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剣と龍と神  作者: カナメ
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六十二話

連続投稿♪

結局、オレはシキロのオッパイに触らなかった。

オレは誘惑に耐えたのだ!

だがら…。

だからさぁルシスさん、対戦が終わってもオレには優しくしてね?

剣向けないでね?

むしろよく我慢したと褒めてね?

……………………まぁおそらく無理だろうな、うん。



「鉄……どころか鋼の自制心ですね、カイン。私のオッパイに触らなかったのはキミが初めてだよ~」



「そりゃあ光栄だと返事すべきか?」



「う~ん……むしろ私の乙女心を傷付けたとして罰したい位だね」



「どんな乙女心だよ!今日のオレは踏んだり蹴ったりだな、おい!?」



くそぅ、オレだって男だぞ。

シキロの大きさ良し、形良しのオッパイを触りたいよ!

だが、触ったら最後だ。

龍に噛み……いや引き千切られる未来が確定だ。

それは嫌だ。

嫌すぎる。

鬱一歩手前まで行きそうなオレの思考を、しかし無駄に明るい声が打ち切る。



「さぁまだまだ勝負はこれからだよ美人さん!実体化ターン、来れ『気高き侍』!!」



おいおい、カード対戦初心者のオレでも手札を先にきることは不利だと学んだのに、フィフラはまったく気にもせずにカードを実体化しやがった。

少しは考えているのか?

あいつもしかして駆け引き苦手の感覚派か?

今度ばかりはオレもルシス同様に呆れてしまったが、フィフラの目はキラキラ輝いている。

まるでルシスの手の内を予測したかのように、期待満面の笑みと共に。



「………『血に酔う落武者』を実体化、ターンエンド」



フィフラが実体化した『気高き侍』はまさに清廉潔白を素でいく凛々しい色男だ。

刀を正眼に構え、油断なく敵を見据える。

対峙するルシスが実体化した『血に酔う落武者』はまさに真逆の存在ともいえた。

身につけた兜や鎧はボロボロで、武器である刀すら錆びている。

『気高き侍』と見比べるとあまりにもみすぼらしく、惨めだがシキロの解説によると実に良いカード選択らしい。

その理由を聞いたが見ていればわかると教えてもらえなかった。

いったいあれのどこがベストなカード選択なのか、オレは頭を捻るばかりだ。

だがそれも戦闘に突入したことにより瞬く間に氷解した。



「さぁ、戦闘突入!やったれ『気高き侍』!!」



フィフラの掛け声と同時に見目麗しい若侍が落武者に刀を振り下ろす!

刀で受ければあの錆びた刀では一撃も耐えきれずに折れる。かといってあんな兜や鎧では防具の役割を期待できるはずもない。

あれでどうやって勝つんだ!?

だがしかし落武者はオレの心配など些末だと言わんばかりに刀を口でくわえ、四足歩行で地を這うように若侍の攻撃を回避した。

あまりにも惨めで格好わるい回避方法。 しかし結果的に避けられるなら手段などどうでもいいとばかりに落武者は割り切って若侍の背後に回り込んだ。

だが若侍の反応は速い。

すぐさま後ろへと振り向き……目を潰された。



直接的な目潰しではなくあくまで間接的なものだが、これで数秒は暗闇の中。

戦いにおいてその数秒は千金以上の価値がある。

目潰し方法は至って簡単。

落武者は四足歩行で地面を這った際に土を握りしめていたのだ。

それを若侍が振り向きざまに投げつけ、視界を奪った。

すさまじく泥臭い戦い方だが、使えるものは何でも使う実戦的な動きだった。

卑怯?

汚い?

そんなもの敗者の言い分だ。

そこらの犬畜生に食わせてしまえ。

勝者が生き残りすべてを手にできるのだ。

富や名声、地位すらも。

内容など後でいくらでも書き換えられる。

大事なのは過程じゃない、結果だ。



落武者は言外にそう言わんばかりに行動していた。

迫る落武者の凶刃に、若侍はなすすべもなく斬殺され悔しそうな表情を浮かべ消滅した。

…カードなのに芸が細かいな。

結果、これによりフィフラのライフはもはや一割を残すのみ。

片やルシスのライフは無傷。

勝敗はおおかた決していた。

なのに……。



「すごいよ!さすが眼鏡美人さん、いいカード選択だよ!」



年相応にはしゃぐフィフラに。



「本当にすごいですね、ルシスさん。フィフラを相手にここまで圧倒的な立ち回りは今まで見たことありませんよ~」



まるで微笑ましい光景だと言わんばかりにニコニコ笑うシキロに。

オレは違和感しか感じない。

何だこれは?

