十九・五話
場面が色々とあっちこっちに移ります。
少女?
何故、人間の少女がこんな所に?しかも人形の様に着飾った少女が?
剣鬼たるレギオンは目の前に立つ少女を油断なく見据える。
二人が邂逅したのはカイン達が樹海に入った直後。
少女にとっては知らないが、レギオンにとっては不意な遭遇に思わず身構える。
対する十代半ば頃の少女は構えもしない。
この時点でレギオンは少女を敵と認識した。
今回、ロードギアへと連れてきた部下達五十名に少女を包囲するように命令を下す。
部下達は一糸乱れず、速やかに少女を包囲した。
後は殺戮許可さえ出せば部下が勝手に片付ける。
だが…そんな絶体絶命な状況にも関わらず、未だ少女は動かない。動く気配すらない。
(オレの勘がただ者じゃないって警告してるんだが…)
八鬼衆の一角たるレギオンにしては慎重に事を運んだはずだった。
大抵の同族たる剣鬼は人間を軽視している。
過去の人間達と大して変わっていないと認識してるのだ。
確かに未だ大半の人間は弱い。
我々よりはるかに。
だが一部の人間共は一般剣鬼兵と同等に戦えるし、更にごくごく一部に至っては我々と同等いやそれ以上の力を持っているのだ。
過去と同じ考え方でいると足元をすくわれる。
だからどんな人間でも油断はしない。
だがすでにこの時点でレギオンは油断していた。
何故部下に任せたのか?
何故自分が率先して動かなかったのか?
もしかすると少女の姿を見た瞬間に有無を言わさぬ奇襲を仕掛ければ有利に事が運べたかもしれない。
すでに今更な話だが。
そして時は動き出す。
「予想だにしてないお客様にワタシはびっくりしてるわ。だって剣鬼の方々が来るなんて思いもしなかったもの。やっぱり外の世界は興奮に満ちているわ」
「何故、我々剣鬼を君が知っている?見た目では我々と人間に外見的な差異はあまりないはずだが?」
少女の発言に多少の困惑さは感じたがレギオンは努めて冷静に切り返す。
そんな、
剣鬼にしては対話が出来るレギオンに、少女も徐々に興味を抱く。
「簡単よ、眼球が黄色すぎるわ。今後人間社会に溶け込む気であればサングラスをかける事を強く勧めるわ」
「なるほど、忠告を感謝する」
そのレギオンの素直すぎる受け答えに少女は鈴の音のような声で笑う。
「何か世間ずれした発言をしたかな?」
「いえ、ごめんなさい。アナタが余りにも剣鬼らしからぬ答え方をするから可笑しくて」
「ふむ、まあ仲間内でも変わり者扱いされてるよ」
「でしょうね」
レギオンの言葉を少女は即座に断言した。
「…君は随分と我々の事に詳しいな。どうだい、抵抗さえしなければ我々の城に歓迎したいんだが。無論、君の身の安全はこのレギオンが保証するよ」
その指揮官の発言に部下達も戸惑いを隠せずレギオンを見る。
包囲が少しではあるが揺らぐ。
動くなら、包囲を脱け出すなら今この瞬間だけがチャンス…なのに少女は動かない。
「遠慮しておくわ。アナタはいいけど他の八鬼衆がいい顔しないでしょ?だから逆にワタシが誘ってあげる。ワタシと一緒に我が家へ来ない?」
少女の誘い文句など誰も聞かなかった。いや聞き逃したと言ってもいい。その場にいる少女以外の存在の時が止まる。
レギオンも含めて、だ。原因は誘い文句の前の言葉だ。
確かにこの少女は言ったのだ。
「……何故、八鬼衆の存在を人間が知っている?それは我々の世界で生まれた言葉だ。人間が知っているはずがない」
「そう?ワタシの周りの人はみんな知ってるわよ?」
更なる爆弾発言に……レギオンは決断した。
「君を誘うのはキャンセルするよ。色々と知りすぎだ」
「キャンセルも何もワタシ断ったわよ?」
「確かに。ただ先ほどの忠告の礼としてこちらからも忠告しておこう」
「あら、何かしら?」
「知る事は大事だ。知識としてたくわえるなら。ただ口が軽いのは駄目だ、信頼関係を崩す要因だ。それが他人の秘密とかなら尚のこと。口は災いの元、沈黙は金だ」
「確かに。ワタシ口が軽すぎたかしら?」
「死ぬ前に気づけてよかったな。是非来世があれば活用してくれ……殺れ」
一斉に、少女を包囲していた内側の十体の剣鬼が手にした片刃の剣を持って襲いかかる!
その速度にただの人間には視界に捉えることさえ不可能な領域!
しかし……忘れてはいけない。
人形のように美しい少女はただの人間などではない。
「珍しく紳士な方に会えたかと思ったけど、やはり所詮は剣鬼。獣同然の存在に……」
『期待したワタシがバカだったわね』
直後、殺戮の場の主は交代を告げた。
凄まじい爆発と共に。
「さあ始めましょう、アベル!」
少女の声に、悠然と呼ばれた相手が答える。
「もちろんだよ、トゥアラ。楽しく準備した劇を始めよう」
アベル降臨(笑)しかしキャラが勝手に動いてくれて助かるわ~




