二十五話
民家〇全先生の秀逸なセンスに激しく嫉妬する今日この頃です。
グゥパア…
そんな擬態語が聞こえそうな動作に身震いする。
その巨体に見劣りしない牙を生やした口が、大きく開かれたのは噛みつくわけでも、食事の為でもない。
ある意味で必殺の姿勢。
魔素が展開。
『属性剣技、嵐丸』
今まで吼えていただけの獅子もどきが流暢に詠唱、発動する!
『属性剣技、炎鎧圏』
ファラも遅れず対応。
獅子もどきから放たれた黒い球体はさほど大きくもない。
見た目は五十センチくらいか?
放つ巨体に比べてあまりに小さい、がファラが展開した魔素の鎧に触れた瞬間、爆砕!
その見た目と反した威力になるほど、膨大な量の魔素がつめこまれたせいかと納得。
だからこそファラも魔素を一点集中型の剣技を発動したのか。
桁外れな魔素がぶつかり合った瞬間、大気が震えた。
すさまじい振動に、オレのヒザもガクガク震えたが何とかこらえる。
まさに神話の戦いを繰り広げる二体の剣龍に言葉も出ない。
オレって何気に時代の変移期に立ち会ってる?
新たな管理者と、抗う事を諦めない最後の旧管理者…自分達が倒れれば、完全に新たな管理者達が世界のバランスを崩し、このロードギアを疲弊させる…それをさせまいと戦う龍が神殺しを為し遂げざるをえない瞬間に。
『破壊剣技、牙乱』
『属性剣技、焔塞』
再度の膨大な魔素と魔素の衝突!
だがまだ終わらない!
『拘束剣技、天鎖』
獅子もどきとファラの剣技がぶつかり合う直後に時間差でルシスの剣技発動!
獅子もどきの四方八方から魔素を展開、そこから鎖が飛び出しその身を束縛!
『破壊剣技、合衝縮重』
更に剣技発動!
追加された剣技は今までにない密度の魔素量を獅子もどきにぶつける!!
あの魔素量からしてファラとルシス、二人分の魔素を一つに合わせたのだろう、今まで発動してきた剣技の魔素量が倍以上違う。
あれなら城どころか都市の二つ三つは余裕で消し飛ばせるはずだ。
そして、そんなとんでもない剣技を直撃した獅子もどきが無事であるはずがない。
悲鳴を上げるヒマすらなく、身にまとう魔素が分散していき、その形は剣へと戻る。
空中から落ちていく神剣は、持ち主たるホトの足元に大地へ突き立つ!
それをホトは、まだ笑顔を浮かべて空を仰ぎ見る。
視線の先は勿論ファラ達。
「さすがは剣龍を率いた龍神のご息女!素晴らしい魔素量に圧倒的な剣技をお持ちのようだ!!」
……とんでもない発言が飛び出したが今更もう驚きはない。ごめん、ウソ。
でも何か納得できる。
ファラ達が龍神の子供と言われても自然にな。
『ガルドゥークの記憶から読み取ったか…つくづく下衆な輩だ、不快すぎる』
「ハハハッ、剣神に品性を求めるのはムダだ。ワタクシを含め、自身の事にしか興味のない連中ばかりだ。……むしろ、そういう人格だからこそ、剣神になれたと言っても過言じゃない。特に……」
ホトがオレの方へ視線を向ける。
へ?
何でその流れでオレをみる?
「候補者もその傾向が強い。そういう人材をワタクシ達が選んでいるからな」
…………否定は、出来ない。
オレはオレ自身の為にアベルを追ってここまで来たのだから。
『カインをお前達と一緒にするな』
だからこそファラが発したその言葉を、…………オレは言葉に出来ない感情が、心の中を渦巻いた。
「随分とそこの候補者を買い被っているなぁ。思い入れでも生じたか?」
『破壊剣技、千針』
返事はルシスが剣技を発動し、その口を強引に閉じさせた。
ホトの全身を貫く無数の魔の針は避ける時間を与えず、その場に倒れることすら許さず刺し貫いた。
「す、すごい」
剣神に反応すらさせないなんてどんな剣技だよ。
「いやいや、瞬殺されるとは…何が龍の逆鱗に触れたかな?」
全身を刺し貫かれたままのホトが、何事もないように喋っている。あれで死んでないのかよ!?
『貴様の存在自体がだ』
「手厳しい」
そしてそれを当然のように対応するファラ達。
この場でそんな異常な状況に追いつけないのはオレだけだ。
「しかし全然驚いてないな?…やっぱり先に剣龍を召喚したせいか、タネがばれたのは」
『あぁ、剣龍全体の特性は把握している。無論、ガルドゥークも』
「なるほど、ならば改めて自己紹介を。剣神が一人、《不死神》(ふしがみ)のホトだ、よろしく」
魔素の針を何事もなかったかの様に全て砕き散らし、最悪の人格と特性をもった剣神が死を祝福するように微笑んだ…
電子辞書が欲しい。えっ?買えば?ごもっともです。




