使の内の一人、『救聖主』ベルゼト殿」



「イツ呼バレテモ、我ニハ過ギタ称号ダナ」



心底そう思っているのだろう、ベルゼトは痒くもないだろうに右頬を人差し指でポリポリとかいている。



「そうか?そう呼ばれるに値する偉業を成し遂げただろう。一度ならず二度、三度と国を守った英雄、『救聖主』……ワシは名前負けしてないと思うぞ」



「面ト向カッテ言ワレルト照レルガ、素直二嬉シク思ウ。ダガ悲シイカナ、我トオ主ハ戦ウ運命ニアルラシイ」



「……少しも悲しそうに見えないが?」



「武人ノ性ダナ、許セ。サア二人ガカリデモ構ワナイ、カカッテコイ」



右手に長剣、左手に短剣を具現化したベルゼトが悠然と構える。



「道雪、先方のお言葉に甘えて二人同時で行くぞ」



「承知」



互いの視線で短く打ち合わせをしてベルゼトから見て右側からヴェルガードが、左側から道雪が回り込む。

雨夜の死闘は、まだしばし続く。























王都の一角ではまた別の死闘が開始されようとしていた。

対峙するは『八鬼衆』の一人、十郎太と今やホトの忠実な下僕と成り果てた元は同僚だった『八鬼衆』が一人、デクリオンの二人。

あの日、あの時、あの瞬間、ホトに選ばれた者と選ばれなかった者が再びあいまみえる。

今度は味方同士ではなく、敵として。



「お前が相手とは……皮肉だな」



「ウうあえ………エぁい……らウだ」



言葉にすらなっていないデクリオンのうめき声に、十郎太は顔をしかめる。



「あまりにも不憫、あまりにも不様。同族として今のお前は見るに堪えん。すぐに殺して、その呪縛を解き放ってやる」



「グおオォォォォ!!」



十郎太の敵意に反応するかのように、臨戦態勢に移ると同時に空へと高く飛ぶデクリオン。

予測落下地点はもちろん十郎太のいる場所。

獣のような叫び声をあげて落ちてくるデクリオンを十郎太は冷静に回避。

直後に衝撃!

王都の舗装された石畳が粉々に砕け散る。



「生前から思っていたが、お前は派手に暴れすぎだ、デクリオン」



「グゥおおォォ!!」



デクリオンの両腕が十郎太を掴まんと伸ばされるが、難なく回避。

十郎太に休む暇を与えないようにデクリオンは再度、掴みかからんとするが一切触れられない。

十郎太にカスリもしない事実に、元々が短気だったデクリオンは叫ぶ。

獲物を威嚇するように。

だが威嚇して効果があるのは格下だけだ。

同格ともいえる十郎太には意味がない。それにすら気付けないまでに知性が低下したと考えるべきか。

子供の癇癪かんしゃくを聞いたように表情を歪めた十郎太が、妖刀をデクリオンに突きつける。



「冥土の土産だ、これを見てから死ね」



十郎太は両腕、両足に魔素を展開。



「限定解放剣技、鬼甲」



剣技発動。

魔素を展開した十郎太の両腕、両足は黒い甲殻のように包まれていた。



「……皮肉だな。まさか人間が編み出した剣技を、『剣鬼』が使うとは」



十郎太が発動した剣技はカインが考案、実現した鬼甲の改良版の剣技。

これにより、全身鬼甲が制御しきれなかった十郎太でも、部分的なものなら発動できる。



「これが己の制御限界か。未だ完全体には遠いな」



十郎太に悔しさはない。

むしろ嬉しいくらいだった。

自分の今の立ち位置がわかった。

ならあとはそこに進むだけだと言わんばかりに、ニヤッと笑う。

その笑みを、デクリオンは自身が侮られたと勘違いしたのだろうか?

先ほどよりも怒り心頭な様子で十郎太目掛けて突っ込んでくる。

ただひたすらに真っ直ぐ、十郎太だけを見据えて。

その目には純粋な殺意だけを宿して。

死者とは思えない爛々としたデクリオンの目を、十郎太は正面から見つめ返す。



「ぎしャあァァァ!!」



殴り殺さんと突き出されるデクリオンの右腕を、十郎太は躊躇いもなく斬り飛ばす。

肩から先を斬り裂かれたデクリオンの右腕は天高く舞うが、両者ともそんなものに見向きもしない。

多量の血を撒き散らすデクリオンは止まることなく、無事な左腕を十郎太の腹部目掛けて突き出す。十郎太はそれを左手で受け止め、即座に左膝でデクリオンの左ヒジを破壊。

だがデクリオンはそれでも止まらない!

上半身を前のめりにして十郎太の首を噛み千切らんとするが、バックステップした十郎太には届かない。

むしろ無防備さをアピールするかのような態勢のデクリオンを、十郎太が容赦なくその顔面目掛けて右足を振り抜く!

デクリオンの左頬にめり込んだ足は一秒未満で右頬から抜け、鼻から上の顔面部分が民家の壁に激突、粉砕した。



「……先に死後の世界で待ってろ。いつになるかはわからんが、いずれは行く」



残ったデクリオンの顔面部分……口元が、十郎太の独白に反応したかのように笑みの形に歪む。

直後に意思なき体は地面へと倒れた。

流れ続ける血液は、雨が洗い流していく。

まるでこの死闘をなかったことにするかのように。

勝者の余韻を味わう時間などないとわかってはいる十郎太だったが、ほんの数秒だけ亡き同僚に黙祷を捧げた。

その数秒が、十郎太の運命を左右する。



「いい見世物じゃった。妾を楽しませた礼じゃ、く去ね」



幾つもの不協和音が数十にも重なり、十郎太の全身をバラバラに、コナゴナに切り刻む。

喋らせる時間など欠片も与えず、十郎太はただの肉片と化した。



「あぁ、来たぞ来たぞ!やっと妾はそなたに会えるなヴェルガード。いつぶりじゃ、この耳にそなたの声を聞くのは?その姿をこの瞳に映すのは?この魂に身近に感じるのは?焦がれるのぅ……ヴェルガード」



最悪の女が、王都に到着した。

夜雨はすぐに血の雨にかわる。

殺戮の『剣神』、《魔神》レラフが動き出す。


次話はカイン視点へ。

全然脈絡もなければ関係ない話なんですが、進撃の〇人を久々にDVDで見たらなんか、たぎってきました。

早く二期が見たいです。

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