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剣と龍と神  作者: カナメ
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七十六・五話

お久しぶりです。

長い五月病がようやく終わったようです・・・えっ、今は何月かって?

・・・すんませんでしたー!!

轟音。

まさにその一言に相応しい暴風が二人だけをめがけて、襲いかかる。

ついでとばかりに瓦礫や木片が一緒に飛んできたのは、きっと偶然ではない。



「ぐッッッ!!?」



「チィッ!!」



レラフが創造した『空羅翼神』と呼ばれる巨大梟が、ただ翼を羽ばたくだけで突風となり、フレイとフレイヤの双子を圧倒する。

まるで小蝿を払うようなその梟の動作に、双子は苦々しい表情を浮かべる。



「まるで相手にされてない感が半端ないな」



「剣技で作り出された擬似生命体ごときがなめやがって・・・フレイ、本気をだしなよ」



「初っぱなから、いきなり?」



双子の姉であるフレイヤの急な提案に、フレイは思わず聞き返した。



「決着をつけるのに、早いも遅いもないでしょ。やれるうちにやるだけよ」



「了解、合わせるよ」



さすがは双子というべきか、阿吽の呼吸で即座に動く。

まるで事前に打ち合わせしたかのような、息の合ったコンビネーション。

およそ十年ぶりに再会したとは思えない動きである。

しかしそんな双子の上空に位置する巨大梟は、冷めた目でそれを見下ろしている。

小虫が自身の周囲を飛び交う・・・そんな多少、鬱陶しい心情なのだろうか?

やや面倒くさそうに、小蝿を追い払うように再度、両翼を一羽ばたきする。

ただそれだけの事。

ただそれだけの事で・・・双子はあっけなく彼方へと吹き飛ばされた。

大量の瓦礫を伴って。

その瓦礫は容赦なく双子に被弾、軽くない怪我を両者は負う。

だが、そんなもので止まるような双子では、ない。

突き放された間合いを三度、詰める。



額や頬、腕や足からも少なくない出血をしているが、些末なことだと割り切って動くその双子を梟は・・・・・・やはり冷めた目で見つめる。

どうやら追い払うだけでは諦めないとわかったのだろう。

次は、直接的な攻撃を繰り出した。

とは言っても、直々に降下したわけではない。

ただ両翼を広げただけ。

・・・広げただけで、双子は同時に背筋を凍らせた。



「ッッフレイ!!!」



「わかってる!」



互いの悲痛とも言える叫びと同時に、死が形となって襲い来る。

それは数百、いや数千、下手すれば数万の凶器。

それが二人だけ・・・ではなく、王都全体に暴雨の如く降り注ぐ。

降り注ぐは梟の羽。

だがそれは柔らかい羽毛などでは決してない。

矢の如く降ってくる羽は、一枚で容易に人体を貫通する凶器だ。

それが一時的とはいえ、空をも覆いつくす程の量が降ってくるその光景はまさに悪夢。

何らかの抵抗をしなければ、生き残る術はなし。

幸いにして、双子にはその術があった。



「属性剣技、光臨壁」



「属性剣技、闇波涛」



互いが互いを守るように、剣技発動。

光輝く巨壁がフレイヤを守り、闇に蠢く大きな波がフレイに迫る梟の羽を吞み込んだ。

何とか互いの身を守ることには成功したが、対照的に王都は酷い有様だった。

一枚一枚が鋼のように重く、剣の切っ先のように鋭い羽が数千、数万降り注いだのだ・・・王都の景色は一変していた。

もやは廃墟とすら表現してもいい光景がひたすら広がる。

まさに危機一髪で死を回避した双子だが・・・まだ危機は脱していない。

むしろ、これからが始まり。

そう宣告するかのように、梟は翼を水平に構え・・・振り下ろす。

先の攻撃よりも、コレはまずいと双子の本能が警鐘を鳴らす。

防御は不可。

回避も間に合わない。

空間を切り裂くように、ソレは迫る。

残る手段は、一つのみ。

正面からぶつかり、突破あるのみ!

