二十・五話
剣神がチートすぎる。
爆発により少女に斬りかかった部下十名が炭化し、倒れている。
レギオン自身は爆風による軽傷だが包囲していた部下の負傷は様々だ。
だというのに、爆心地にあたる位置に未だ動いた様子などない少女は、ケガどころかその服や肌には汚れすらない。
その光景は剣鬼たるレギオンにしても異常だと思えるほどに異常すぎた。
「ちっ化け物が!やっぱり先陣なんて外れだ」
愚痴をこぼすレギオンに、人形の様な少女…トゥアラは笑いかける。
「ちょっとこんな可愛い美少女を捕まえて化け物はないでしょ?アンタの方が化け物じゃない、ねえアベル?」
トゥアラに語りかけられた、アベルと呼ばれた男も笑顔で応える。
「そうだね、あいつらの方が立派な化け物だ」
どの口がそんな戯言をほざくのか、レギオンは怒りを通り過ぎ呆れた。
包囲の中にいるトゥアラと外のアベル…どちらを先に片付けるべきか?
レギオンは細心の注意で二人の人間の動きを警戒する。
だが……二人は全く動く気配がない。
こちらの動きに合わせる為か?
そんな考えがレギオンの頭の中をよぎるがそれはないと自ら否定する。
数が多いこちらの動きを待つなど愚策だ。
ならば何故?
何をしてこようとも関係ないという自信ゆえか?
……ならばそれが命取りになると思い知れ!
アベルは後だ、まずは包囲内のトゥアラを殺す!
「女を先に始末しろ!」
レギオンの命令に、生き残った約四十の剣鬼が迷わず従う!
自身達の怪我なと二の次、ただ下された命令を実行する。
剣鬼の動きに対してアベルは動かない。いや口だけは動いた。
「トゥアラ、少しでいいから剣鬼の原型を留めた死体を、いくつかお願いするよー。実験材料にしたいからー」
そのとんでもない要求にトゥアラは
「りょう~かい」
実に軽く請け負う。
殺し合いの途中とも思えない双方のやり取りにしかし剣鬼が戸惑うわけがない。
それぞれが必殺を覚悟をもちトゥアラに殺到する。
目の前の少女はただ者じゃない事は先程の爆発で嫌でも承知している。
だが同族達の肉の壁を利用すれば死はない。
腕や足の一本は吹き飛ぶかもしれないが、あの少女を殺すなら腕一本残れば上々。
戦闘スタイルはその外見からして魔剣、属性剣技を中心にしたものと推測。
強化剣技を扱うタイプには見えない。
ならば問題はない。いかに初撃を耐えきれば問題はない。
確かに剣鬼達の考え方は普通の剣使ならその対処で問題はなかった。
剣鬼という種族がら、近接戦闘が主体だからだ。
だが相手は普通じゃない。
A級やS級などの、いわゆる高位剣使ともまた違う次元にいる。
その力は強大。
その力は世界のバランスをも崩す、バランスブレーカー。
故に畏怖と敬意をもって彼等彼女等はこう呼ばれる。
『剣神』
「さあ、まずはかる~くかる~く、いくから耐えてね」
トゥアラがここに来て初めて動く。
手にはその外見に似合わない歪な形をした片手剣。
X級神剣
剣神にのみ手にする事を許された剣。
神剣とは剣獣と契約するのではない。
剣龍を屈服させる事により契約するのだ。
その力はあらゆる聖剣・魔剣を超越した、まさに神と同等の力。
だからこそ神剣を知らぬ者でもそれを見れば理解する。
神がいると。
「な、何だアレは!?あんな剣はあのお方以外の存在が持つ事は許されんぞ!!」
レギオンは知らない。
その存在があの少女以外にまだ四人もいる事を。
「バ~ン」
神々しい神剣を前に立ち止まってしまった剣鬼兵を、トゥアラは容赦なく爆殺した。
バラバラに吹き飛んでいく腕や足。
流れる血液はその熱により溶けきり、肉片しか散らない。
そして訪れる静寂。
死ぬ間際に声も出せず、四十の剣鬼が肉片と化した。
その悪夢の様な光景を前に、レギオンは言葉も出ない。
「トゥアラ…こんなにバラバラでは実験に使えないよ」
「ごめ~ん、加減はしたんだけどまだ強力すぎたみたい」
「やれやれ、困った人ですね」
全く困ったとは言えない表情の、アベルの態度からしてあまり期待はしてなかったのだと何となく分かる。
「まぁまぁ、ここはアレで許してよ。アベルに譲るからさ」
トゥアラの視線がレギオンをロックする。
思わず体が固まるレギオンなど気にもせず
「アレですか。確かにただの剣鬼兵よりはいい材料ですね。遠慮なくいただきますよ?」
アベルはトゥアラに笑いかける。
「いいよ別に。ワタシもやり過ぎたって反省してるし」
「いい子ですね、トゥアラ」
トゥアラの頭を優しく撫でるアベル。
「もう子供扱いしないでよ」
と口では文句を言いつつ、気持ち良さそうに撫でられ続けるトゥアラの様子を、レギオンはただ見ている事しか出来ない。
「さて、実験材料を確保しますか。あぁ別に抵抗はしてもいいよ、生き延びる時間がのびるかどうかの違いだから。ただ個人的には剣鬼にしか使えない剣技を、生きている間に使ってもらえるとありがたいね」
二人の化け物を相手に、レギオンは自身の死を改めて覚悟した。
「大人しく殺されると思うなよ…!」
だが諦める気は微塵もない。
そのレギオンの態度にアベルは嬉しそうに笑う。
「いいねぇ…その表情。最高にカッコイイよ」
「ほざけ!」
片刃の剣を手にレギオンがアベルへ斬りかかる!
「さあ、楽しい実験が予定されてるから……さっさとしね」
神剣を手にしたアベルが冷酷に宣言した……
剣神各々の神剣の名前やら能力はある程度は決まってます。キャラ設定書く時にでも発表します。
まあ当分書くつもりはありませんがね、テヘ。




