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剣と龍と神  作者: カナメ
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五十一話

作者の語彙が貧弱で表現下手にちょっと自己嫌悪です(汗)

オラに力を!

狼王騎士団には二つの派閥が存在する。



一つは騎士団長派。アースガルズ王国の民こそが一番優れているという選民意識が強い団長が中心のグループ。



もう一つは斬士部隊・総隊長のネモ派。本人は派閥に興味はないが団長の選民意識に反目、もしくはネモをないがしろにするのを良しとしない者達が集まったグループである。



前者は主に騎士団全体の半数以上を占め、後者は斬士部隊が中心になり形成されている。

王国内では常々、狼王騎士団団長にはネモがふさわしいのではないかという意見があり、団長派はそれに猛反発している。

だがその意見が完全になくなる事はなかった。

王国でも有数の権力、発言力をもつ者達の意見だからである。

その事も含めて騎士団長はネモを毛嫌いしており、二人の仲の溝は深まるばかりであった。

ネモ本人は騎士団長のことより女王にしか興味がないので相手にもしてないが。

だからこそと言うべきか、騎士団長はネモに嫌がらせをしてくる。

今回の遠征においても自己満足の為にそれは仕掛けられた。



「……何で剣精の大群相手に出撃許可されるこちらの兵が五百しか許されないんですか!?」



叫ぶ金髪女性は斬士部隊に十人しかいない分隊長の一人だ。

奇抜な服装、珍妙な髪型、変人ともいえる思考をもつネモを上司として尊敬する……ある意味、王国では珍しいタイプの人間である。

そんな女分隊長が怒っている理由は剣精討伐に許可された動員兵力の制限だった。



「落ち着けクリス。ほら水でも飲むか?」



「ネモ様!何でそんなに落ち着いてられるんですか!あのクソ団長が……!毎回毎回、下らないマネしくさりやがって!!…………殺してきていいですか?」



物騒な発言をする部下にしかしネモは笑いながら



「駄目だ。騎士団長は女王陛下の大事な配下だぞ。勝手に殺したら女王陛下が困るだろ?それとクリス、女のお前がそんな汚い言葉遣いはするな、嫁の貰い手がなくなるぞ」



それを抑止する。



「しかし……!たったの五百では総隊長直属部隊の半分しか動かせません!!……あと嫁云々は婿養子をとる予定なのでご安心を」



斬士部隊は総数六千を超える大所帯である。

各十人の分隊長が五百人を指揮。

一千の兵がネモ直属部隊。

残りは予備兵力で構成されている。

つまり、今回の剣精討伐にネモは一人分の分隊長兵力しか動かせないという、まぁいつもの騎士団長の悪意がこれでもかとぶつけられた結果だった。

この事を、恐らくは女王自身は知らないだろうとネモ個人はそう思っていた。

……あの宰相は知っていても放置しているかもしれないが。



「きっと私だったらこれで十分と上層部も判断した結果だ。元々前回の南部遠征で直属部隊にはよく働いてもらったからな、今回の遠征には連れていく気はなかったから、隊員の休暇申請の手間が省けてちょうどよかった」



しかし嫌がらせをあまり気にもしないネモにはその効果は低かった。

むしろ仕掛けられた本人より、部下の方が効果は絶大だった。

中でも、斬士隊でネモを一番尊敬しているクリスには特に。



「ネモ様、騎士団長を敵と認識してください。排除せよと命令してくだされば今すぐにでも殺せます。後始末の心配は無用です、根回しは完璧です」



「…特に誰とそれを調整したかは聞かないが、そんな命令を下す予定はないぞ」



「ネモ様!」



身を乗り出してくる部下をネモが手をあげて制止する。



「ただし、もし万が一でも女王陛下に対して不利益な言動、行動をしたならそのかぎりではない。だから、その根回しは無駄ではないぞクリス」



「……今回の遠征に対する嫌がらせは女王陛下に不利益では?」



何が何でもネモにとっては邪魔にしかならない騎士団長を始末したいクリスは粘る。



「女王陛下に対して、というよりは私個人にとっては、だな。大丈夫、剣精なんて物の数じゃない。我々、斬士部隊にとってはな」



もはやこれ以上の説得は無意味だと理解したクリスもようやく引き下がる。



「ならば今回の遠征には不肖このクリスとその部隊がお供します!是非とも許可を!!」



だがこれだけは譲れないとばかりに直談判するクリスの願いを、ネモが拒否する労力は無駄だと早々に悟り、こうして派遣部隊は決定した。
















遠征から早数日。

出会った剣精を片っ端から討伐していくネモ達は、とある場所で二人の傭兵らしき男女を助けた。

男の方は赤い髪に上半身を完全に覆った鎧を身につけた中肉中背の剣使。

女の方は黒髪に軽装装備の小柄な剣使。ネモは一目見て二人の剣位がどれほどかに見当をつけた。



(女はC級、男はA級ってところか?)



