二十一話
多数のアクセスありがとうございます。作者は尻尾をふって喜んでござる。尻尾はないけどね。
叫ぶ!
「赤帝刃!」
愛剣を手にルシスへ猛接近!
だがそれをただ見逃す優しさは無論、ない。
ルシスの双刀がオレの体を切り刻まんとする!
何とか懸命に抵抗し致命傷はまぬがれたが、全身傷だらけ。たった一回の接触でオレは満身創痍だ。
おいおい、接近戦主体のオレがこの様かよ。
こりゃあ格がちがうか。
チラッとファラの状態を確認。
倒れてはいるが呼吸はしているな。
「ファラ!」
「…………」
くそっ気絶してるのか!
オレがルシス相手に勝てるとは思えない。
なら最善策は……ファラを連れて逃げるしかない。
ファラを置いていくなんて案は即却下だ!
「……置いて逃げれば助かるかもな」
オレの心を見透かすようなセリフだな。
使い古されてて笑えるわ、ハハハッ。
「冗談、そんな気サラサラねぇよ!」
強化剣技を最大限使い、斬りかかる!
全力で使い続けているので魔素の消耗も激しいが止まれるか!!
数度斬り合い、その度にオレの体が傷ついていく。
駄目だ、ファラの様にまだ動けてない!
「オオオオオォ!!」
もっと速く!
無駄な動きを削れ!
ゼロコンマ一秒でも速く!
一ミリ単位でもいいから無駄をなくせ!
だがルシスはオレの剣撃をその双刀で鮮やかに回避し、捌き、隙を逃さずカウンター。
攻撃にまわろうが防御に専念しようがオレの傷は増え続けていく。
ルシスの強さにオレは嫉妬を隠せない。
何でそんなに強いんだよ!
何でそんなに速いんだよ!
何でそんなに無駄がないんだよ!
不意にオレの体勢が崩れる。
ルシスに防御された際に重心をズラされた!?
後悔は遅い。
ルシスの双刀がオレの肩を貫く。
「ガアアァ!!?」
激痛!
叫んだ直後に腹部に衝撃!!
蹴り飛ばされたと理解したのは背中を巨木に叩きつけられ地面に倒れ伏してからの事。
「ガ……アァ…」
容赦ないその威力に、胃の内容物が吐き出される。
くそっ強化剣技で部分硬化してなかったら、内臓つぶされてたぞ!
「まだ足掻くか?」
ルシスがいつの間にかオレの前にいた。
その冷たく見下ろす視線をオレは真っ向から見上げる。
「当たり前だ…足掻いて足掻いて足掻きまくってやる」
「……」
呆れているのか、ルシスはオレをまるで珍獣でも見るかの様な目をしてる。
「今までにない類いの候補者だな。大抵は圧倒的実力差を前にすれば抵抗をやめるか、逃げるかだ」
「やっと確信できたよ……あんたが剣龍か。随分と可愛らしい姿だな」
人間追いつめられても軽口はたたけるもんだな。
まあ相手はクスリとも笑わんが。
「今更だな」
全くだ。
「剣龍なのに剣獣とも契約してるのか?」
ルシスの両手に握られた双刀を見つめる。
「質問が多いな」
ルシスの周囲の気温が一気に低下。
そろそろ死刑タイムか。
アベルに会う前に剣龍と出会ったのが運のつき。納得はできんが。
ルシスが刀を振り上げる。
これがギロチンを落とされる前の人間の感覚か。
まあオレとは違って絶望しかないと思うが。
オレ?
諦めが悪いんだよ!
ファラが戦う前から密かに溜めに溜めてた魔素。
体の外側にでないように苦心したり、戦闘とは別の魔素を用意したりと、大変だったがそれも全てはこの時の為!
さあ、一気に解き放つぞ愛剣!!