まるで茶番劇だ。

まるで哀れな道化だ。

まるで出来の悪い喜劇を立ち回ってるかのような役者の気分だ。



「……勝つ気はあるのか、フィフラ?」



同じ事を感じたのだろう、ルシスが無表情でフィフラに問いかける。



「もちろん、私は勝つ気満々だよ」



「この状況下からでも?」



「もちろん。最後に勝つのは、私だよ」



自分の勝利を疑う事もなく、フィフラは断言する。



「さぁ、実体化ターンだよ!今までやられたカード達の無念を晴らしてね、『暗黒騎士』!」



懲りずにまたも先制する形で実体化したフィフラのカードは、全身を漆黒のフルプレートに身を包む騎士だった。

だがそれは幻とは思えないほどの禍々しいオーラを発散、黒いモヤのようなものが体の節々から溢れ出ている。

初心者であるオレでも理解できる。

アレはやばいと。



「『神官騎士×2』実体化、ターンエンド」



だがルシスは動じることなく(少なくとも表面上は)淡々とカードを実体化した。

実体化したカードはフィフラのカードとは真逆の純白の騎士二人。

これなら相討ちに終わっても残りライフが一割もないフィフラの負けが確定する。

やはりルシスの勝ちだ。

オレはそう思っていた。

『暗黒騎士』に手も足も出ずに完敗し、消滅する『神官騎士』を見るまでは。



「何が、起きた?」



茫然と呟くオレに、シキロが説明してくれた。

『槍斧の騎兵』と『気高き侍』を一方的に殺させる事で復讐の神を信仰する『暗黒騎士』のステータスパラメータを三倍化させたと。

仲間の無念を晴らすべく、『暗黒騎士』は敵を皆殺しにするのだと。



「更に『暗黒騎士』の特殊スキル《血河ある限り我は倒れず》を発動。プレイヤーたるフィフラのライフを回復させる。ちなみに回復量は対戦プレイヤーに与えたダメージを丸々奪う。つまり……」



「……ルシスのライフは現在、半分にまで減らされた」



「フィフラのライフはその分を回復して状況はイーブンに戻りましたね。うん、いい勝負です」



「さぁここから大逆転劇だよ!」とハシャグフィフラを、満足そうに見つめるシキロ。

これが、これこそが二人に余裕をもたせていた切り札か!

何て凶悪で何てタチの悪いコンボだ!

やけにあっさりと負けていたのはこの為かよ!

予想だにしてなかった展開にオレはただ焦った。

これでは負けてしまう。

セトに会うことも出来ず、ファラを助けに行けなくなる?



「まだ終わったわけではないぞフィフラ」



絶望しそうな状況下で、しかしルシスはいつも通り。

焦りなど微塵も感じさせない。



「アハハはっまだ勝つ気でいるんだね別嬪さん!けどさっきのカード展開はよくないよ~。勝負を焦って『神官騎士』を二人も実体化しちゃったからライフが半分も減ったんだよ~?一人だけならまだ眼鏡美人さんのライフが七割は残って有利なはずだったのに勝ちを焦ったね~」