女は過酷な状況には慣れていないせいか憔悴しょうすいしきっているが、男は幾分か余裕がありそうだ。

恐らくは死線の一つや二つは潜り抜けてきた経験があるのだろう。

若い外見に反して、まとう雰囲気はベテラン傭兵の域だ。



「ネモ様、この周辺の剣精は掃討終了です」



部下の報告に頷きつつ、周囲警戒を引き続き指示する。



「さて、ご両人に怪我はないか?」



「お、おかげさまで……」



「助かりました」



女は恐縮しながら、男はどこか一線を引いたようにそれぞれ礼を言う。



(何か警戒させるような事をしたか?)



しかしネモがその理由に思い当たることはなかった。




















あれから何故オレとラスが二人で剣精に追われていたかの理由を説明した。

ネモはその説明に矛盾したものはないと判断したのか、オレとラスを丁重に保護してくれた。



……オレとネモに接点はない。

オレはかつて狼王騎士団に所属していたが、それは俗にいう団長派という派閥に属していたからだ。エリート部隊である斬士部隊とは一切の接触はなし。

だが斬士部隊の主要メンバーは知っている。

誰もが一騎当千の猛者で有名人だ。

だからネモは勿論のこと、斬士部隊の誰もがたかが一騎士に過ぎなかったオレを知らなくとも当然なのだ。

同じ騎士団とはいえ斬士部隊は独立した組織なのだから無理もないが。

だからオレは安堵していた。

ここにはオレの正体を知る者はいないと。



「……貴方、狼王騎士団所属の騎士よね?」



だがその希望はその一言で打ち砕かれた。

オレにとっては死の宣言とも言える指摘をしたのは斬士部隊一番隊長のクリス。総隊長ネモの右腕と評判の才女。

そんな彼女が何故一介の騎士に過ぎないオレを知っているんだ!?



「知っている顔か、クリス?」



同様の疑問をネモが聞くのは必然。



「はい。直接話したことはありませんが、確か騎士団に数ある一つの中隊の副隊長だったと記憶しています」



何でそこまで知っているんだ!

オレはそんな目立った戦果もあげてなければ悪い事もしてないぞ!



「詳しいな、クリス」



「…ネモ様、この男と同じ部隊にいたもう一人の副隊長の件で調べたからですよ。お忘れですか、フレイの事を?」



「フレイ?…………あぁ、B級って申告してたが実は高位剣使なんじゃないかと疑っていた男の件か!すっかり忘れてた」



フレイのせいかよ!あの野郎~!

オレの平穏の時をぶち壊しやがって!



「その本人は別件の剣精討伐以降は行方不明です。ついでに、そこにいる男……カインもそうでした」



「へぇ……生きているという事は敵前逃亡か?それとも帰還義務を放棄した脱走兵か?どちらでもいいが」



どちらでもいい。

その言葉はさほど興味がないからこそ出る言葉だ。

つまりはオレに対してそこまで興味がない、どうでもいい存在。

どこへでも好きに行けって意味かな?



「女王陛下の許可なく他国に出たのだろう?処断対象に過ぎんな」



…………ですよね~。やっばりそうなりますよね~。

噂には聞いていたが女王至上主義は本当らしい。

女王の意思に反する者には一切の容赦がない狂信者が剣を抜く。

部下である斬士部隊の隊員は誰も動かない。

それはネモに対する絶対の信頼があるからこそ。

そして誰であろうとネモからは逃げられない事を知っているからだろう。



「え?あ、あの?」



ただ一人この状況についていけてないラスを、クリスが問答無用に拘束した。



「……あー、その女性はオレとは無関係だから解放してくれないか?」



「貴様を処断した後にな」



「オレが死ななかったらどうするんだ?」



オレのせいで一人の無関係な女が殺されては目覚めが悪いんだがなぁ。



「ならさっさと死ね」



一気に間合いをつめたネモは、剣をオレの頭を叩き割らんと振り下ろすが、それを紙一重で回避!

