七十一話
本日二話目っすよ~
いきなりだが謝ろう。
ヴェルガード、ごめん!
あれほど目立つなと言われたのに……目立っちゃったぜ!
具体的に言うと戦場で暴れすぎた。
アースガルズ王国とミクトラン帝国の顔合わせはそのまま戦闘に発展、いきなり数千規模の死傷者を生み出す結果となった。
そこに運悪く居合わせたオレ達は否応なく応戦するハメに。
一般兵同士のぶつかり合いは当初互角だったのだが、帝国があり得ない早さで剣使部隊を投入。
一瞬にして王国側の戦線が突破された。 これは持ち直さないとヤバイと思いファラやルシス、キーリカを連れて戦場を蹂躙せんとする帝国の剣使部隊に突撃。
さすがに百単位での剣使全てを押し返す事は出来なかったが、その出鼻はくじけた。
ここまではまぁ目立ってはない範囲だ。蛮勇やら血の気の多い若造とやらの評価で終わる。
だが帝国側の前線指揮官の一人を討ち取ったのが運の尽き。初戦を勝利で終えた王国陣地が祝杯をあげるなか、オレは敵将の首を換金しに行ったらコイツが結構名の有る将だったらしく大騒ぎに。
あれよあれよと言う間に今日一番の戦功者に祭り上げられ、しこたま酒を飲まされた。
いや戦場なんだからもっと手加減しろよと言いたいが、まあ無駄だった。
これ以上一ヶ所の戦場で活躍しては悪目立ちすると考え、一路違う戦場へと向かっている今日この頃。
まあ帝国との前線は広いから戦場は選り取りみどり、自由に動くさ。
戦争の方は毎日両軍ぶつかり合っている。
死傷者の数こそ数百単位にまで減少しているが、あまりにも異常なことである。原因はミクトラン帝国だ。
初戦以来、連戦連敗だというのに懲りずに毎日攻勢に出るのだ、王国側は仕方なく付き合う形でズルズルと戦わされている。
毎日王国と帝国の国境線のどこかで戦争は継続し、兵を消耗していた。
状況の打開をはかりたい王国だが、現状一度の会戦で決着をつけられない。
大陸、いやロードギア屈指の二大勢力同士の戦いだ、簡単にはいかない。
そうこうしている間に今日で開戦して十日……目立ちたくないのに、嫌でも目立ってしまうのは自業自得か。
対帝国の前線陣地の一つにいるオレ達四人を、遠巻きでヒソヒソ話す兵士はもはや日常風景と化している。
「おい、アレが例の……」
「あぁ、噂の傭兵達だ」
「『炎舞姫』と『銀髪姫』は一部でも有名だがあとの二人は見たことない顔だな」
「お前知らねえのかよ。あの色男の方は五日前の戦場で帝国の剣使六人を同時に斬り殺した腕利きだぞ」
「マジかよ!イケメンでしかも強いなんてどんだけだ!俺達の立場がないだろ」
「弱くて不細工……やべえなんか急に死にたくなってきた」
「気をしっかりもて。あと死ぬなら帝国の剣使を二、三人道連れにしてから死んでくれ」
「具体的な要望だなオイ!?」
……外野がやかましい。
だがやはりと言うべきか?
キーリカはすっかり男扱いされてるな。無理もない、見た目は絶世の美男子だし。
外部から見ればパーティーの内訳としては男二人、女二人に見えるんだろうなぁ……男はオレしかいないんだけどね。
面倒くさいので訂正なんかしないが。
「しっかし美男美女揃いのパーティーに一人だけ場違いな奴がいるな」
「いや別にあいつが不細工ってわけじゃなくて周りのレベルが高いだけだろ、顔立ちは普通だ」
「言ってやるな、あのメンバーだとどうしても見劣りするだろ?」
「不憫な……強く生きろよ!」
………何だろう、周囲から同情の視線を幾つか感じる。
甚だ不本意だがその意味を理解はしているが……納得はしてないので若干イラッとしてます。
ちなみにファラやルシスに声をかけた命知らずがいたのだが全員撃沈(物理的に)している。
キーリカの方はと言えば女性に声をかけられていた。
あまり女剣使は珍しくもないのだが、何も戦場にまで出会いを求めなくても……。
いや嫉妬とかじゃないよ。
別に羨ましいとも思ってないよ。
本当だよ!!
キーリカは翡翠色の瞳を隠す為にサングラスをかけているのだが、それがまた妙にハマっていて似合うのだ。
それがまた女性を惹き付けているのだが……皆さん残念!
キーリカは女ですから!
ざまあ!
………虚しくなってきた。
しかしキーリカはモテるな。
今も数人の女剣使を周囲に侍らせて会話を盛り上げている。………お前本当に『剣鬼』かと疑いたくなる順応性だ。
あの環境適応能力が切実に欲しい。
不意にキーリカが女性達との会話を切り上げ、こちらに向かってきた。
何だ、オレの願望を聞き届けてお前の順応性、適応力を授けてくれるのか?