音を、風を、大気を裂くように巨大なカマイタチが眼前まで接近している。

これに対抗するには己の自信、プライドとも言い換えても過言ではない最強剣技しかない。



「属性剣技、光波絶流」



「属性剣技、闇続無限」



互いに発動する剣技。

絶対の自信を持つ一撃。

だが無情にも梟の一撃はその二つを、容易く凌駕した。

光と闇は、無残にも風の刃に切り裂かれ、消滅。



「ばかな・・・」



「・・・ここが死に場所か」



最後の最後にフレイヤは信じられないと目を見開き、フレイは諦観したように目を瞑る。

そして極大のカマイタチは剣技と双子をまとめて切り裂いた。



「ホオオオオオオォォオオオ!!」



高々と鳴く梟。

それはまさに絶望を知らせる勝利宣言のように、王都全体に響き渡った。








































巨蛇によって破壊された用水路から絶えまなく水が溢れ、流れ続ける。

連日、雨が降り続いた事もあって普段よりも貯水されていた水は増水し、王都の地面を水浸しにしている。

壊されてからたった数分で水は成人した大人の踝(くるぶし)付近に、子供なら足首が浸かる程までの水量にまでなっていることから、最終的にはどこまで増水するのか・・・不安を覚える速度だ。

ただ・・・・・・水を王都中に溢れさせた巨蛇だけは上機嫌な様子。

それを天すらも祝福するかのように、雨は勢いを増した。

土砂降りの雨、横殴りの雨とはまさにこのこと。

巨蛇・・・創造主たるレラフに『海帝蛇神』の名を与えられた剣技は、その祝福を受け入れるかのように空を仰いだ。

・・・・・・敵対者、シキロがまさに剣技を発動せんとしているその瞬間だというのに。



「属性剣技、炎轟」



ある一定の空間限定ではあるが、降り注ぐ雨が一瞬にして蒸発。

あまりの超高温に液体は気化し、蒸気となるが、その蒸気すらもなぎ払うように炎の塊が蛇に迫る。

それに対し、蛇はシキロに一瞥すらせず尻尾でいとも容易く剣技を粉砕。

蛇の視線は未だに空を見上げている。

まるで何事もなかったかのような自然さで。

それはシキロのプライドを傷つけるのに十分な態度だった。



「属性剣技、炎剣斬舞」



だからこその上位剣技発動。

後悔しろ。

シキロがそう宣言するかのように、蛇の全方位を包囲した八本の炎剣が容赦なく斬りかかる。

上下左右、あらゆる方向から迫りくる炎剣から逃げる術はなし。

蛇もそう悟ったのだろう、回避しようとする素振りすらない。

そう、まるで回避する必要など皆無だと言わんばかりに。

事実、逃げる必要など欠片もなかった。

蛇は即座に自身を中心に強固な水の膜を張り、斬撃を無効化した。

いや斬撃だけではない。

炎剣そのものが水の膜に触れた瞬間、跡形もなく消滅したのだ。

自分の剣技があっけなく無力化されたシキロは、その事実にただ絶句した。

一方の蛇は、まるで何事もなかったかのように静かに佇んでいる。

この時点でシキロはようやく思い知らされた。

自分とこの巨蛇の力の差を。

どう頑張っても覆せない絶対的な能力差を。



「・・・・・・だが、それでも!」



互いの、両者の力量差は圧倒的に、それこそ絶望的なまでに断絶しているだろう。

だからと言って大人しく首を差し出す選択は、シキロには無かった。

たとえ無駄な抵抗であろうとも・・・抗い、戦う。

その身、尽き果てるまで。



「属性剣技、赤嵐・散」



真横一直線に、猛スピードで複数の赤い竜巻が蛇に放たれる。

だが、未だ水の膜を展開している蛇は当然のようにそれを無力化。

シキロはその結果を見届ける事もせず・・・まるで止まればそこで終わりだと言わんばかりに、更に続けて剣技を発動。



「属性剣技、炎轟」



それからもありったけの魔素を注いだ数々の剣技はしかし、一度たりとも蛇の水の膜を突破することは出来ずに、シキロの魔素が欠乏したことでほぼ決着はついた。

・・・もはや立っていることすら難しいはずのシキロだが、剣を杖代わりにして何とか立っていた。

足は震え、今にも崩れ落ちそうな様子はシキロの内心をあらわしているようにも見える。

だが、それすらも蛇は興味がないのだろう。

蛇の視線は未だ、上で固定されている。



「・・・『七欲』である私が相手にもされないとは、とんだ化け物だ。そんな剣技を創造した『魔神』もまた桁外れの化け物」



笑うしかないと呟き、シキロは力無く笑う。

どうしようもない無力感に襲われ項垂れる女剣使を、ようやく蛇は一瞥し・・・直後にその長い尾でシキロを吹き飛ばした。

まるで視界に映るのも不快だと言うように、一切の容赦なく。

目にも見えぬ速度の蛇の尾に吹き飛ばされたシキロはただ不様に地面を転がっていく。

・・・それ以降、蛇の関心がシキロに向くことは二度となかった。

雨はまだ止まない。















































「門番ならぬ番犬か」



ヴェルガードと道雪の二人は無駄な消耗を避けようと、若干ではあるが遠回りをしてレラフが占拠したであろう王城内部に潜入せんとした。

しかし、どこをどうやって先回りをしてきたのだろうか?

