七十六話
やっと続きが書けました。何か最近スランプ気味です。筆が走りません。一足はやい五月病ですかね?あー、ダラダラしたい。
全てが一瞬の出来事だった。
アベルの肉体を乗っ取った『剣龍』は、誰もが無視出来ない魔素量を展開し、圧倒的なまでの存在感を誇示した。
そしてその行動はこの場にいる全員の意識を『剣龍』に集中させ、戦いは一時中断した。
オレ以外の面々は、なぜ唐突に『剣龍』が現れたかを知らない。
誰もが戸惑い、動けない。
だが一人だけ?迅速に動き、『剣龍』の元に馳せ参じた。
既に人の形などしていないが、この魔素の質からこれがメルレガなのだと推測できる。
全身を木々の樹皮のようなもので覆った六足歩行の巨獣には、メルレガの面影など微塵もないが。
そんなすぐさま駆けつけたメルレガ……だった存在を、『剣龍』は長年仕えた部下を労うように、堅そうな樹皮の皮膚をポンポンと叩いている。
「S級剣獣と……メルレガの魂が合わさったか。やはりタダでは死ななかったな、メルレガ」
……見た目はゴツイが、『剣龍』に従順な態度で頭を垂れる姿は、まさに忠犬。
自我をなくしたというのに、それでもなお主君に尽くすかよ、メルレガ。
……ソレの中身はまったく別物だというのに。
気付いていない?
それとも気付いていながらも従っているのか?
どっちだ?
「新タなワガ主、お名前ヲ」
気付いていたか……。しかもあの態度からして、さほど気にもしてない。
些末な事だと言わんばかりだ。
そんな割り切った忠犬に『剣龍』が上機嫌に笑った。
「世界を滅ぼすなら誰にでも仕えるか?気に入ったよ、我が名は……ふむ、トゥアラのままでいいだろう。アベルでもなく、『剣龍』でもないこの身にはちょうどいい」
「承知シマシた」
「……ところで、お前の名はどうする?メルレガのままでいいのか?」
「ワガ主のお好きナヨうに、お呼ビ下サい」
「……ふむ、ならばお前もメルレガのままでいいだろう。世界の破滅を望む獣ぶりは、変わりないようだしな」
「ありがタキ、オ言葉」
「さて……次は」
『剣龍』……トゥアラが無造作に、倒れ伏すラーズの死体を蹴り飛ばし、神剣《神壊》を拾い上げる。
「コレを有効活用しなければ、な」
「死体のホうは、《不死神》が喜ビそうデす」
「なるほど確かに。『剣神』の死体は中々に貴重だしな。だが………やっぱりいらんな」
トゥアラはわずかに思案したが、そういう結論に達したらしい。
火属性剣技を使い、ラーズの死体を骨も残さず焼失させた。
「あらら、もったいない」
そんな光景を見て、マレフィキウムが思わずといった様子で呟いた。
「もったいない?」
その呟きに誰であろう、トゥアラが食いついた。
唐突な事態に、しかしマレフィキウムは動揺もせずに応じる。
「ええ、世界に貴重な美人がまた一人減ったから。もったいないでしょ?」
「そう……なのか?」
「美形がどれだけ稀少かを知らないの?ロードギア全体人口の約二パーセントしか存在しないのよ!」
「そ、そうか」
……何か知らんがマレフィキウムの熱い訴えにトゥアラがタジタジだ。
しかしその二パーセントの数値の根拠はどこにあるんだ?
ラーズ級の美形を求めているなら、かなりハードル高いぞ。……少なくとも、オレはその二パーセントには入っていない事は確かだな。
「・・・人格はともかく、我に物怖じしない剛胆さに、魔素の質・量ともに申し分ない。決まりだな」
「何が?」
マレフィキウム同様、本当に何がと、オレも聞きたい。
けど何故だろう、嫌な予感しかしない。
そして当たってほしくもない予感ほど、妙に当たるのはこれいかに?
