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剣と龍と神  作者: カナメ
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八話

少し遅れました。ごめんちゃい。

オレが所属するこの国はこの大陸の実に四分の一を領土としている大国だ。

そして大陸最大最強を自他共に認められた国でもある。

だからこそ所属する剣使の数も大陸一。

質はまさにピンきりだ。

剣使だと思えない位に弱い奴もいれば、あり得ない程に強すぎる剣使もいる。



傭兵ギルドは世界各地にあると聞くし、その中に高位剣使もいるとは聞いた事はあるが…この目の前にいるファラはその数少ない高位剣使の一人って事か。

しかしギルド自体が依頼するなんてよっぽどの事なんだな。



「しかし何で傭兵ギルドが角アリの調査なんかを?しかも高位剣使まで雇って」



「さあ?依頼内容にそこまで興味なかったから詳しくは何も聞いてない」



「…依頼は調査だけか?」



「基本は。可能なら死体丸ごと。ムリなら肉片、牙等の一部とか。」



「傭兵ギルドは怪しげな研究でもしてるのか?」



「少しでも角アリについて知りたいだけかも。生態やらはまだ謎が多いし、各国の研究機関だったら大金を払ってでも欲しいだろうね。…アタシにとってはただの金づるに過ぎないけどな」



ファラは喋りながらも角アリの肉体の一部を採取している。



「死体はもってかえらないのか?」



「こんなデカイのはクリスタルを使っても入らんよ」



ごもっとも。

持ち運ぶのに重宝されるクリスタルは制限重量があるからな。



「これがあれば十分だろ」



ひょいっと軽い動作で角アリの首をかかげるファラ。

うん、生首を手にする美女ってすごい図だ。



「角アリと普通の剣精の外見的差異は、この額の角くらいだしギルドも納得するだろ」



「なるほど。死体丸一つとなると属性剣技、転送をもつ風の剣使じゃないとムリな依頼だな」



高位剣使で風属性を限定すれば人数が限られるしな。



「しかし角アリの調査って依頼の仕事内容は?まさか角アリを長期に渡って尾行しながら生態をさぐる…なんてものじゃないだろ」



「そんな依頼は誰も受けないだろ。こういう時の調査っていうのは、その目撃情報の信頼性を上げる為のものだ。なんせ角アリの大半の目撃情報が見間違いだ。ただの剣精でも人によっては角アリと騒ぐ場合もある」



ムリもない話しだ。角アリと剣精の違いなんて額の角くらいだし遠くから目にすれば間違う事もあるだろう。

近くで見れば間違いはないだろうが、そんな接近した状況なら死ぬし。

ふと疑問。



「なら調査自体は確認の方が重視されてるって事は、別に高位剣使がでばらなくてもいいんじゃないか?交戦するって前提じゃないんだし」



ギルドにしても高位剣使を雇うより低位剣使を雇った方が費用も削れるはずだが…



「以前そう考えたギルドも試したらしいが、依頼を受けた低位剣使の半分以上が死亡する事態が起きて、批判が殺到したらしい」



「運悪く角アリに遭遇したのか?」



「いや、調査って事を軽視した結果だ。」



「…そんな事もあって難易度七に分類されたわけか」



また一つ疑問がなくなったな。



「だが基本ムダ足になる可能性が大きい依頼だから、今回も大して期待はしてなかったんだが」



幸運にも出会えたと。

オレにしてみれば不運だが。



「しかし角アリの死体に何の価値があるんだか」



「価値観は人それぞれだ。アンタみたいに無価値だと言う人もいれば、どんな手段をとってでも手に入れたい人だっている」



価値観、ね。

ファラが角アリの肉体の一部(刃に部分変化した箇所)をカバンにしまうと、立ち上がる。

どうやら採取は終わったらしい。

そしてカバンからクリスタルを取り出す。

その手には保存用のマジックアイテム、防腐のクリスタル。

主に生モノをいれる事が主目的の便利なアイテムだ。

これ一つあれば、例え長旅の途中でも新鮮な肉、野菜、魚などを口にする事ができ、旅人に重宝される。



それを角アリの首を冷温保存する為に用意したって事か。

ファラはクリスタルを角アリの生首に投げつける。

クリスタルが触れた瞬間、生首は光の粒子となってクリスタルに収束。

中身を取り出す時はクリスタルを壊す事で、保存されたモノがその形をこの世界へと現す。



一回一回の使い捨てタイプではあるが、クリスタル自体が手の平サイズのもので荷物がかさばらず、値段もお手頃。非常に便利だ。

おそらくファラがかついでいるカバンには、他の用途に使えるクリスタルがいくつか入っているだろう。

オレも最低限は持ってるし。

ちなみに空のクリスタルは白く、荷物を入れると黒くなる。

ファラは地面から黒いクリスタルを拾い上げ、カバンへとしまう。



「カバンにしまった角アリのサンプルはクリスタルに入れなくていいのか?」



「これは個人用だ。剣精の刃の一部は傭兵稼業をやっている人間にとってはお守りがわりにもなる。そしてそれが角アリのモノとなれば…」



「なるほど」



狩猟戦利品か。

名声にもつながる。

ファラを見ていると自分で自慢するタイプには見えないから、ギルドの受け付け係りがギルドの宣伝と共にファラの名も周囲に知れ渡せる事だろう。



「さて雑談終わりっと。じゃあな騎士さん」



依頼を果たしたファラはさっさと立ち去る。

呼び止める理由もないのでオレは黙って見送った……のだがファラの前にオレ以外の人間が立ち塞がる。

一瞬フレイかと思ったが…違う。

知らない顔だ。


生首を手にした美女…う~ん絵にしたい。絵心は全くないが。

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