王都を破壊して楽しんでいたはずの六本足の獣・・・『陸王獣神』がまるで二人を待ち伏せしていたかのように、当然のように眼前に立ち塞がっていた。



「・・・いつの間にやら目をつけられていたようですね」



「戦闘は避けられない、か」



覚悟を決めて剣を構えるヴェルガードと道雪に対し、城を背にして布陣する獣・・・『陸王獣神』が一喝するように吼える。

並みの剣使ならばそれだけで戦意が喪失してもおかしくない威圧だが、『鬼神』の生まれ変わりであるヴェルガードと、『剣鬼』でも強者の部類に入る道雪には効果が薄い。

敵対者である二人がさほどの動揺もしていないことに、別段『陸王獣神』は気にもしていない。

先ほどの咆哮は『陸王獣神』にとっては挨拶代わりのようなもの。

むしろそれで戦意を失くす程度の輩では不完全燃焼ものだ。

だが平然と・・・少なくとも表面上は・・・されるのも何となく・・・・・・そう何となく気に入らない。

なので、『陸王獣神』はほんの少し・・・力の一端を敵に見せつけることにした。



「?・・・・・・!!」



ヴェルガードが同行者たる道雪に警告せんとした時には、既に遅かった。

悲鳴をあげる間もなく、道雪は『陸王獣神』に踏み潰されていた。

ヴェルガードとおよそ一メートルも離れていない近距離を、巨獣は悠然と歩きだす。

今さっき踏み潰したばかりの道雪の血を、まるでマーキングするかのように殊更ゆっくりと。



「・・・力を温存するのは無理、か」



何かを諦めるようにため息を吐くヴェルガードに、『陸王獣神』の右足が襲いかかる。

直撃すれば彼方へと吹き飛ばされるであろうその一撃を、ヴェルガードは正面から受け止める。

受け止めた衝撃でヴェルガードの足場は粉々に砕けるが、体勢は崩さずに『陸王獣神』を押し返す。



「さっさと片を・・・・・・むっ」



いざ全力をもって戦いに挑まんとしたヴェルガードの動きが静止した。

いや、制止させられたと言うべきか。

前方にいる『陸王獣神』が笑っている・・・少なくとも、ヴェルガードにはそう見えた。

無理もない。

自分が相手と同じ立場なら、思わず笑っていたのだろうから。

こんな・・・・・・最悪の状況なら、誰だって。



「まさに四面楚歌」



ヴェルガードの後方から巨蛇が姿を現した。

まるで威嚇するように、歌うように不吉な音を鳴らしながら。

更に音源は追加される。

はるか上空、不気味な羽音を響かせながら。

黒い雨雲の空を優雅に、悠然と巨大な梟が飛んでいる。



「・・・完全に囲まれたか」



絶対的ピンチ。

そう言っても過言ではない状況に、さすがのヴェルガードも嫌な汗が止まらない。

この三体の化け物どもが『魔神』レラフの命令を破ることはないと思うが・・・主に気をきかせて、ヴェルガードの四肢を食いちぎり、無力化する位はあり得る事態だ。

そんなヴェルガードの危惧が現実に起ころうとしているのだろうか?

レラフに忠実な三体の化け物が、徐々にヴェルガードとの距離をつめてくる。

『陸王獣神』、『海帝蛇神』、『空羅翼神』・・・そのどれもが舌なめずりしながら接近しているのではないかと思えてしまう。



「どうやら絶対絶命の危機のようですな、若。今回こそはこの老骨の出番のようで」



そんな危機を危機とも思っていないかのように軽い足取り、軽い口調でその人物は不意にヴェルガードの前に現れる。

生まれ変わったヴェルガードにとっては一番の理解者にして一番の忠臣。



「ジイ・・・なぜ来た」



「愚問ですな、若に助力する為。それだけです」



死地たる王都に、気持ちのよい笑顔で忠臣は答える。

戦局が、今また動かんとした瞬間である。





















近々に次話を書き上げられればいいな〜って思ってます。

うん、頑張ろ。

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