コレを使う際の代価は決まっている。
剣位が上がっても恐らく同じ代価に違いない。
まあ実際使うのは初めてだから威力は知らんが、オレが使える剣技ではこれが最強の威力ならやるしかない。
つくづく角アリの時に使わなくてよかったよ。
発動だ、赤帝刃。
振り下ろされる刃を左手で受け止める。溜めていた魔素はオレのありったけを込めたおかげか、硬化した左手は斬られる事なく無事だ。
まあ斬られていても同じだが。
「なに?」
ルシスが予想外だと言わんばかりの表情だが、驚くのはこれからだ。
もはや死を待つだけの候補者が、抜き身の刃を受け止めた事に、多少の驚きはあった。
だがその程度ならまだ可愛らしいものだ。
問題は、刃を掴んだ候補者の左手から溢れんばかりの魔素だ。
しかもそれが左手だけに集中している。
これでは……
まさか!?
自分の予想通りだと気付いたのは候補者が笑うと同時。
「外法剣技、赤腕」
候補者の左腕が赤く輝き、魔素が暴発!!
視界は赤一色に染まる!!!
オレの腕をもってけ。
ただしタダではやらんがな。
強がる意味も込めてニヤリとルシスに笑いかけてやった。
「外法剣技、赤腕」
全ての魔素が、集中している左腕を犠牲に暴発させるまさに外法。
暴発する莫大な魔素は、術者の前方に位置するありとあらゆる物体を、超々高熱により消滅させる。
もちろん剣龍ならば耐えきるだろうがタダでは済まないはずだ。
轟音と共に暗闇をも照らす赤い光が景色を一変させた。
焼け落ちる巨木、焦げた地面。魔素を解放した場は赤黒く変色し、光を遮っていた巨木がその部分だけなくなった事で光が射し込む。
その光の下、全身に火傷を負ったルシスがいた。メガネはもちろん、服すら跡形もない。
そのケガは痛々しいが原型を留めているあたりさすがと賞賛するべきか。
ルシスの姿を確認すると同時に、黒く炭化したオレの左腕がボロボロと崩れていく。
骨も残さず、か。
外法剣技は痛みを感じさせないところだけは評価できるな。あと威力。
「……とんでもない奥の手だな」
肉の焼ける臭い……
全身が火傷を負っているのに、ルシスは痛がる素振りはない。
痛覚を遮断してるのか?
「…おかげで左腕がなくなったし、魔素も空っぽだ」
跡形もない左腕を見せるように左肩を上げる。
「…いいのか早々に弱味をさらして?私はまだ屈服してないぞ」
ったくこの美人は。オレが気付いてないとでも思ってるのか?
「オレの負けだよ。本気も出してないあんたを、あの剣技で倒せなかった時点でな」
「…気付いてたのか」
「あぁ、理由は知らんがね」
「なるほど…冥土の土産に私の本来の姿を見るか?」
「あぁ、是非とも。あの世で自慢できる」
本心からそう思える。
剣龍の姿など拝める機会は滅多にない。
「まあ正確に言えば私たちなんだが……ファラ、いい加減起きろ」
ルシスが呼んだ名前に、オレは耳を疑った。
何でルシスが?
「やれやれ、ようやくか。出来るならあのまま決着まで寝転がっていたかったんだが……」
倒れていたファラが何事もなく起き上がる。
怪我もなく、ピンピンしている。
ノンキに背伸びすらしている様子を、オレは口をあんぐりさせて見つめるだけだ。
「な、なんで?」
確かにルシスの剣技で全身を貫かれたはずじゃあ……
「あんなに時間があれば、あの程度の怪我など自己再生で完治だ」
じ、自己再生って……
「さて、ルシスの体も自己再生してはいるけど、時間がかかるな。カインとの約束もあるし本来の姿を見せよう、ルシス」
「あぁ、異論はない」
そして二人の姿が光の粒子になり、二つが一つに合わさっていく。
光の量はその面積を急激に増大させる。
同時に二人の魔素だと思われる量も。
そして、その本来の姿をオレの前に現した。
『この姿が我々本来の姿だ、候補者よ』
『この姿では初めましてだな、カイン』
そこには双頭の剣龍がオレを見下ろしていた……
ファラの正体を解禁でござる!人間よりも人間らしいのは、しょっちゅう旅をして人間と触れ合っているからです。ファラも最初の頃は苦労したとかしないとか?