カードの数を多く実体化した方が与えるダメージは確かに上がる。

しかしもし失敗してカードが消滅すれば受けるダメージもまた上がる。

数は力だが、反動もすさまじい。

まさにハイリスク・ハイリターンだ。



「ご託はいいから続行する。そちらは引き続き『暗黒騎士』を実体化するのか?」



「当然、実体化は『暗黒騎士』のまま。実体化ターンエンドだよ!」



「ならこちらの番だ。『享楽好きの騎士王』を実体化、ターンエンド」



「なに?」



「あらあら?」



まったく予期してなかったルシスの手札に、フィフラとシキロが思わず反応してしまったようだ。

まぁ……実体化したあのほろ酔い騎士王には何の期待も出来ないな。



「何を企んでんだ~眼鏡美人さんよ?あんなクソカードじゃモノの役に立たねえよ~?」



「戦闘突入」フィフラの問いなどルシスは華麗にスルーして有無も言わさず戦闘開始。

結果『暗黒騎士』の一撃を直撃、哀れほろ酔い騎士王は不様に地に倒れ伏し、消滅した。

ルシスのライフは今や残り一割。

対するフィフラはおよそ全快にまで回復していた。

つい数分前までの両者の立場は完全に入れ替わっていた。



「言わんこっちゃない。な~に?もしかして勝負はすでに捨てた?」



「さてどうかしらね?……ワタシも聞きたいんだけどフィフラ、まだ勝つ気でいるのかな?」



「へ?当たり前じゃん。むしろこのままいけば私のパーフェクト勝ちじゃん」



心底そう思い込んでいるフィフラに、ルシスが氷の笑みを浮かべた。

その笑みに、底知れない不安を感じたフィフラは咄嗟に身構えた。



「フィフラ?」



それを見ていないシキロは不思議そうに同僚の名を呼ぶ。

だがフィフラの耳には届いていない。



「じゃあ決着といきましょう」



「……ハッタリだ。私の『暗黒騎士』に死角はない!実体化は引き続き『暗黒騎士』!ターンエンド!!」



プレイヤーたるフィフラの気合いに応えるように、『暗黒騎士』がより一層、禍々しいオーラを撒き散らす。

だがルシスはその程度で気後れするような女ではない。

ましてや遊具の幻になど。



「『盾の勇者』を実体化、ターンエンド」



ルシスが最後の手札として実体化したのは体全部を覆うほどの巨大な盾を持つ、目付きの悪い若者だった。

ここにきてそのカード選択に、オレの心中は不安しかない。



「なんでそんな防御特化のカードを?焦って損したよ」



ルシスの実体化したカードに、フィフラは逆に不安を解消したようだ。

勝利を確信した笑みを浮かべている。

誰もがフィフラの勝ちだと思われるその瞬間に、叫び声はあがる。



「フィフラ、早くルシスのカードを消滅させなさい!!」



叫んだのは誰であろう、シキロだった。 何故そんなにお前が焦るんだ?

勝機はすでにフィフラがつかんでいるだろう。

フィフラ自身も、シキロの叫びに怪訝そうな表情を浮かべるのみだ。

状況を把握していないオレとフィフラはしかし、シキロの次の言葉ですべてを察した。



「貴女のライフがすごい勢いで減っているの!おそらく状態異常よ!速くルシスのカードを!!」



フィフラが自身のライフを確認すると確かにすごい勢いでライフが減少していた。

今、この瞬間にも。 何で?

どうして?

どうやって?

次々に沸き上がる疑問をフィフラは即座に一掃。

今はただ敵を葬らなければと思考を切り替えた。



「やれ『暗黒騎士』!!全力で敵を潰せ!!!」



まさに疾風の如く、『暗黒騎士』はルシスのカードへと襲いかかる。

三倍強化の『暗黒騎士』の一撃は確かに驚異だ。

だが忘れてはいけない。

ルシスが実体化したカードは防御に特化した『盾の勇者』。いくら『暗黒騎士』が強力とはいえ、そう簡単には突破させない。



「速く!早く!そんな盾ごと斬り捨てろ!!」



一秒ごとに減っていくライフに焦るフィフラを、ルシスは笑った。



「確かに見物だな。勝者の余裕さが一転、焦る様子は中々に滑稽だ」



「ち、ちきしょう!!!さっさと片付けろよ『暗黒騎士』!!!」



だが『暗黒騎士』は鉄壁ともいえる『盾の勇者』の防御を打ち砕けずにいた。

あともう少し、あともう少しというのに……その少しが遥か遠くに感じた。

そして遂に、その時は来た。



「あ!ア?あア……そんな…………バカなことって…」



フィフラの残りライフはゼロとなり、勝敗は決して。

プレイヤーのライフがゼロとなった事で、『暗黒騎士』もその役目を終えて消滅。

ルシスと『盾の勇者』が敗者たる崩れ落ちたフィフラを見下ろす。

カード対戦はルシスの勝利で幕を閉じた。

次話はカインが試練の時。

対戦相手はシキロ。 その対戦内容は?

まだ秘密です。

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