「空席となった『剣神』の新たなアテだ。おめでとうマレフィキウム、お主は選ばれた」
トゥアラがマレフィキウムの足元に、神剣を突き立て祝福した。
・・・最悪の流れだ。
よりにもよって悪名高いあの『大魔女』に神剣を渡すなど、狂気の沙汰だ。
「もらっていいの?」
「ああ、神剣も新たな持ち主を望んでいる。それはお主のモノだ」
「ありがとうと言うべき?」
「礼は不要。剣が行き着く先に行き着いただけの事。神剣にとってラーズはつなぎに過ぎなかっただけだろう」
「・・・ふ〜ん」
神剣を地面から引き抜いたマレフィキウムは、剣をマジマジと見つめている。
やがて、何かに納得したかのように何度も頷く。
「なるほど、これが神剣。確かにすごいわ、これ」
マレフィキウムが神剣の力を自覚すると同時に、視覚化できるほどの魔素がその身から溢れ出す。
その光景に半ば呆然とする周囲を置いてけぼりにして、マレフィキウムがブンッと軽く剣を振り払う。
直後に剣圧だけで地面が吹き飛び、大地が深く抉れた。
・・・まだ神剣を手にして一分も経っていないのに、これかよ。
「・・・適合率がいいとはいえ、凄まじいな」
神剣を渡したトゥアラすら、半分感心しつつも呆れた様子だ。
史上最強の魔剣使は誇張でもないという、最高の証明だった。
「これなら・・・出来るかな?」
一人思案顔のマレフィキウムが呟いた言葉に、理由もなく何故かオレの背筋がゾクッとした。
そしてすぐに、マレフィキウムが試行したい事を実現する機会がやってきた。
「ラーズ様!!」
アースガルズ王国でも屈指の実力派であり、攻勢特化の狼王斬士部隊を率いるネモの登場によって。
おそらくラーズの強大なまでの魔素が不意に消失した事態に、急いで戻ってきたのだろう。
呼吸を整える時間すら惜しんで、忙しなく周囲を見回すネモは、やがて信じがたい現実を直視したかの如く、目を見開いた。
・・・分かり切った事だろうが一応ネモの視線の先を確認。
・・・当然だが、そこにはマレフィキウムしかいない。
「・・・なぜ、貴様如きがソレを・・・・・・ラーズ様の神剣を汚い手で持っている?」
心身ともに底冷えするような声で、ネモはマレフィキウムに問い詰めるが、さして大した事でもないとばかりにマレフィキウムはあっけらかんと答える。
「何故って・・・貰ったからだけど」
「下らん嘘をつくな!ラーズ様が貴様なんぞに神剣を手渡すはずがないだろうが!!」
「・・・女に向かっていきなり汚いって言ったかと思えば次は嘘つき呼ばわりとか・・・・・・ないわ〜」
「ラーズ様はどこだ、答えろ!!」
「どこって・・・死後の世界?」
「どこまでも巫山戯た女だ・・・!どうやら手足の一、二本は切り落とされんと真剣に答えられんようだな!?」
・・・両者の、いや主な原因はネモのせいだが、会話が全く噛み合っていない。
マレフィキウムは嘘も冗談も言ってはいないのだが、いかんせん他人を小馬鹿にしたような態度では火に油を注ぐばかりだ。
かといって、怒り心頭のネモに事実を口にする度胸は、オレにはない。
ラーズが既に殺されたなんて口にした途端、確実にネモは敵対し、攻撃を仕掛けてくるのは必至。
口は災いのもと、沈黙は金。
ここは黙って事態を見守るのが賢い選択だ。
だというのに、だ。
「面倒ね〜、君からもちょっと説明してあげてよ。ここで起こった事実を包み隠さず。この駄犬の相手は疲れるよ」
よりにもよって、『大魔女』マレフィキウムはオレに説明を丸投げしてきやがった!
全力でオレは否定したかったが、マレフィキウムはオレを見つめている。
自然と、ネモの視線もオレに向けられる結果になるわけだが・・・勘弁してくれ。
完全に巻き込まれた。
次話はそろそろヴェルガード視点の方を進める予定です。・・・私のやる気スイッチはどこだろう?早く切り替えたいです、割と本気で。




