二十二話
二人で一つ、双頭の龍。強いわけだ。
これがヴェルジュ樹海の主。
これが…剣龍。
あまりの出来事にただボーゼンとするしかない。
ファラが剣龍?
何の冗談だ?
『おや、あまりにも驚きすぎて混乱してるか?』
龍形態になってもファラの声だ。
ならこれが本当にファラ?
『ファラ、説明してやれ。このまま殺すにしても後味が悪すぎる』
『騙す気はサラサラなかったんだがなぁ』
『私としても予想外だったよ。先日帰ってきたと思ったら、次は候補者と一緒に来るだと?』
『成り行きでね』
『…相変わらず自由奔放な奴だ』
『さてさてお喋りはここまでに。カインがおいてけぼりをくらってるからな』
いやもうオレはこの際ムシして話しを続けてくれ。
『さてどこから話すべきか?』
…聞きたい事は聞いておくか。
どうせ死ぬにしても、何も知らないよりは知ってからの方がすっきり死ねる。
開き直ってオレはその場に座った。
「まずは出会いからかな?あれは偶然か?」
『勿論。アタシは人間の時は傭兵ギルドに所属しているからな。あの時はちゃんと仕事だった』
「じゃあオレが候補者と知ったのもオレと同時に?」
『あぁ、あれにはアタシもびっくりした。まさかこんなチンチクリンが候補者だとはね、しかも最後の』
「チンチクリンは余計だ。最後の候補者っていうのは?」
『文字通りの意味だ。剣神になれる候補者の最後。カインが百人目だ』
最後?
百人目?
意味がわからん。
「その最後って言うのは?オレが死んだら何が起きるんだ?」
『何も起きない。むしろカインが剣神になれば起きる』
「……どういう意味だ?」
『世界の管理者という立場にあった龍だけど、かつてあった大戦により、アタシ達の総数は六体と大幅に減少した。そしてその生き残った六体も、既にアタシ達を残して全員死んだ…と言うと語弊があるな。神剣という形に変わったと言えばいいのか。とにかく、剣龍を倒した剣神という新たな管理者が誕生した。剣神が六人揃う。つまりは六体全ての剣龍が死んだ時、世界の管理者は剣神へと完全に交代する』
……つまりは完全に交代すると何かが起きる?
『別にアタシ達も永く生きてきたからさほど命は惜しくないんだけど……世界の管理者が交代すると世界規模で戦争が起きるんだよ、困った事に。実際、アタシ達が前の管理者と交代した時に戦争が起きた。知ってるか?二千年前の鬼神戦争を?』
オレは頷く。
詳しい内容までは知らないが、かつて世界全土を巻き込んだ人外同士の大戦。
その戦いは天地全てを切り裂いたと伝わる伝説だ。
『今じゃあ人間達にとってはおとぎ話だけど、アタシ達にとってはまるで昨日のように鮮明に思い出せる。……鬼神やそれに率いられた数万の剣鬼。殺されていった同族。当時、アタシ達を率いた龍神が鬼神と相討ちにならなかったら、この世界の未来も変わってたかもな』
「つまり、剣神が揃うとそれと同規模の大戦が?」
『さて、それは何とも。ただ当時は最大勢力が争い合ったからな……今回だと人間同士が滅ぶまで戦うかもな』
「……それを回避しようとしているのか、ファラ達は?」
『腐ってもまだ世界の管理者だからな。この世界ロードギアが荒んでいくのは忍びない。人間はどうでもいいがな』
ははっ素直な事で。ファラらしいが。
『だからこそ剣神達に条件を出した。当時は一体の剣龍が討たれ、剣神は一人だったが……いずれは増えていくと予想できたしな』
「その条件が候補者か?」
『そうだ。龍一体につき百人。それら全てを返り討ちにすれば我々自身を剣神として昇華させるとな。だが……他の同族達は屈服され、神剣として剣神に使われている。ほぼ隷属化されていると同然だ』
ファラが忌々しそうに唸る。
よほど腹に据えかねているらしい。
『…アタシ達が剣神に昇華すれば、不完全な形で世界の管理者は交代する。つまり世界規模の戦争は起きないって事だ。理解したか?』
頷く。
なるほど、世界の為にファラとルシスは動いていたのか…。参ったね、オレ死ぬしかないじゃん。
ただ疑問も残る。
「何でオレに修行を?」
『あわよくば剣神とぶつける為だ。カインはどうやら多少の因縁があったみたいだからな』
「打算かよ」
『それくらいはな。人間の知謀策謀には負けるがな』
「……ならあの、オレの潜在能力を解放する為の行為もか?」
だとしたらヘコむが覚悟はしておこう。ファラならあっさり肯定するかも。
……やべ、泣きそう。
だがオレの言葉に一番反応したのはルシスだった。
『ファラ、今のは本当か!?』
『あ~うん、まあ。本当』
『何をしてるんだ、お前は?どうせ殺す存在だというのに、たった一度の秘術を……』
『まあルシスの分も残ってるしいいだろ』
『そういう問題か?』
うん、ルシスの反応は至極マトモだ。
「で、あれはどういう意味が……」
「おや?まだ殺し合ってないんですか?」
オレ達の会話に割り込む第三者が現れた。
大事な場面で誰だよ!
オレは乱入者を睨みつけた!
男の手には人間?の死体らしきもの。
何だ、あれ?
ついにカインが剣神と……