さっすがS級剣使。

すげぇ斬撃だ。



「ほぅ?」



自身の斬撃を避けられたことに、ネモは少々驚いてくれた様子だ。



「クリス、この男の詳細な情報はあるか?」



どうやらオレを少しは骨のある相手と認識してくれたらしい。

野郎に興味をもたれても嬉しくはないがな。



「はい。名はカイン、剣位はC級、聖剣の使い手です。戦果の方は特に目立ったものはありませんでした」



実に正確な情報だ。ただし、内容が少しばかり古いが。



「ふむ?それにしては無駄のない動きだし、感じる魔素量は高位なみだな」



「この情報は行方不明になる前ですから……四ヶ月ほど前の情報です」



「この短期間で二つも剣位が上がった?前例のない話だが実例は初めて見たぞ」



いやオレはまだB級聖剣使なんだが。

神剣を手にすれば別だが、ファラとルシスがいないとオレの実力は未だ大したもんじゃないし。



「だがそんなものはどうでもいい。女王陛下の意思に逆らう輩には死あるのみ!」



狂信者ネモの斬撃、その一つ一つが必殺となりオレに襲いかかる。

避けて、防ぎ、また避ける。

その鋭い一撃一撃にオレは冷や汗が止まらない!

ファラやレラフにも劣らない剣捌きにオレはひたすらに防戦一方の展開だ。

正直、数々の死闘の経験がなければいつ斬り殺されても不思議ではないほどにネモは強い!

下から振り上げられる剣を回避し、ネモとの間合いをつめようとした瞬間、上から即座に振り下ろされる死の刃。

それを命からがらに避ける。

なんて速い切り返しだよ!

こちらから仕掛ける隙なんて欠片もないぞ。

ネモが更に仕掛けようと間合いを縮めんとした時、パキッと何か乾いた音が耳に入る。

直後に「ガハッ!」と誰かの叫び声。



オレとネモはただ事ならぬ気配に油断なく周囲を見渡す。

そしてそれが視界に入った。

そこには手にした剣でクリスを貫いたラスの姿。

ずるりと崩れ落ちるクリスの血は肺の中にも入ったのか苦し気に咳き込んでいる。

慌ててクリスに駆け寄ろうとする斬士部隊の隊員をしかしネモは



「その場から動くな!周囲を警戒しろ!!」



非情とも言える指示を下す。

しかしその真意を汲み取れない隊員ではなかった。

周囲にはいつの間に囲んだのか、無数の殺気をもらす剣精がいた。

さすが王国随一のエリート部隊だ、冷静に方陣を組んで迎撃態勢を整えている。



「ちっ、いつの間に囲まれたんだ?」



ネモが苛立ちながら剣精を睨む。

ちなみにオレはラスを見つめていた。

その目は虚ろで右腕は変な方向に折れ曲がっている。

多分、あの乾いた音はクリスの拘束から逃れる為に折れるのを覚悟で無理矢理外したのだろう。

しかし痛がる素振りは微塵もないし、そもそも感情の機微が見られない。



「操られている?」



幻惑剣技か?

だが誰の?



「……予定外の人物がいますね」



オレの呟きに応えるように、どこかで見たことのある金髪の男がいた。



「あんたは……」



確かオレに候補者と告げにきたメッセンジャーだった男だ。相変わらず無表情の男だが、あの時とは違いどこか困惑しているようにも思える。



「何故ここに?」



「……成り行きだな」



メッセンジャーの問いに、事実その通りなのでそんな答えしか返せない。



「参りましたねぇ、しかし優先すべきはトゥアラ様の命令ですから……計画の邪魔をする者は始末せよと仰せつかっております。ですからカイン様、この人形師がお相手いたします。お覚悟を」



かつてのメッセンジャーだった男……人形師と名乗る存在は静かに命令を下す。人間の人形師が、周囲を取り囲む剣精に



「皆殺しにしろ」



信じられない事に剣精がその命令に従うように一斉にこちらへと襲いかかる!

詳しい状況把握は出来ないが、今は応戦以外に選択肢はない。



「ちっ、一旦休戦だ」



「妥当な判断だね」



ネモの提案にオレは即座に肯定。

敵の敵は味方だ。

それが例え一時的なものでも。



「さっさと片付けてやる!」



S級剣使が吠える。

睨む視線の先には指揮官であろう人形師!

あっちこっちに場面が移ります。

次はファラ&ルシスサイド予定です。

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