十八話
カイン起床。
目が覚めた。
目の前には天井。
どこだここ?
働かない頭を放置して上半身だけを起こす。
誰もいない。
ファラはどこかに外出中かな?
「ん?」
枕元には濡れたタオル。
そういえば目覚めた時に額に何かのっかっていたような?
「あー…喉乾いた」
喉がカラカラだ。
すぐさま水を求めて洗面所に直行。
そしてその扉を開けて固まる。
…………ファラが体を洗ってた。
「ようやく起きたか。あれからもう三日は経ってるぞ」
三日ぶり?の再会にも関わらずファラは自分の体を洗う作業に手を止めずに続ける。
「起きた直後に飲み食いできるようにテーブルの上に水やら食い物を用意してあるが食ったか?」
「い、いやまだだ。いただくよ」
咄嗟にそれだけを答えて洗面所の扉を閉める。
……無茶苦茶普段通りだな、おい!
意識してるオレがバカみたいじゃん!
……肉体関係があったからって馴れ馴れしくするのもアレだし、しばらくは様子見しよう。
とりあえずメシだ。
まずは水を三杯連続で飲み干し、ひたすら食い物をがっつく。
料理は冷めていたが気にならない。
空腹は最大のスパイスとはよく言ったもんだ。
めしうま~!!
生きててよかった!
テーブルに用意された料理を丸ごとたいらげ満足してた直後にファラが裸で現れた。
…………いやもう慣れましたよ。
その裸体に飽きはしないが、注意するのはもう諦める。
あくまでオレだけの時限定ではもう何も言うまい。
……ん?
これって一種の独占欲?
そんなオレの思考など気にもしないファラがやや呆れ気味にオレを見ている。
何かしたか?
「一食分では足りないと、いくつか保存のきくものも置いてはいたが、全部食うとはな。まあ三日分の飢えだから仕方ないか。満足したか?」
「あぁとっても」
なるほど、全く気にもせず食ってた。
確かに干し肉やら乾パンやらがあったなぁ。
「ならよかった。あとでまた何か適当な食料を買ってこよう」
「ありがとうファラ」
深々と頭を下げて感謝の気持ちを形に。
「それで?剣位は上がったか?」
「ああ、おかげさまで」
魔素を集め愛剣を具現化する。
その外見は見慣れたものよりはるかに赤く輝く刀身をしている。もちろん内包している魔素の量も増大し、より強力な剣技を使用できる。
「B級か。上手くいけばもう一段階上にいくと思ったんだが…カインの経験が足りなかったな」
「うっ…手厳しいお言葉だ」
「まあ今後も成長できる余力があるんだろ。アタシ一人の特異性ではそれが引き出せる限界だったという見方もある、気を落とすな」
あれ、何気にフォローしてくれた?
あのファラが?
「残された時間は少ない、というよりギリギリだな。準備は終えている。さっさと宿から出発するから装備をととのえておけ。最後の準備をしたら樹海に向かうぞ」
「了解」
修行は歩きながらに、か。
そうして宿を引き払い、露店でいくつかの食い物を買ってからリンベルを出る。
樹海までの食料はすでにファラが手配済みなので、これはすぐに胃袋へ。
「まだ食い足りなかったのか?」
「いやあの時はあの時で満腹だったんだけど、いい匂いに胃の消化が早まって小腹が空いたんだよ」
「小腹って量か、それ?」
「剣位が上がって燃費が悪くなったかな?」
それは由々しき問題だ。
食費がかかり、太る!
……まあ働いて動けば問題なしだ。
不意に何かが視界をさえぎる。
即座に腹を両手でガード!
予想した衝撃だったが……威力は想定以上だった。
両手がむっちゃいてぇ!
「食ったばっかの後に腹部を狙うなよ。直撃してたら吐いてたぞ」
「それを狙ってた。ブタのようになき、吐瀉物に顔を埋めていればよかったものを」
「汚いな、おい」
「カインの顔よりは綺麗だ」
「オレどんだけ汚い!?」
「冗談じゃない」
「なーんだ冗談……じゃないのかよ!?」
「カインうるさい、黙れ」
「鬼か!!?」
日常となったやり取りをしながら一路ヴェルジュ樹海へとオレ達は向かう。
残された時間はあと二日。
さて一旦別視点へ。




