九話
金髪の男現る。
誰だ?
ファラがチラリとオレに視線を向ける。
『さっきの言ってたもう一人?』
と視線で問いかけているのだろう。
オレは首を横に振り否定する。
立ち塞がった金髪の男はどこからどう見ても一般人。体つきも服装も雰囲気も含めて。
まるで街中にでもいるようなその姿がある意味なにか異質だ。
そんな目の前の男の目的が自分にあると納得したのか
「アタシに何か用?」
とストレートに問いただす。
「そこに転がっている死体は貴方が倒されたんですよね?よかったら譲って頂けませんか?」
金髪の男は無表情に、だが丁寧な言葉で答える。
「すでに採取したから後はご自由に」
ファラは手をヒラヒラさせて金髪の男に道を譲る。
「いえ、あれだけではなく先ほどクリスタルにしまった頭部も含めてです」
見てたのかよ。
まぁ角アリの死体って分かっているからこそ姿を現して交渉なんぞしているんだろうが。
「推察するに貴方は傭兵ギルドの方ですよね?どうですか、報酬に支払われるであろう金額の三倍をこちらは出します。譲って頂けませんか?」
「魅力的な提案だが駄目だな」
男の提案をにべもなく断り、ファラは男の横を通り過ぎる。しかし男は尚も食い下がる。
無表情なだけで実は本人必死か?
「ならば五倍出します」
ピタリとファラが立ち止まる。
おいおい迷ってんのか?
ファラは誰の目から見ても分かる長い長いため息をふぅーと吐く。
「報酬の額の問題じゃない。ギルドの仕事は信用に関わる。もし仮に角アリの首をアンタに売って、今回も角アリの情報はガセでしたと報告するのは簡単だ」
そこで一旦区切り、ファラは金髪の男を睨みつける。
「だがもしどこかでその件がバレたらアタシはギルドから信用を失う。そうなると色々厄介な上にその先、生きにくい人生になる。信用は金じゃ買えない、だから交渉の余地はない」
オレはファラという女を見直した。
利で動くだくの人間だと思ったが義も持ち合わせている。
傭兵を雇うなら彼女のような人物を雇うべきだと強く確信した。
そんなファラの意思が強いと判断したのか金髪の男は「残念です」と呟いた。
全く感情は込もってなかったが。
ファラに一礼して立ち去るかと思われた男は、今度はオレに向かってきた。
オレは何も持ってないぞ?
それとも何が何でも欲しいから、ファラを一緒に説得してくれとか相談されるのか?
だがその全てが杞憂だった。
「貴方がカイン様ですね」
「はっ?」
いきなり見ず知らずの人間に名前を呼ばれて
誰だこいつ?
会ったことあったか?
と記憶をさぐるが…………全然検索に引っかからん。
「どこかで会ったか?」
「いえ、初対面です」
ですよねー。
「何でオレの名前を?」
「あるお方にこの手紙をカイン様にお渡ししてほしいと命令をうけまして。どうぞ、お受け取り下さい」
男の丁寧な言葉遣いが一段階上がってる。
男の目的はこちらが本命か。
男の両手で差し出した手紙を受け取る。裏を見るが何も書かれていない。
仕方なく封筒から手紙を出し、中身を確認。
それには差出人の名前やら余計な挨拶など一切書かれていなかった。
ただ一言。
『二人の約束の地で待つ』
それだけ。
たったそれだけの事にオレの頭の中は真っ白になった。
いや真っ白になってほしかった!
願いとは逆に、頭の中はあの思い出したくもない映像を再生する。
…………過去の映像を。
次話はちょいと主人公の過去へ。基本、会話だけで細かい描写は入れません。