「カイン、ヴェルガード様から連絡だ。四人だけで集まれる場所に移ろう」
「わかった、すぐに移動しよう」
どうやら真面目な話し合いになりそうなので、オレは思考を即座に切り替えた。近場にいたファラやルシスにテレパシーを送り、各々時間差で人気のない場所に集合する旨を伝え、オレはごく自然な足取りで前線陣地の外に出た。
誰にも怪しまれることなく、オレは集合地点として定めた場所に向かう。
どうやらオレが一番最初に着いたみたいだ。
集合地点にはまだ誰もいない。
五分ほど経過してルシスが到着、そのまた五分後にファラが来た。
最後は連絡係のキーリカ。
よし、全員揃ったな。
「随分とゆっくりと来たなキーリカ」
さて話し合いを始めましょうかという矢先にファラがキーリカに対して舌戦を仕掛けた。
おいおい、同じパーティーメンバーなんだからもっと和やかに出来ないのか?
だが下手にオレが介入すると後々両者の間にしこりが残る。 ここは一旦傍観モードだ。
決して女同士の舌戦が怖いからヘタレたわけじゃないと釈明しておく。
「周囲に怪しまれないように立ち去るのに存外、手こずってな。遅れてすまない」
素直に謝罪するキーリカに毒気をぬかれたのか、ファラはそれ以上の舌戦を継続せずに終了。
おや?
意外に早い決着。
だが寒々(さむざむ)しい空気にならなくて何よりなのでオレはさりげなくキーリカに話を促す。
「それでヴェルガードは今なにを?」
「はいはい、ヴェルガード様は水面下で動き回っているホトの配下を片っ端から狩っているみたい」
「どういう意味?」
ルシスの疑問はもっともだ。
キーリカわかりやすく説明してくれ。
「そのまんまの意味だよ。ホトの高位剣使の配下が、アースガルズ王国の高位剣使狩りをしていたから妨害して、逆に狩ってるって意味」
「それは国境付近じゃなくて後方……王都方面の話か?」
「そう、戦いは見えない所でも始まっている」
……ヴェルガードの奴、どこにいるのかと思えばそんな所で奮闘していたのか。
「王国側は高位剣使狩りに対処しているのか?」
「一応は。でも後手後手にまわってるみたいだね、ヴェルガード様が影ながらフォローしているけどそれでようやくみたい」
ラーズにしては珍しく押されている状況か……それだけホトの配下が王国に浸透しているのか?
「国境付近では未だに帝国の高位剣使の姿は少ない……後方撹乱に大半を動員しているのか?」
「……補足説明しておくと、王都周辺に現れる高位剣使は死人ばかりだってさ」
「《不死神》ホトの死者の軍勢か!厄介な」
奴がコレクションしている死体を使っているとなると……不味いな。
「懸念すべき事態が二つありますね」
ルシスにもどうやら思い当たるフシがあるらしい。
「二つ?どんなの?」
「ファラ、少しは考えなさい」
「アタシはそういうの苦手だから」
開き直っているファラをやれやれと言わんばかりにルシスが頭を振る。
気を取り直すようにルシスがわかりやすく説明を始めた。
「一つは帝国本来の高位剣使を温存している事。これをいつ投入するかでこの戦争が早期決着か、はたまた泥沼化するかの分かれめになる」
「ふむふむ、もう一つは?」
「ホトの死者の軍勢よ。おそらくヴェルガードが王都で戦っている高位剣使は予備戦力……つまりあまり失っても惜しくない駒。多分、ホトお気に入りの死体はまだ戦争に参加していない」
「ホトのお気に入りかぁー……。厄介な予感しかしないわー」
ファラに激しく同意する。
さぞや凶悪な布陣だろうな。
「それらがまだ姿を現さないということから、帝国は戦争の長期化を計画しているわね」
「長期化して何かメリットあるの?」
「『剣鬼』がこの二大国の戦争に参戦するのを待っているんでしょうね。一気に大戦を激化させる計算でしょ」
「うわ、最悪なシナリオじゃん」
「更にもう一つの懸念を追加だ」
「カイン、そんなものいらない」
遠慮するな、ファラ。
聞いて更にゲンナリするが、言っておかないと不測の事態に対応できないぞ。
「ホトは『神剣』の特性で死者を蘇らせれるから死体さえあれば兵には事欠かない。今までの戦いだけでも一万は補充できるだろう」
「しかしマスター、それはあまりあり得ない事かと」
「あぁ、可能性としては低いな」
「ん?何で何で?」
キーリカが心底不思議そうに聞いてくる。
「理由なんてシンプルなもんだ。ホトは強者の死体にしか興味がない。つまり雑魚の死体が一万あろうが蘇らせたりはしないって事。だが……完全にそうとは言い切れないから対策は練っておこう」
「ですね。物事に絶対はありませんから」
「しかしオレ達の予測が正しければこの戦いは長引くな……」
「はい、間違いなく年単位です」
やれやれ、この大戦が終わったら一気に老け込みそうだ。
あくまで生き延びればの話だが。
多分明日も投稿できるかも?




