二十四話
剣神つえ~
唯一剣技。
剣神にのみ使える、まさに《オリジナル》の剣技はそれぞれの特性があると聞く。
あくまでウワサ程度にしか過ぎない情報も、なるほどたまには役に立つ。
実際、目の前で見た感想はこれ現実か?と疑いたくなる。
それほどにすさまじかった。
ホトが展開した剣技は完全防御。
ルシスの放った百以上の魔素の塊を、ことごとく相殺。
だがホトの剣技の範囲外は地面は抉れ、巨木は薙ぎ倒され、一帯が氷原と化した。
互いの力量がいまさっきの一撃で理解できたのか、ルシスは表情を歪め、ホトは笑った。
多分だが、ルシスはその予想以上の実力に。
ホトはさすが剣龍だといわんばかりに。先程の両者の表情がそう語っていた。
それからはまるで嵐の如く剣技の応酬が始まり、数分と経たず地形が荒れ果てた。
……ここら一帯が樹海から荒地になったせいで日の光が眩しいぜ!
現実逃避からとりあえず帰還すると、さすがに両者も疲れたのか小休止…ならぬ膠着した状況に落ち着いてる。
まあお互いが放つ剣技一撃一撃が、小さい城なら木っ端微塵にできる魔素量を消費してるのだから当然か。
だがまだ互いに本気ではないだろう。
攻撃は専らルシスだけで、ファラはオレを守る結界以外はさほど積極的ではない。
ホトの方もあまり本気を出しているとは思えない。
様子見、小手調べ。だがそれだけでこの有り様。
両者が完全に本気になったら樹海ごとなくなりそうだ…大袈裟でもなく誇張でもなくな。
『くっさすがは我々の同族の力だ!決めきれんとは…!』
ルシスが忌々しげにホトを睨む。
ルシスやファラと同じ剣龍の力…そしてその剣龍を倒した実力…………うん、化物だな。
「素晴らしいな、その強さ。どんな特性を秘めているのか非常に気になる」
『貴様が知る事はない』
「…まぁ特性を使いこなす者がいなければ、宝の持ち腐れ。屈服させてから確認するさ」
『誰が貴様なんぞに、死んでもごめんだ』
「嫌われたもんだ」
いやいや、今更だな。
裏切ったのお前だろ!
オレもある意味巻き込まれた被害者ですから!
「仕方ない、さっさと終わらせか」
ホトが無造作に剣を投げた。
自然とこの場にいる面々の視線が、地面に突き刺さる神剣に集まる。
「召喚剣技、死獅牙」
剣が内包する魔素を溢れんばかりに放出!
徐々にだがその形を変えていく。
これはただの召喚剣技じゃない、溢れだす魔素はまるで…剣龍並!
ホトが召喚した存在は剣を依代にオレの前にその姿を現す。
その姿形は獅子に似た何か。だが決して獅子などではない。
体格は巨体でおよそ二十メートル、背中には蝙蝠の様な翼、口からはみ出した四本の牙は、まるでありとあらゆる存在を噛み砕かんとする異様さを感じさせた。
『こ、…これがかつての……我々の同胞の姿か!』
ルシスの悲痛な叫びにホトは凄惨な笑みを浮かべる。
「そうだ。かつての剣龍のままもよかったが、ワタクシがさらに改変した超大作だ!すごいだろ!」
『…人間の悪意はこれほどか』
人間を知るファラすらも怒気を隠せない。
その姿は醜悪につきる。
ホトの趣味の悪さがよく伺えるな。
『ガアアァ!』
死を体現した獅子が咆哮する!
剣龍であるファラ達を敵と認識したらしい。
背中の翼を羽ばたかせ、フワリとその巨体を浮かべる。
…すごい光景だ。
剣龍とまとめて呼称しているだけで、その姿形は様々なのか?ファラやルシスの双頭の龍もそうだが。さすがのホトも原型からは改変できないはず。
せいぜいが手を加えるくらいだと推考する。
『グウウウ!』
『強制的に屈服され自我さえ消されたか…危険だな、剣神の存在は。…………世界の管理者の役目、まだ人間に託すは無謀か』
『グオオオー!!』
『…許せ、ガルドゥーク』
二体の剣龍がぶつかり合う!
次回予告、怪獣大戦争!…と言っても差し支えないかも。




